「ファンケルは何のために存在するブランドなのか?」ファンケルが化粧品事業のブランドパーパスを再設定
ファンケルは、1982 年に肌トラブルの原因となる防腐剤などの添加物を一切使用しない「無添加化粧品」の販売を世界に先駆けて開始しました。幅広い世代のお客様に支持され事業は成長してきましたが、ここ数年は、ファンケル化粧品のブランドイメージが他社と同質化し、お客様から見て「何を叶えてくれるブランドなのか?」が少しずつ不明確な状態になっているのではないか、と強い危機感がファンケル社内に蔓延していました。
そんな状況を打開すべく、執行役員化粧品事業本部長の堂下亮が旗振り役となり、ブランドイメージ希薄化の理由を分析、新たに「ブランドパーパス」を設定しました。「ブランドパーパス」再設定に至るまでの過程を聞きました。
「ブランド」が信頼関係を築けば、消費者は応えてくれる
そもそも、お客様の消費行動において「ブランドへの信頼」はどのように作用するのでしょうか?エデルマン・ジャパンが発表した、日本における消費者意識調査「2019 エデルマン・トラストバロメーター スペシャルレポート:ブランドは信頼に値するのか」( 世界 8 カ国、全16,000 人を対象)によれば、「現在利用しているが、完全には信頼していないブランド」と「現在利用していて、長い間信頼してきたブランド」を比較したところ、消費者で「率先して購入する」と回答した人は、「現在利用していて、長い間信頼してきたブランド」が24 ポイントも高い結果になりました。信頼関係を顧客と築くことが、ブランドに恩恵をもたらすことが読み取れます。レポートでは「ブランドに対する
信頼は、地域、年齢、所得に関わらず、消費者にとって購入を決定する際の必須事項であり、ブランドが信頼関係を築けば消費者はそれに応えてくれる」と結論付けています。
お客様との関係の中で築き上げている、唯一無二の価値とは何か?社内全体で整理し、意思を形成
――― 改めて、ブランドパーパスとはどのようなものですか?
堂下「ブランドパーパスとは、『自分たちがなぜ存在するのか』という存在意義を明
文化したものです。『いつの時代も肌悩みの根本解決に挑み、素肌に自信を持てる人を増やす』と定義しました。併せて、これまでターゲットや提供価値を明確に言語化できていなかったため、改めて定めることで社内の意思統一を図ります」
――― ブランドパーパス再設定の背景は?
堂下「いちばんの理由は、お客様が持つファンケルのブランドイメージが希薄化していたことです。これまで、『無添加で肌にやさしい。肌が敏感な時も使える』『安心安全』『無添加だからこそキレイになれる』と訴求してきましたが、競合他社でも敏感肌訴求を行うブランドが増えています。また、2015 年頃からは世の中のトレンドもあり、エイジングケア訴求を強めました。商品ラインアップや広告露出もエイジングケア中心にし、健常肌を含む広い市場を目指したことも「無添加イメージ」の希薄化の要因となったのではないかと反省しています。さらに、お客様の化粧品の選び方も変化しています。一つの
ブランドでライン使いするというよりは、化粧水はA、クレンジングはB、と複数のブランドを使い分ける人が増えています。そのような状況下で、ファンケルを選んでいただく理由は何なのか、お客様起点で『ファンケルならではの尖りは何か』『何を叶えてくれるブランドなのか』を明確にする必要があると考えました。加えてコロナ禍もあり、それまで勢いがあった社内の雰囲気が少し停滞し始めていました。そんな中で着任し、未来を起点に考えたときに『現状維持ではダメだ。大胆に変わらなくてはいけない』という使命感と同時に、ブランドの個性を尖らせる必要性を強く感じました」
――― ブランドパーパス再設定のプロセスについて教えてください。
堂下「ブランドのイメージ規定やガイドラインは何度か制定しましたが、残念なことに直近では形骸化していました。そこで、2022 年6月からファンケルがお客様との関係の中で築き上げている唯一無二の価値を、自分たちで磨き高め、整理する作業を行いました。これまでこのような作業は、一部の部署で取り組んでいたため、他部署の社員にとっては、納得感や当事者意識を十分に持てない状況がありました。そうではなく、社内全体で取り組もうと考え、化粧品に携わる広告宣伝部、通販営業本部、店舗営業本部、総合研究所、化粧品事業本部の幹部メンバー約20人が一堂に会し、3日間かけてディスカッションしました。革新的な意見だけではなく、これまでファンケルは何を大事にしてきたのか、どこがお客様に愛されていたのか、といったブランドの原点に戻れる意見もありました。どのような方向性に進むのか、という未来の話のみに終始するのではなく、ファンケルのルーツに戻れたことも実施した価値があったと感じます。その後のプロセスでは、
外部のコピーライターに入っていただき、丁寧に言語化しました。さらに、経営陣も巻き込みたかったので、役員や本部長にも『現在の化粧品に関する課題と展望』についてインタビューを行い、全社的に意思形成をしました」
――― ブランドパーパスを再設定するまでの困難は?
堂下「2010年頃までは、肌に敏感、トラブル、無添加という訴求で迷いはありませんでした。ここ10 年で、化粧品市場も多様化し、社内でも考えが異なるケースが多かったです。また、社内の多様な考えを一本化するのと同時に、それが未来や市場に対する戦略として有効な方向にまとまっているのか検証することも必要でした。具体的に言うと、『原点回帰』は社内の意見をまとめやすいですが、そのニュアンスも取り入れつつ、未来に向けた方向性を提示し、かつ市場に対して有効であるかを精査しなくてはいけません。キーにしたのは、『お客様起点であること』です。生活者の美容意識や肌悩みがどのような方向に向かっていくのか、またお客様にとってファンケルでなければいけない理由は何か、どのような人にこそ貢献できるのか、人物像とお客様のインサイトを思い描きながら言語化しました。
最終的には、未来に向けてファンケルの強みを伸ばしていく方向で、思うような形に完成できたと感じています」
今後、世代問わず不安定な肌が増加
――― 2023 年以降の化粧品市場において、どのようなトレンドが予想されますか?
堂下「世代別の肌悩みの上昇率をみると、『肌のゆらぎ』や『敏感肌』などの項目が上がっています。一般的に、肌環境は年齢が低いほど敏感気味で、年齢を重ねるとシミやシワなどのエイジングへのお悩みが増えると言われてきました。ですが、これからは気候変動、紫外線の影響、生活の変化、ストレスの増加などで、年齢を問わず『肌荒れやゆらぎ』を感じる人が増えていくと考えています。また、幅広い世代の『肌の不調』の解決は、ファンケルの強みを生かせるゾーンでもあります。再設定したブランドパーパスには、今後の化粧品市場の傾向も反映しています」
――― ブランドパーパスを社内に共有するために、どのようなアクションを取っていますか?
堂下「まずはブランドパーパスをポスターにして、各部署の目に見える場所に掲出しました。ただそうした掲出物よりも、大切なのは考え方や想い、熱意に共感してもらうことだと考えています。そのため、なぜ再設定を行ったのか、どのような想いで作り上げたのか、再設定に至るまでの理由や背景を丁寧に説明するようにしています。表面的ではなく、本質的に社内の共感を得て定着させていくために、根気よく丁寧に伝えていく必要があると考えています」
――― ブランドパーパスの再設定によって、期待することは?
堂下「社内の想いや狙いが明確になることで、お客様にも価値を伝える力が強まるのではないでしょうか。ブランドイメージだけでなく、ひいてはブランドの個性そのものを強くすることを期待しています。ファンケルは、製販一体型のSPAモデルです。研究から工場、商品企画、販売、サービスまでを自社で行っています。全社の想いや方向性を統一することで、ブランドに一貫性が生まれます。それがブランドの個性を尖らせ、ファンケルでなくてはいけない理由がお客様に伝わり、新しいファンの獲得にもつながると考えています」
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