日雇い労働者の街・大阪新世界で、宿泊客の7割を女性が占めるホテルになるまで
通天閣のお膝元に広がる大阪の下町・新世界。
この地域で最大規模の227室を備えたホテルが、「Willows Hotel 大阪新今宮」です。
新世界は串カツ店など老舗飲食店が軒を連ねる、大阪屈指の観光地です。一方で、日雇い労働者の街・あいりん地区と隣接しており、ネガティブな印象を持たれることも少なくありません。
しかし、当ホテルはそのような地域にありながら、宿泊客全体の約7割を女性が占めています。2021年9月の開業以降、独自の戦略を仕掛けた結果、女性のお客様に多くお泊まりいただけるようになり、地域のネガティブなイメージも徐々に解消されつつあります。
このSTORYでは、当ホテルがなぜ新世界で女性をターゲットにしたのか、これまでどのような取り組みをしてきたのかについて、当ホテルマーケティング担当の堀江がご紹介します。
「治安が悪い」という過去に根付いたイメージを払拭したい
当ホテルでは2022年春頃から女性のお客様の比率が増え始め、現在は年代・性別・人数別では20代女性2名のお客様が最多となっています。開業当初は特段女性は多くなかったのですが、この地域特有の課題を解決するため、女性客の誘致に積極的に取り組んできました。
ホテルに泊まろうと考える方は通常、立地・アクセス・価格の3つを判断軸として、泊まるホテルを決めます。当ホテルは、最寄りのJR新今宮駅から関西空港、京都、神戸、奈良、和歌山まで、乗り継ぎなく電車1本でアクセス可能です。大阪で同じ条件の場所は、ほかに梅田と天王寺のみ。大阪メトロ御堂筋線・堺筋線の動物園前駅も近く、アクセスの良さは大阪の中でも抜きんでています。
一方、立地面では大きな課題を抱えていました。
それは、新世界という地域に対して、世間一般にネガティブなイメージが先行しているということです。新世界と隣り合うあいりん地区で、過去に西成暴動が起きたことなどから、新世界も「女性が1人で歩けない街」と言われていました。実際、昔は路上にゴミが散らかっており、お世辞にも綺麗な街とは言えない状況でした。
しかし、現在は地元の商店主を中心に定期的な清掃活動を行ったり、街全体の観光地化が進んだりしたことで、老若男女問わず、誰でも安心して歩ける街に生まれ変わりました。
今では通天閣に登ったり、グルメを楽しんだりする多くの観光客でにぎわっており、天王寺動物園を目当てに、幼い子どもを連れたファミリーも訪れています。
それにもかかわらず、「新世界」と検索すると、今も「治安」「危険」といったサジェストが出てくる。こうした情報をネット上で目にした方は、「昼間に観光するだけなら大丈夫そうだけど、宿泊して夜間に出歩くのは不安」と思い、宿泊先の候補として新世界を外してしまう傾向がありました。これが、当ホテルが開業当初から抱えていた課題でした。
過去のネガティブなイメージが残っていることで、観光客の方に安心して楽しんでいただける状態を作り上げられていないことは、非常にもったいない。そう感じていた中、解決策として浮上したのが、Z世代の女性をメインターゲットに据えることでした。
「女性が1人で歩けない街」と言われていることを逆手に取り、若い女性だけでも泊まれるホテルを作り上げれば、お客様の不安を取り除き、固定してしまった街のイメージも変化させられるのではないか、と考えました。
新世界独自のレトロな世界観を構築
まず最初に、新世界でしか味わえない価値を見出し、発信を強化することに取り掛かりました。大阪では梅田や難波などターミナル駅がホテルのマーケットとしては大きく、新世界はそもそも宿泊場所として想起されにくい。そのため、「わざわざ泊まりに行きたい」と思っていただけるように、他エリアとの差別化をはかりました。
新世界は創業数十年の老舗純喫茶や、射的ができる遊技場など、昔懐かしい下町情緒が漂う街。折しも、若者の間で〝昭和レトロブーム”がじわじわと流行り始めていたので、新世界でもこの流れを取り入れた「令和と昭和を行き来する新世界ニューレトロ旅プラン」を販売しました。レトロ風なインスタント写真を撮影できるチェキの貸し出しや、近隣の老舗飲食店で宿泊客限定の特別メニューを楽しめるなどの特典をつけました。
ホテルのInstagramでも、ホテル周辺を撮影した‶レトロでエモい写真”を投稿して、ブランディングを強化しました。他の街にはない世界観をしっかり構築すれば、「泊まってみたい」「行ってみたい」と思っていただけるきっかけになると確信していたので、カオスな街の風景を、どう切り取るか趣向を凝らしました。
にぎわいあふれる街にありながら、ホテル内はオシャレな空間を演出
プラン販売やブランディング強化のほか、ホテル内のサービスでも工夫を重ねました。
朝食は彩り豊かなドーナツやパン、スープ類など、思わず写真に収めたくなるようなメニューを揃えました。飲食物だけではなく、食器もカフェで扱っているようなオシャレなものを選定しました。
15階建てホテルの屋上には、宿泊客限定の展望デッキを設置。
高所から観光客が間近に通天閣を臨める場所は、周辺でもおそらく他にないと思います。大阪市内の夜景も一望できるとあって、お客様からの人気も高いです。
ただ宿泊するだけではなく、印象的な旅の思い出となるようなサービスを少しプラスする。施策全体を振り返ってみると、常にこのことを意識してきました。
女性のお客様の数が倍増し、お客様全体の安心感にも寄与
若い女性が行きやすい街なら、老若男女どんな方でも行きやすい街になる。
そう信じて試行錯誤を重ねた結果、20代女性のお客様の数は2021年12月に比べて、22年12月には約6倍にまで増加しました。
また、女性でも安心してお泊まりいただけるようになった結果、若年層の女性に限らず、さまざまな属性の方にもお泊まりいただけるようになりました。
ようやくコロナ禍も明け、開業当初は人影がまばらだった新世界の街も、活気を取り戻してきました。
今後は、従来ターゲットとしていた女性客に加えて、子連れのお客様に向けた施策にも注力したいです。当ホテルは天王寺動物園と隣接しており、子連れのお客様との相性が良いです。また、女性と同様、「小さいお子様を連れても泊まれる街」を実現すれば、さらに新世界という地域の安心感を醸成することにつながると考えています。
「治安の悪いイメージが地域に定着している」という、全国的にもあまり先例のない課題に向き合うのは難しかったですが、開業から1年半が経ち、微力ながら地域の魅力向上に貢献できたと自負しています。今後もさらに、新世界の街ににぎわいを呼び込む取り組みに挑戦してまいります。
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