開発は困難を極めた。植物由来「バイオペイント」の製品化に成功した武蔵塗料、14年間の挑戦と塗料が役割を超えて進化するストーリー
武蔵塗料株式会社は、「色と機能で世界を豊かにする」をコーポレート・パーパスとする塗料メーカーです。私たちは自動車内装部品、情報通信機器・光学機器・生活家電といった電気製品など様々な分野で使用される塗料を開発してきました。
私たちは2008年より植物由来の原料を使用したプロダクト開発を継続しています。
2022年に植物由来のバイオペイントを市場に投入、高い評価を得ています。
このストーリーでは、バイオペイントの開発経緯を振り返り、わたしたちのプロダクトが
市場と社会に与えるインパクトについて展望します。
(左側:同社にてマーケティングの責任者を務める 五十嵐貴行)
(右側:同社にてバイオマス塗料の開発責任者を務める 金田公介)
バイオペイントとは
バイオペイントは植物由来の再生可能資源を利用した原材料を使用し、色と機能で世界を豊かにすると共に持続可能な社会の実現に貢献することを目指した製品です。
植物由来の再生可能資源を使用することで石油資源の使用を削減。さらに従来の塗料と同等の耐久性、耐薬品性に加え、柔軟性、耐汚染性や特徴的な触感など優れた機能が付与されています。
石油資源から植物資源に置き換える事により、将来的に温室効果ガス/CO₂排出量の抑制への貢献を目指します。
当初はヨーロッパ向けに開発。日本国内ではニーズに合致せず
プロダクトの開発スタートは、2008年に遡ります。当社の取引先であるヨーロッパの携帯電話メーカー様から、植物由来の原料を使用したプロダクト開発のご要望を受け、本プロジェクトがスタートしました。
試行錯誤の末に当社が開発した技術が採用され、植物由来の塗料を使用したモバイル製品が販売されることとなりました。当時、植物由来の製品として話題となりましたが、日本国内においては企業の環境保護への姿勢や取り組みがまだまだ消極的であり、国内市場をターゲットにした際には、消費者ニーズと合致するケースが少なかったため、商品の認知に結びつかず、一旦開発としては終息を迎えました。
その後、2015年に国連が掲げた持続可能な開発目標(SDGs)の17の目標に対して、環境を意識した消費者志向や企業戦略に注目が集まるようになりました。この頃を境に、商品へのお問い合わせや開発ニーズが増加しました。
2018年に行われた展示会の様子
カーボンニュートラルへの関心の高まりを受け、開発を再開
2018年には、石油資源の枯渇や温暖化、二酸化炭素の削減などの問題が世界的に一般的になりました。このような背景を受けて、2008年以来培ってきた技術的なノウハウを活かし、現代の要求に合った植物由来塗料の設計と開発を再スタートしました。
再開されたプロジェクトでは、すべてを1から始め、原材料などの情報を収集しました。入手した製品の性能評価を繰り返し行い、塗料開発を完了させることとなりました。
2022年、武蔵塗料は従来得意としている家電製品や車内装製品向けに、植物由来塗料バイオペイントとしてEA-NVB62-とEA-NVR64-を市場に投入しました。これに伴い、顧客への提案活動やプロモーションを含め、全社的にリリース展開を行いました。
植物由来性の塗料製品化が実現。サステナビリティを実現させる新しいアイテムとして
家具をはじめ、さまざまな素材との融合、広い分野へ今後展開が見込まれる
植物由来原料がほとんどなく、開発は困難を極める
2008年にバイオペイントを開発した際、市場にはほとんど植物由来の原材料が存在せず、特殊な原材料を携帯メーカーや原材料メーカーとの協力で作り上げる必要がありました。
最近では、原材料メーカー全体で植物由来の製品が増えてきていますが、2018年時点では、工業用塗料向けの植物由来原料はまだほとんど存在せず、原材料の調査と選定が非常に困難な状況でした。さらに、入手した植物由来の原料は他の原料との相性が悪い特殊な挙動を示しました。
このような制約のある状況での開発は苦戦を伴いました。原材料の選択肢が限られ、原材料の組み合わせにも制限がかかるため、開発は困難を極めました。当時の武蔵塗料の社内目標は、既存分野である家電や車内装用に適用可能なバイオペイントを開発することであり、そのハードルの高さを痛感しました。
約4年の時間をかけて植物由来の原材料を収集し、各植物由来原材料と他の無数の原材料との相性を詳細に確認しました。ターゲットの性能やスペックに適合する処方を、針に糸を通すように少しずつ確立していき、塗膜性能や発色性、バイオ比率25%以上という条件をすべて満たす配合を見つけ出すまで試行錯誤を続けました。
ターゲットマークに到達できる塗料が完成した瞬間は、言葉に出来ない程の達成感を感じました。努力が報われた瞬間であり、武蔵塗料チーム全体の取り組みの成果を強く実感した事を覚えております。
開発当時の苦労を語る金田
マーケティング戦略を見直し、共創を始める
開発完了後に市場投入はしたものの、思うような広がりを見せず、壁にぶつかります。
そこで、顧客やユーザーへアプローチの方法を見つめ直すことに着手をしました。
2018年以降、環境への取り組みが活発化し、今ではSDGs時代と言われるようになりました。企業の目的は利益追求だけではなく、社会や環境への貢献が求められ、また企業価値の向上が先の未来で重要なポイントとされています。
現在、ブランディングや環境戦略を打ち出す企業が増加しており、企業がユーザーに伝えるストーリーやメッセージ、環境への思いに共感を得ることが重要です。
そのため、このバイオペイントは製造業に関わるメーカーのメッセージを具現化する上で一助となると考え、自社についても、バイオペイントが伝えたいメッセージとビジョンを一新し、マーケティング戦略の見直しを図りました。
まずはじめに、新しいマーケティング戦略から、協力をいただける企業を見つけるために、私たちは環境改善活動に共感していただける仲間を探すところから始めました。そして、原料メーカーが持つお客様との関係も含めて、共創体制を確立しました。さらに、先進的な企業を目指してアプローチを開始しました。その結果、ブランドコンセプトに合致した商品をユーザーに具体的なメッセージとブランドストーリーと共に届けたいというお客様との関係を築くことができました。
ここで、木材とバイオペイントを組み合わせ、サスティナブルなアイテムを創り出しました。
マーケティングの必要性とメッセージの大切さを改めて気づかされた経験談を語る
まだ目標のスタート地点。私たちが挑戦する石油資源削減の取り組みはこれからが本番
私たちのバイオペイントは、石油資源の削減という環境への配慮を促進するための取り組みのスタート地点と考えています。日本はこの分野においてまだまだ未成熟であることを認識しており、国内製造業におけるCO₂排出量は業種別でも上位に位置しています。
現在のバイオペイントの確立は非常に喜ばしい成果ですが、製品としてもこれがゴールとは考えておりません。日本市場においても環境配慮型の原材料、また、技術は加速度的に向上していくと考えております。
価値観、考え方も日々変わっていく中、時代の最先端に見合った製品を作り続けて行けるように努めていく必要性があります。
また、私たちには、日常生活で接する様々なメーカーの商品に関与する機会があります。
そのため、私たちには作る責任、使って頂く商品に果たす責任があります。
様々な商品を使用するユーザーやメーカーが、私たちのメッセージと思いに共感し武蔵塗料のファンとなり、それらの人々が購買動機を変化させるような大きな効果を発揮することによって、バイオペイントが日本の「モノづくり」にイノベーションを起こす可能性に期待しています。
石油資源に代わる環境に配慮した資源への安定的な転換や、二酸化炭素の削減や循環化と
いった大きな目標の下で、私たちは「塗料」という領域で新たな価値を提供し続けるために挑戦し続けます。
環境貢献に繋がるポイント
◆Point① 石油資源から再生可能資源(植物由来原材料)に置き換える事で持続的循環型社会を形成
◆Point② 植物由来原材料を使用することで将来的に温室効果ガス/CO₂排出量低減に繋げる
◆Point③ 環境型配慮製品や天然素材とコラボレーションすることで素材保護や性能担保しながら、更なる効果へ
◆Point④ 『保護』によるライフサイクルの延長
バイオペイントとは、植物由来の再生可能資源を利用し、色と機能で世界を豊かにすると共に持続可能な社会の実現に貢献することを目指した商品です。従来通りのコーティングの価値である『保護』によるライフサイクルの延長、『加飾』によるイメージ貢献、『機能性』による+αの価値付与、これらの価値を維持しつつ環境貢献を目指します。
環境意識を広め、購買動機の変化から、社会・企業・個人に満足感と幸福感を届け、成長に繋げる
バイオ比率のさらなる向上や新たな資源の研究、二酸化炭素に対する企業的な取り組みなどを通じて、バイオペイントの普及を図り、お客様やこの業界の前進に貢献したいと考えています。また、環境志向を消費者やユーザーにも伝える活動に取り組み、社会・企業・個人の全ての方々に満足感と幸福感を届け、そして社会と人の成長に、貢献することができると信じています。
バイオペイントを通じて、社会と人にどう貢献できるのかを対談する様子
塗料が役割を超えて進化するストーリー
バイオペイントが起こすイノベーションは、社会・人の成長です。
従来の塗料は、環境に対してネガティブ志向でありますが、『塗料』というアイテムが単なるプロダクトへのカラーリングや機能性をもたらすだけではなく、社会課題を大きく変革するソリューションとして、進化する可能性を秘めていると確信しています。
私たちはパーパスをもとに、ソリューションがどう役立ち、社会貢献ができるのか。
常に考え行動し、研究開発をしながら価値提供をしていきます。
Corporate Purpose:色と機能で世界を豊かにする
Corporate Mission:人を支え、社会に尽くす企業であり続ける
この挑戦は容易ではありませんが、私たちは情熱を持って取り組み続けます。
私たちの使命は、革新的な塗料を通じて、より良い社会と未来を築くことです。
お客様や業界と協力しながら、イノベーションが起こるその日まで、この想いやビジョンを実現するためにこれからも挑戦を続けていきます。
Corporate Challenge:2030年までにバイオマス100%を目指します
会社概要
商号武蔵塗料ホールディングス株式会社
Musashi Paint Holdings Co., Ltd.
設立1958年(昭和33年)6月30日
資本金2,300万円 (授権資本9,200万円)
従業員数248名 (グループ合計1,000名)
海外拠点26カ所 (開発センター含む)グループ会社一覧
本社所在地〒171-0022 東京都豊島区南池袋 2-30-16 グリックビル
■ホームページ
https://musashipaint.com/index.html
https://www.facebook.com/musashipaintNippon/
https://www.instagram.com/musashi_paint_official/
https://www.linkedin.com/company/musashi-paint-holdings/
■YouTube
https://www.youtube.com/@musashipaint410
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