感染対策のプロから備蓄の大切さを伝えたい。~災害時、水がなくても感染対策できる備蓄キット開発の裏側~
モレーンコーポレーションの新製品開発プロジェクト「Pain!」は、2024年1月に発生した能登半島地震の支援活動を通じて、新たに「モレーン災害時用感染対策備蓄キット」と「モレーン嘔吐物処理キット」を開発しました。
本キットは災害時の水が使えない状況下、避難所など多くの人が集まる空間の感染対策に役立つものです。
「感染対策製品を扱う私たちが、命を守るためにできることは何だろう」
支援活動を行う中で生まれた問いに対し、行き着いた備蓄キット開発。私たちの挑戦を、Pain!プロジェクトの中島がお伝えします。
製品開発プロジェクト「Pain!」とは
Pain!は、2022年1月に発足したモレーンの製品開発チームです。
Pain!では、お客様自身も気づいていない潜在的なお困りごとを発見し、解決するための製品開発を日々目指しています。
メンバーは全国の各拠点から招集され、営業、開発、広報、知的財産管理など様々な部門からチームに参画しています。
私がPain!のメンバーになったのは2024年3月のことです。
普段はインサイド&ECグループに所属し、お客様と接する機会も多い中で、本備蓄キット開発に際し「顧客目線での意見が欲しい」との声があり、チームに加わることになりました。
「災害時用感染対策備蓄キット」開発の経緯
能登半島地震においてモレーンは、発生直後から感染対策製品の物資提供を始めとする支援活動を行いました。
参考:能登半島地震から6ヶ月。感染対策の専門家が支援を通して考える「私たちにできること」
その中で分かったことは、「感染対策物資を備蓄している自治体や病院が少ない」ということでした。
災害時の避難所は、感染症が蔓延しやすい環境です。
特に高齢者が多い避難所では新型コロナウイルス、ノロウイルス、インフルエンザの同時発生が多く、能登半島地震でも同様の状況が起こっていました。
感染が起こりうるあらゆるシーンで感染対策製品の提供を行っている私たちは、災害の支援活動を通じて「感染対策製品を備蓄する大切さ」を伝えていく必要があると感じました。
震災時には多くの物資が必要になりますが、それらが実際に被災地に届くまでにはタイムラグが発生します。
このタイムラグの間、一定の感染対策ができる備蓄用のキットがあれば、感染症の発生を少しでも抑えることができるはずです。
キットの開発を行うことで、感染対策製品を備蓄する重要性を伝えたい。
Pain!によるキット開発は、そういった思いからスタートしています。
「モレーン災害時用感染対策備蓄キット」の中身とは?
災害時用感染対策備蓄キットは「感染をしない・させない・拡げない」を目的としたキットです。(段ボール1箱分におさまるサイズ感)
超急性期(発災から 2〜3 日)、急性期(2〜3日から 1 週間)の感染対策に必要な物品がそろっており、弊社ですでに取り扱っている製品のほか、使いやすさを考慮し新たに開発した製品も加えています。
(実際に入っている製品)
・N95 マスク AIR+ L(標準)サイズ
・アイシールド
・プラスチックガウン
・ニトリルグローブ
・環境表面清拭用ワイプ
・嘔吐物処理キット
・サージカルマスク
・嘔吐用バッグ
・便器用バッグ
・感染対策啓発ポスター
1箱で被災者5人、医療従事者1人の7日分を想定しており、上下水道が使えない状況下や避難所において、医療従事者の皆様が円滑な活動を行える製品に厳選しています。
水が使えなくても、感染対策ができる
本キットは、水が使えなくても感染対策ができます。
例えばノロウィルスなどの消毒方法として、家庭用漂白剤などを水で薄め、消毒液として使用する方法がありますが、災害時には水が使えません。
そんなとき、高い洗浄力と除菌力を持つ環境除菌ワイプ(クリネル ユニバーサル)であれば、最初から湿っている状態なので、水がなくても消毒ができます。
また、災害時の代表的な備蓄製品に便器用バッグ(ハイジー ベッドパン・ポータブル便器バッグ)があります。
一般的な便器用バッグは凝固剤を混ぜて固める仕様ですが、この仕様は液体汚染物が空中に飛散するリスクがあります。
弊社のキットに含まれる便器用バッグは、約30秒で約700mlの液体を吸収する強力パッドを内包することで感染リスクを最小限に抑えます。
医療機関では災害時の断水を想定していないことが多いようです。水が流れないトイレは感染症の温床となりえるため、汚染物質の封じ込めはとても大切です。
簡易性と安全性を重視したモレーン嘔吐物処理キット
今回開発した嘔吐物処理キットは、水が使えない状況でも素早く安全に処理することで、感染を防ぐことができます。
市販の処理キットには使い方が複雑なものも多くありますが、弊社では初めての方でも簡単なステップで安心してご使用いただけることにこだわり、新たに開発を行いました。
「一般の方にも感染対策の大切さを」感染対策啓発ポスター
弊社代表の草場が避難所を訪れた際、いたるところに手書きの注意書きが張られていました。
一般の方の中には、どんなタイミングで手を洗ったらいいのか、感染対策にはどんな方法があるのか、不安に感じたり、迷ってしまったりする方も多いはずです。
そこで私たちは感染対策の大切さや、正しい知識・方法が皆様に広く伝わるよう「感染対策啓発ポスター」を新たに作成しました。
本ポスターには 「標準予防策」というワードが記載されています。
感染対策が身近なものである医療従事者の方には周知されていますが、一般の方にはあまり知られていない言葉です。
例えば、血液や体液には感染リスクがあります。自分の傷口を触った手、体液のついた手で他の人に触れれば、感染の可能性があります。
分かっているようで日常的に意識しにくい現実を踏まえ、私たちは「標準予防策」という言葉を広く浸透させたいと考えています。
非常時の感染対策製品を「厳選する」難しさ
感染対策を完璧にしたい。
そう思えば思うほどキットに含めたい製品はどんどん増えていきます。そのため、製品選びは予想以上に難しいものでした。
例えば、今回のキットに手指消毒剤は入っていません。
水が使えない状況下で手の消毒は必須であり、消毒剤は絶対に必要です。
ただ新型コロナウイルスの流行を機に手指消毒剤はどこでも常備されるようになり、今回の被災地でも十分な量が確保されていました。
開発した備蓄キットの使用期限は5年です。
手指消毒剤はそれよりも早く期限が切れてしまうこと、そして日頃から常備されているケースが多いこと、支援物資として届きやすいことを理由に「製品に含めない」ことを決めました。
物資が届くまでの間、本当に必要なものは何か?
何がどのくらい必要なのか?
どんな製品を組み合わせるのか?
これらの要素を普段お客様と接している営業の視点も取り入れながら検討し、医療従事者の皆様や一般の方々が扱いやすいキットになることを目指して、何度も議論が重ねられました。
「命を守る」につながる
今回のキット開発を含めたモレーンの活動は「命を守ること」につながっています。
災害はどこでも起きる可能性がありますが、個人や施設での備蓄が十分に行われていないことは想像以上に多いのではないでしょうか。
災害時は個人での備蓄も大切ですが、個人の力だけで賄えないケースが多くあり、感染対策製品を普段から備えている自治体や病院もまだまだ少ないのが現状です。
感染対策において大切なのは、日頃からの備えです。
今回のキット開発が備蓄の大切さを少しでも伝えるきっかけとなり、そのための議論が施設や組織の中で増えることを願っています。
モレーンは、「感染症が人と人を遠ざけることのない未来を実現する」ことをビジョンに掲げています。
災害時、避難所や水が使えない非常事態下においても、正しい知識を持って正しい行動をとれば「互いに助け合うこと」ができるはずです。
そのために、最適な製品と正しい感染対策ノウハウを提供し、感染症を広げないことが私たちの役割だと考えます。
これからも私たちは感染対策のプロフェッショナルとして、お客様に寄り添い、安心していただける製品やサービスを提供してまいります。
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