大正元年から木材加工業を営む「井上企画」がサステナブルな素材開発事業を開始、3Dプリンターの素材を作る理由
株式会社井上企画は、昭和26年に設立された「有限会社井上材木店」から企画、開発部門を独立し「株式会社井上企画」として設立されたのが始まりです。材料販売事業、木材加工事業、製品企画事業、素材開発事業、建築仕上げ材事業を展開しています。
当社は、福岡県大川市で製造される家具に使われている、広葉樹の廃材を使用し、新材料を独自に開発する素材開発事業を開始いたしました。
この素材は、広葉樹の色合い、匂いなどの質感を活かし、高い強度と耐久性を持つ新素材となっています。また、この素材で製造された製品は水平リサイクルが可能であり、理想的な循環型の事業となりました。
※広葉樹とは、ウォールナットやチェリー、ホワイトオークなど主に家具に使用されている木材になります。
年間100tの端材を有効活用したいという思い
井上企画で排出される端材が年間100t近く出ており、これを何かに有効活用したいという想いから始まりました。当初は、端材を活用した商品として、小物の製造をしていましたが、生産量と端材の量また、製品の単価がどうしても高額になってしまうこと。木工の機械が大きなため、小さな商品を作るのに危険性が高まってしまうということがありました。
「木材が3Dプリンターの素材にならないだろうか」とひらめいた
最初に3Dプリンターの素材にしようということになったのは、オレンジの皮を使用した材料で作った「Ohmie」というイタリアのデザイン会社が製造した商品がきっかけです。
オレンジの皮の色合いが商品に出ており、これは、木材も同じことができるのではないかと思い、3Dプリンター関連のことについて調査を始めました。
出典:Krill Design(画像①.②)、セレンディクス(画像③)
調査を進めるにつれて、木材を使用している素材はあるものの、その木材が具体的に何の木であるかは、わかりませんでした。その点に着目し、弊社で取り扱っている広葉樹を樹種別の素材にしてみようということになりました。2021年8月頃のことです。
それからは、当社の人間に全く知識のない3Dプリンターや材料に関して、調査、学習を重ね、3Dプリンターを取り扱っている会社へのヒアリングをし、事業の可能性を研究していきました。
そこから、事業計画書を作成して具体的に動き始めます。海外の材料の情報や3Dプリンターを使用した製品、どのようなものができる可能性があるかなどを詳細に調べました。
協力会社の設備を借りて、実験を繰り返す
材料開発を始めた段階では、そもそも「できるのかどうか」も定かではありませんでした。協力会社の設備を使って、小規模な実験から始めました。材料を計量して、手で撹拌し、水中に手を一日中つけて、手がふやけるまで材料の研究を続けました。「これはうまくゆきそうだ」という材料を少しずつ作っては、3Dプリンターで出力する、という実験を繰り返しました。
素材の試験を繰り返し、木材で3Dプリンターの材料ができるなと思った段階で、新素材を製造するための新工場建設に着手しました。2022年9月頃のことです。
新工場(maruilab)では、木材の粉砕から新素材の製造。新素材を使用した3Dプリンターでの造形まで一連の工程が可能な工場となっています。
工場が完成したあと、量産の設備を使用して、材料の試験を再び始めました。最初の試験機では、どうしても素材が黒っぽくなってしまう問題や連続的に生産する際に問題がいくつかありましたが、ひとつひとつ材料の特性や製造の条件などを検討し、今では、木材の本来の色に近い新素材を作ることに成功しています。
まだまだ新しい分野のため、日々製造する素材の精度を良くするために研究を続け、より良い素材をお届けできればと思っております。
脱プラスチックを目指している時代ではありますが、完全にゼロにするのは難しいと考えています。それならな、いま使っているプラスチックも有効活用できるように、プラスチックを粉砕できるような設備も準備しました。粉砕したプラスチックと木の端材を混ぜ合わせた素材をもとに、3Dプリンターで造形をしたところ、プラスチックの再利用など、いろいろなところで当社が役に立てるのではないかと考えています。
そして使わなくなったら弊社で再び粉砕し素材に戻す。また造形して違うものに作り替えることもできます。同じ素材を長く使うことができるので、環境問題を解決する一助になるのではないかと考えています。
株式会社井上企画について
「自然の恵に感謝・謙虚・誠実であること」
大正元年に創業の歴史を持つ福岡県大川市の株式会社「井上製材所」を母体とし、新たなコンセプトで企画開発を試みる「井上企画」。井上企画では、木材の販売、加工、製品企画、コントラクト事業を行っており、福岡県大川市に本社工場、第二工場・材料倉庫を所有。
2022年より素材開発事業部を立ち上げ、2023年に福岡県大木町に「marui lab」を開設し、循環型の事業に向けWPCの開発をスタートしました。
本社:福岡県大川市大字向島1998番4
創業:大正元年(井上製材所)平成18年(井上企画)
代表者:代表取締役井上慶子
https://www.inouetimber.co.jp/
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