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1983年創業のビルメンテナンス管理会社が新規事業としてローンチした『スマリブ』の開発秘話。管理会社・点検会社・居住者をつなぐスマートなプラットフォームとは

著者: 株式会社カンキョウ

株式会社カンキョウは1983年創業し、『地球のカンキョウをより良くする』というMissionのもと、生活排水等を処理する水処理施設維持管理業務をメイン事業とし、マンション等に付随する排水管の清掃や消防点検等のビルメンテナンス事業等も運営して40年以上が経過しました。


2021年より社内ベンチャーとして新規事業部門を新たに創設し、新規事業の第1弾として2023年5月、カンキョウ初の自社製品が誕生しました。その製品が、ビルメンテナンス業務の課題に焦点を当てた物件・スケジュール管理システム『スマリブ』です。


このストーリーでは、スマリブの事業リーダーである岡田がスマリブ誕生の舞台裏や、製品への想いについてお伝えします。


1人で新規事業部門を創設。ドタバタなスタートを切った


私の所属する場所は、大阪堺市にあるS-Cubeという施設です。S-Cubeは、堺市が出資されて運営している施設で、第2創業やスタートアップを考えている企業が入居し、様々な支援を受ける事ができます。私はS-Cubeに2021年4月より入居しています。


入居するきっかけは、入社して10年目になる2021年2月のある日、取締役から新規事業部門を創設して、新たに新規事業を始めて欲しいと提案されたことでした。


当時はS-Cube入居を決める2週間前に言われ、考える時間もなく、その場で決断する必要がありました。思えば2020年3月に取締役でもあった父が急逝した事で、仕事へのモチベーションが低下し、仕事と家を往復する毎日で正直当時の記憶はあまり覚えていません。

父の死をずっと引きずっていましたが、くすぶってても仕方ないのでチャレンジしてみようと思いその場で即決しました。


今思えば、私自身大学卒業後ずっと海外に行きたいという想いもあり、定職につかず海外へバックパッカーとして旅をしていました。その時もやると決めた時の行動は早かったので、当時と状況が少し似ていたのかもしれません。


何でも良い事業は、何でも良くないのだと学ぶ


S-Cubeに入居してからは、全く何をするかも決まっていない所からスタートしました。

上司からは、『既存業務にとらわれず、何でも良いから何か考えて欲しい』と(かなり大雑把に)言われ、当然僕自身も事業を起ち上げた経験がないので何から初めていいかもわかりませんでした。


そんな中まず初めにやった事と言えば、ひたすらビジネスアイデアや事業の起ち上げ方等の本をひたすら読む所から始めました。


同じ施設に入居している他の起業家や支援スタッフにも助けられながらも色々とビジネスアイデアが出てきて、経営陣に提案するも否決されるといった日々が続きました。上司が言う何でも良いは何でもは良くなかったわけですね。


当社の既存事業のオペレーション効率の課題感から、スマリブのアイデアを得る


何度跳ね返されたかわかりませんが、スマリブのアイデアが誕生したのはある時当社の既存業務であるビルメンテナンス業務を見て浮かびました。


まずマンションやアパートに付随する様々な点検業務を実施する際の連絡は、マンションの掲示板や、各入居者のポストへお知らせを投函するのが一般的です。


中でも消防点検や雑排水管清掃等、入居者の部屋に入らないといけない点検に関しては、実施日内の時間であれば、時間の調整が必要であれば、お知らせにある連絡先に入居者が電話して調整してもらいます。



そこでお知らせの内容を見て1つ疑問が生じました。


レストランや美容室、宿泊施設等、様々な業界ではスマートフォン1つで日時が調整出来る世の中になっているのに、ビルメンテナンス業務では今と昔でほとんど業務フローが全然変わっておらず、日時変更の連絡手段は電話がほとんどという結果も出ております。



ビジネスプランが堺市から採択され、事業開発の後押しに


まだスマリブとして事業を行うか決まっていない中、1人で活動していくのにも限界を感じていたタイミングもあり、縁があって1名入社していただきました。


反発もありましたが、今思えば出来る範囲が増えていったので加速度的に進み、チームが出来て良かったと思っています。


また、2022年7月に堺市が主催する『さかいアクセラレーションプログラム』というイノベーターズブートキャンプにスマリブのビジネスプランを応募し、その革新性とビジョンが評価され採択されました。


このプログラムは、事業の構想段階から基本計画の策定、リソース/体制の確保、実証実験等のトライアルの実施まで一気通貫・ハンズオンで監査法人トーマツの方々が伴走支援して頂いたり、先輩起業家としてシャープ様、マクアケ様等の企業様にメンターとして交流し、貴重なフィードバックやアドバイスを受けることができました。



スマリブのビジネスプランが採択されたことで事業開発に弾みがつき、その後社内承認を得る事が出来ました。


新規事業創設から1年半かかり、ようやくスタートを切る事ができました。


『スマリブ』の開発は苦労の連続。構想と開発は別物だと思い知る


スマリブ事業としてようやくスタートを切れたのは良いですが、開発が想像以上に困難でした。イメージ上ではどんなシステムにしていきたいという構想はあっても、やはりイメージと開発するのとでは大きく異なりました。


1つボタンを追加するだけでも、裏側で別のページに影響が出るなど、上手くまとめるのが困難でした。世の中には様々なシステムがありますが、何気なく便利に使用していますが、シンプルなものほど優れていると実感しました。


また、開発する上で一番重視したのは、機能を過剰に盛り込まない事でした。開発する際には、色んな機能を入れたいという気持ちもわかりますが、過剰に盛り込むと使いづらくなると思ったからです。


その理由の一つとして、業界のITリテラシーの低さが関係していると考えます。


当社でも、様々なビルメンテナンスを行っており、スマートフォンで報告書を作成するサービスのトライアルを行いましたが、なかなか導入までには至りませんでした。


サービス自体は素晴らしかったのですが、当社の従業員の年齢層が高いため、スマートフォンの操作に慣れていない人が多くいたからです。


これは当社だけの問題ではなく、同じ業界でも同様だと考えられます。


そうした方々でも利用できるようなシステムにするにはどうすれば良いか考えた所、機能を制限し、クリックなどの操作を最小限にすることでした。


まずは機能を絞って開始し、徐々に慣れてもらいながら機能を追加し、生産性や効率を高めることで業界のITリテラシーを向上させることができると考えています。


管理会社・点検会社・居住者をつなぐプラットフォームとしての「スマリブ」とは



スマリブは、マンションなどのメンテナンスや改修工事において、居住者との日程調整や建物情報の管理、協力会社とのスケジュール管理を行うプラットフォームです。

主に管理会社様や自治体様を対象としたシステムとなっております。


スマリブは大きく分けて以下の3つの画面で構成されております。


1.管理画面

スマリブ契約者様が使用する画面で、建物情報や不随するスマリブ契約者が使用する画面で、建物情報や点検のスケジュールを一元管理できます。


各建物の日時調整が必要な業務は管理画面上で二次元コードを作成し、画像ダウンロード後に、従来配布しているお知らせに添付し配布して頂けます。


メールで実施の連絡をしている場合でもURLをコピーする事が出来ますので、メールでURLを送付する事も可能となります。


日時調整が不要な業務に関しては、ビルメンテナンスは実施サイクルが半年や1年と長い点検が多い為、管理する建物が増えると、次回実施する予定の点検を見落としてしまうリスクがあります。


そのような場合でも、スケジュールの自動登録や任意の日に通知設定をする事で、次の点検予定前に通知が届くので、協力会社との日程調整がスムーズに行える安心機能も備わっています。


2.共有画面

点検事業者様が主にスマートフォンで操作する画面です。


管理画面上で事前に共有設定を行うことで、共有された点検の注意事項や空室の場所を確認できます。また、予約された部屋の一覧をリスト形式で確認することができ、予約されていない部屋も部屋割り表として表示できます。


さらに、各部屋の作業記録として、従来の紙ベースのサインに代わり、スマートフォンで簡単にサインすることができ、作業終了後にはサイン表をPDFとしてダウンロードすることもできます。複数の班で実施する場合でも、一元管理して共有できるため、紙ベースのサイン業務に比べて手間と時間を削減できます。


3.居住者画面

マンションやアパートに住む居住者様がスマートフォンで操作する画面です。


管理会社や協力会社からのお知らせやメールに記載された二次元コードやURLをスマートフォンで読み込むことで、いつでも日程調整が可能です。


メールアドレスを任意で入力する事で、作業前日に居住者様にリマインドメールが届く安心な機能も提供しています。


メンテナンスの実情

スマリブを広めるきっかけの1つとして、メンテナンスの実情があります。


消防点検は法令点検でありながら、全国的な実施率は約半分であり、2015年以降は実施率の伸びも鈍化しています。


また、このような点検は全住戸に対して個別に日程を調整することは困難なため、業者側で日程を決めてしまいます。


そのため、居住者様に対してせめてもう少し融通の利くシステムを提供したいと考えています。


さらに、全住戸を実施する事がメンテナンスの効果が最大限発揮できます。


スマリブの普及により、間接的にでも防げたかもしれないような火災や事故を1つでも未然に防ぐ事が出来るようなシステムになることを目指しています。

今後の展望

約8カ月の開発期間を経て、スマリブはついに完成しました。


先日開催されたマンション総合エキスポという展示会に初出展し、関係企業様からも高い評価を受けております。


今後もスマリブが導入されることで、安心してくらせる社会となる一助になれるよう、さらなる進化を目指していきます。

今後ともスマリブをどうぞよろしくお願いいたします。




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