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シリーズB累計約31億円資金調達。現場DXで求められるのは「実務で初日から使える。使い込むほどにAIができる。」フェアリーデバイセズが導き出した、現場のための熟練工AIへの道

著者: Fairy Devices株式会社

2023年6月6日、現場作業のDXを支援するフェアリーデバイセズがシリーズB累計約31億円の資金調達を発表しました。


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出資元にはダイキン工業、ヤンマーベンチャーズ、NTTテクノクロスといったグローバル企業が名を連ねていますが、、、

そもそもフェアリーデバイセズってどういうスタートアップなのでしょうか?


このストーリーでは、2019年8月にフェアリーデバイセズの取締役CSO/CFOに就任した竹崎祐一郎に対する、参画の経緯やコネクテッドワーカーソリューション(https://fairydevices.jp/cws)の展開に関するインタービューの内容をお伝えします。ディープテック投資に関して”この道20年”なベテランが何故フェアリーデバイセズを選び、どのようなテクノロジーの未来を見据えているのでしょうか?



日本のテクノロジーを世界に送り出すための20年。

-様々な選択肢があったと思います。その中で何故フェアリーデバイセズを選んだのですか?


この業界に関わり始めて20年ほどになります。具体的に言いますと、最初の10年は投資家およびアドバイザーとしてハードウェア、ソフトウェア、コンテンツ、通信を含むテクノロジー業界への投資を担当していました。その後、投資家からいちスタートアップの人間として転身しています。


そもそも私は「日本の技術は世界中でもっと認められるべき」と思っています。しかし、半導体やLCD、LED、有機EL、そしてスマホなどはいいところまでいったものの、世界標準となるには一歩及ばずという状態だったように感じていますし、その様子を見ていて、とても悔しく感じていました。投資サイドとしていろいろな提案・支援をしつつも、なかなか日本が世界から認められるべき方向へ世の中を動かすことができずに、頭を抱える日々でした。


そしてハードウェア系スタートアップへ転身。当時はGoogle Glassが発表されたタイミングだったこともあり、日本が世界をリードする光学技術によるグローバルな事業展開を企図しヘッドマウントディスプレイの開発に携わっていました。ですが、結論としてヘッドマウントディスプレイでは本当の意味で産業現場のお客さまが求めるものにならないのではないかと考えるようになりました。このときは通信速度も今ほどではなかったですし、半導体はOMAP、Androidもまだ4.2の時代でした。アプリ、コンテンツを含めてエコシステム全体がまだ未成熟だったことも、普及に至らなかった大きな要因です。


こうしたヘッドマウントディスプレイの開発を通じて「首掛け型デバイスに可能性がある」と考えるようになっていた時に、フェアリーデバイセズ創業者の藤野真人と出会いました。藤野はすでに首掛けのデバイスとソリューションを同時に作り始めていました。「こんなにドンピシャで同じ方向を見ていること」「何より、すでに開発を進めていること」に感動し、共に働くことを決めました。


藤野はハードウェア、エッジ、通信、アプリケーション、AI、データ、そしてそれを取り巻く知財までバーティカルに設計開発ができる稀有な人材です。ここまで一気通貫で技術を保有し、AIによる現場データ活用を前提として技術開発ができているからこそ、フェアリーデバイセズのソリューションはアメリカで開催される世界最大のテクノロジー展示会「CES」のInnovation AwardsやTime誌のThe Best Invention of 2022など、世界的に高い評価を得られていると思います。


-ひと口に「DX(Digital Transformation)」といえど、それを実現する方法は実にさまざまです。フェアリーデバイセズは、現場DXのために何をしようとしているのでしょうか?


フェアリーデバイセズは当初、大企業に研究開発機能を提供する事業からスタートしました。その後、資金調達を経てスタートアップとなり、現在は自社サービスとして首掛け型デバイス「THINKLET®(シンクレット)」を活用した「Connected Worker Solution®(コネクテッドワーカーソリューション)」の開発・提供をしています。


現在、メンテナンスやプラント、建設、運輸、インフラなどの産業現場で働く人たちは、設備の高度化による負担増と生産年齢人口の減少により、常に人手不足な状態に陥っています。そこで、デジタルデバイスを装着した現場作業員を熟練工が遠隔支援したり、AIを活用した業務を行うことで、現場業務の効率化とデジタル化を両立。このように、高齢化社会における事業拡大を実現する解決案として2019年に発表したのが、コネクテッドワーカーソリューションです。


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-つまり、AI技術で現場の人たちを助けるという考えなんですね?


「AIが人間の仕事を奪う」と言われることもありますが、産業現場では全く逆で「人が足りないからAIの手も借りたい」という状況です。多くの業界でグローバルな市場は拡大しており、熟練工が足りないことで世界の市場シェアを失いかねない。つまり、チャンスを取り損ねることにもなるわけです。


特に我々が危惧しているのは、50〜60代の熟練工の方々が保有する経験・知見・ノウハウが誰にも引き継がれずに失われてしまうこと。テクノロジーを駆使してこうした技術を残し、かつ熟練工のノンコア業務を減らすために開発したのがコネクテッドワーカーソリューションです。


出典: 2020年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2025年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(令和5年推計)」(出生中位・死亡中位推計)



-とはいえ、DXのためのツールとしてTHINKLETのようなデバイスを開発しているのはフェアリーデバイセズだけではないように思います。THINKLETの強みを挙げるとするならば?


いろいろあるのですが、あえて絞るのならば次の2つとなります。


1. 本当の意味で、現場で「すぐに」「負担なく」使えるソリューションであること

2. 日々の業務データが蓄積され、“熟練工AI”を目指せること


当然ながら、多くの企業が現場のDXに踏み込みたいと考えています。けれど、どうやって・どこから・どこまで踏み込めばいいのかがわからない。何より、デジタル活用にはある程度のデータ量が必要です。ところが、AIを活用したいと思っても「すぐに使える」とはいかず、むしろデータが蓄積されるまでの間は予算を費やしているにも関わらず何も得られない期間を過ごさなければならないこともあります。

その点、当社のソリューションは初日からすぐに現場支援に使うことができます。現場作業員の負担がないハードウェア、現場教育コストを極小化したUI/UX、Wi-Fi/4G LTE搭載により、本体のみで常にクラウドと接続し熟練工による遠隔支援を行うことが可能です。かつ、その現場支援内容がデータとして蓄積され、後々は「熟練工AI」として現場へのフィードバックも自動化されます。「現場を支援」「データ収集&学習」「熟練工AI構築」のサイクルをぐるぐると回していくためのベースとなるプラットフォームを、我々が伴走しつつ構築していくわけです。


-使えば使うほど熟練工AIができあがるということですか?


そうですね。「Stage1:遠隔支援で経営効果を出しつつデータがたまる」「Stage2:音声AIによるコパイロット」「Stage3:機械がチームメイトになる」の3段階を踏むことで、熟練工AIの実現を目指しています。



Stage1の段階で、遠隔支援により①現場作業効率(効果x件数)が向上、②日報作成などのノンコア業務を省力化、③作業者の負荷無く現場データを注釈データ付きで収集できます。今後は、Stage3の段階まで進めば、人間とは得意分野の異なる「機械のメンバー」に、機械が得意な仕事を任せるようになる。そして人も得意業務に集中し、チームの能力が向上する。チームの信頼に足る「機械のメンバー」がいることで、人間の行動変容が起こる。何より、人か機械かを問わず相互理解とダイバーシティが促進されるようになると考えています。


-フェアリーデバイセズはダイキン工業やヤンマーエネルギーシステム、NTTテクノクロスなど、早い段階で大企業とのオープンイノベーションを実現している印象です。決め手は何だったんでしょうか?


やはり前述のとおり「現場ですぐに、負担なく使えるソリューションであること」「日々の業務データから“熟練工AI”を構築できること」です。多くの大企業では、ヘッドマウントディスプレイを活用した試行錯誤の結果、現場DXにより足元で何をしたいのかはある程度のレベルで明確化されています。一方で、現場で実際に使えるソリューションはまだ少なかった。我々の製品は、現場の方々が実務で日々使えるものになっていることが大きな要因でした。嬉しいことに「これならば現場DXが実現できる!」といった声も多くいただいています。


同時に、オープンイノベーションによる取り組みを実直に進める当社の姿勢を評価いただいているとも感じています。スタートアップ企業として現場DXに対するビジョンを示すこと、既存プロジェクトと両立し得る柔軟なソリューションを提供すること、大企業としての得意分野・不得意分野を理解しつつ現実的なパートナーシップを構築すること…などです。おかげで、以下のような大企業各社に、国内だけでなくインドやベトナム、南極など18カ国・地域で利用されています。利用者数も2019年の発表時から毎年平均約350%成長を実現しました。


-今度こそ、目指している「日本の技術は世界中でもっと認められるべき」は実現できそうですか?


10年前に悩んだ「Why Now?」という大きな問いに、今は確信があります。

2023年の今、基盤技術とエコシステムが成熟したことに加え、インターネット上にオンライン化された情報が、LLMによって活用可能に変換され遍く(あまねく)流通しつつあります。しかしながら、実は産業現場の作業内容や人間の心理状態などの実社会の情報はインターネット上に存在しません。我々の技術は、これらインターネット上に存在しないさまざまな実社会の情報を、デジタルデータとしてAIが理解できる形に変換することができます。つまり実社会でLLMを実利用するために必須となる基盤技術なのです。そして同時に、実社会の現場を理解することで加速度的に高度化されるAIからの支援を、人間が現場で受け取るためのインターフェースでもあります。

先進国の生産年齢人口減少という喫緊の社会課題に対して、AIによるコパイロットが当たり前になる時代の基盤技術として、我々のテクノロジーの意義が益々高まっている状況なのです。

この大きな機会をグローバルな事業として実現するための道のりは、当然ながら平坦ではありません。そのために、多種多様な分野において、我々の理念に共感してくださる仲間を募集しています。

https://open.talentio.com/r/1/c/fairydevices/homes/4010


今は、エンジニアリングと自然科学だけでなく、哲学と社会科学も含めた、大きな世界の変化と摩擦が目の前で起きている、とても幸運な時代。こうした変化そのものを当たり前のものとして楽しみながら、仲間と共に乗り越えていくのはとても刺激的なことだと思っています。私自身も、実現場を舞台に最先端の技術と、それを社会実装するための哲学に全力で向き合える日々をとても楽しんでいます。





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