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時代が変わっても受け継がれる損保ジャパンの「Spirit −未来への指針−」

著者: 損害保険ジャパン株式会社


1888年に日本で初めての火災保険会社「東京火災」が創業してから135年。当時の日本になかった「保険」を社会インフラとして根づかせようと理想を掲げ、奮闘してきた先人たちの足跡が、損保ジャパンの歴史には刻まれています。


激動の時代から脈々と受け継がれてきた先人たちの理念と精神。それを損保ジャパンの普遍的な企業文化として継承しながらも、未来の価値を創造するために「変えるべきこと」は変えていかなければなりません。

損保ジャパンが目指す新しい企業文化を社員に向けて提示したものが、2019年に作成した「Spirit―未来への指針―」です。


この「Spirit −未来への指針−」は損保ジャパン社員の行動指針であり、創造性や独創性を追求していく企業姿勢でもあります。「Spirit −未来への指針−」が創られた経緯、また一人ひとりの行動や思考にどのように反映されているか、社員にインタビューしました。

大規模災害でこそ問われる「損保ジャパンの真価」



「自宅が停電してしまったという社員も早朝から出社し、応援に駆けつけた社員や代理店さんと一緒に『お客さまに少しでも早く保険金をお支払いしよう』と奔走しています。周囲のそういう姿を見て、こちらとしても気持ちが引き締まりましたし、この仕事の意義を強く感じる瞬間でもありました」



2019年9月9日、千葉県千葉市付近を襲った台風15号。記録的な暴風などで7万棟を超える住宅に被害が生じ、最大で93万戸あまりが停電に見舞われました。

首都圏火災新種保険金サービス部の小林舞子は、現地の災害対策本部で契約者の保険金支払いの業務にあたった経験を振り返りながらそう話します。


大規模な自然災害が起きたとき、保険会社にとって最大のミッションは、お客さまの被害の状況をいち早く特定し、迅速に保険金をお支払いすること。そのための臨時態勢として、損保ジャパンでは大規模災害の際に「災害対策本部」を立ち上げます。部門やエリアを超えた応援部隊が現地に駆けつけ、ともに歩むパートナーである代理店さんと一丸となってお客さまへの相談対応から被害状況の調査、査定、保険金支払いまでの一連の業務にあたります。



「被災した方々は急に日常が奪われる事態に直面し、不安と恐怖を抱えています。だからこそ『お客さまを助けられるのは私たちしかいない』との使命感で、少しでも早く保険金をお届けするために最善を尽くします」



そう語るのは、経営企画部 企画グループ 課長の佐藤伸剛。彼もまた、普段は本社で働きながら、全国で大規模災害が起こった際には災害対策本部の一員として現場での任務を何度も経験しています。


震災、火災、水災、風災…災害大国・日本では、毎年のように全国各地で災害が生じます。そのような有事のときにこそ、私たち損保ジャパンの真価が最も問われます。「いま、お客さまのために何ができるだろう」と常に考えながら、すべてのお客さまの事故対応が完了するまで、業務をやり抜かなければなりません。


ここに、損保ジャパンが135年の歴史の中で変わらず大切にしてきた「Spirit」があります。


前身の5社を源流とする「損保ジャパンのDNA」



損保ジャパンは、大きく5つの損害保険会社を前身としています。その5つの会社それぞれに、損保ジャパンの源流をさかのぼることができます。

1888年、日本初の民営火災保険会社である「東京火災」が誕生。ドイツで発祥した近代的な「保険」の思想を、大火の多い東京で実現させたいとの先人の思いと努力が結実し、初めての火災保険が実現しました。24時間・365日体制で、火災が起きた際には提灯やとびぐちを持っていち早く現場に駆けつけていました。


その他の4社にも、それぞれに時代のニーズをいち早く察知し、新たな保険サービスを創造してきた歴史があります。



大阪の財界人の「大阪に保険会社を」との思いと北前船の心意気で誕生した「日本火災」。

日本における「傷害保険」のパイオニアである「日産火災」。

4社がスクラムを組み、戦後の保険業界をリードした「興亜火災」。

世界に目を向け、人の融和のために役立ちたいという熱い思いで設立された「大成火災」。


5社それぞれの歩みは異なりますが、そこには共通する先人の理念と精神があり、それがDNAとなって今日の損保ジャパンへと受け継がれています。


目の前の「人のために」考え、動く



その損保ジャパンのDNAは、大きく2つのキーワードに集約されます。

一つは「人のために」。災害や事故に見舞われたお客さまのために何ができるかを最優先に考え、動くことをいとわない企業文化があります。


「災害に遭ったお客さまは、ケガがなくとも精神的にショックを受けています。そういう状況も想像しながら、目の前のお客さまに対して自分がしてあげられることを考え、それをお客さまが望む形で提供することを心がけています」


入社以来、保険金をお支払いする保険金サービス部門でキャリアを積んできた小林はそう語ります。保険金サービス部門は、契約者であるお客さまと直に接し、災害の状況をヒアリングしながら、最終的に保険金を支払う、保険業務における「アンカー」の役割を担っています。


「お客様が被った被害はすぐに元に戻るものではありませんが、その中でもお客さまのご要望に最大限応えることで、少しでも不安を取り除けるようにしたい、との思いで仕事にあたっています。だからこそ、お客さまから『早くお支払いしてくれてよかった』と喜んでいただける瞬間が本当にうれしいですね」



保険金とともに、お客さまに最大限の「安心」を届けたい――その思いでお客さまの声に耳を傾ける小林。その根底には、お客さまのために最善を尽くす「人のために」の精神が息づいています。


結束力と実行力で目標に向かう「やり抜く力」



損保ジャパンが創業以来大切にしている、もう一つのDNAは「やり抜く力」です。


損保ジャパンの前身である5社は、それぞれが当時の日本に存在しない、新しい保険サービスの創造と普及に尽力してきました。日本初の火災保険や傷害保険。大阪で初の海上保険。世界に目を向けた保険会社の設立――いずれも、「これからの社会に不可欠だ」と先人が志を掲げ、奔走し、協力を呼びかけながら実現していったものです。


その後、社会の変化とともに保険に対するニーズも変化する中で、損保ジャパンも自動車保険や生命保険、さらには介護事業、デジタルなど新たな事業やサービスを創造し、市場を開拓してきました。日本の保険の歴史を築いてきた先人の「実現するまでやり抜く」精神が、高い結束力と実行力をもって目標達成に向けてチャレンジする企業文化として、今日の損保ジャパンを支えています。


この「やり抜く力」は、日々のお客さまや代理店さんの対応だけでなく、有事のときにこそ真価が発揮されます。佐藤は、2011年の東日本大震災の際、被災地の災害対策本部で業務にあたった経験を振り返ってこう語ります。



「被災地での災害対策本部での業務は長期間にわたるため、全国からチーム編成された社員が数週間ごとにバトンをつなぎながら対応してきます。慣れない環境、緊迫感、膨大な量の対応内容など肉体的、精神的にも辛いものがあります。しかし、より辛い状況に置かれているのは当然ながら被災しているお客さまです。最後のお客さまにお支払いを済ませるまで業務を完遂しよう、という意識が、災害対策本部のチーム全員で共有され、結束しながらお客さま対応にあたったのを思い出します」


「人のため」と「やり抜く力」。この2つのDNAを継承しつつ、損保ジャパンが未来に向けて目指す企業文化をまとめたのが「Spirit―未来への指針―」です。




「お客さまの安心・安全・健康に資する価値ある商品やサービスを創造し、社会に貢献し続けていく――これが、損保ジャパンの存在意義です。

その『社会に貢献し続ける』存在であるためには、前身である5社それぞれの企業文化や価値観を再確認するとともに、それを土台に損保ジャパンの新たな企業文化を再定義する必要がある、と私たちは考えました」


この「Spirit」を取りまとめた背景を、佐藤はそう語ります。


前例に縛られず「変えるべきこと」は変えていく



さらに佐藤は、次のように続けます。

「この『Spirit』は、損保ジャパンの普遍的な企業文化を再確認し、明文化しただけではありません。その企業文化を尊重しながらも「変えるべきこと」は勇気をもって変えていく姿勢を打ち出しています」



保険金サービス部門では、お客さまに対して少しでも迅速に保険金をお支払いするための、業務フローの見直しや業務効率化に取り組んでいます。


大規模災害時には、現地の災害対策本部に大量の保険金支払い業務が集中し、多くの要員を必要とします。そこで、2019年に大規模自然災害発生時の業務オペレーションの改善を目的とした「災害対応プロジェクト」を立ち上げました。

複数のシステムに分散していた書類を1か所に収集・統合し、業務プロセスに合わせて再構築するアプリケーションを開発。大規模災害時の事故や保険金の支払いに必要な書類をクラウドストレージ上で共有し、どこからでもアクセス可能にしたことで、書面の査定を全国の保険金サービス部門で分散処理する体制を構築し、災害対策本部の要員削減と、保険金支払業務のオペレーションの大幅な効率化を図りました。


直近では、宮城県に設置された災害対策本部で実用性の検証を行ったところ、20%以上の事務効率化を実現。お客さまが保険金を受け取るまでの日数を3~4日短縮するという業務改善を、DXによって実現できました。


このほかにも、LINEのチャットシステムを活用した保険金請求や、100万円以下の定額の保険金を現地の代理店さんで交付決定できるようにする「代理店サポート制度」など、代理店さんとともにさまざまなアプローチで保険金支払いのフローを効率化。早期の保険金支払いにつなげています。

「今も、新しいデジタルツールの開発など、DXの推進に取り組んでいるところです。理想としては、災害対策本部がなくても全国の拠点で業務を分散、カバーし合いながら、お客さまに迅速に保険金をお支払いできる体制を構築したいですね」



業務改革をリードする保険金サービス企画部 火災新種グループの伊藤弓恵は、そう意気込みを語ります。前例踏襲やルーティンワークに埋没せず、業務プロセスの不断の見直しを行う――ここに、「変えるべきこと」を変える、損保ジャパンの姿勢が表れています。


お客さまの声を「情報資産」に変える風土改革



保険金サービス部門の「改革」はこれで終わりません。2022年には部門全体の「風土改革」に乗り出しました。


「お客さまとのタッチポイントを持つ保険金サービス部門には、お客さまからの要望や意見が日々集まっています。そこにはイノベーションやサービス改善の大きなヒントがあるのですが、これまではその声を情報として全社的に活用しきれていないという課題がありました」



伊藤は、風土改革の背景についてそう語ります。お客さまの声を、特定の部署に滞留させるのではなく、全社で共有・循環させることで「情報資産」に変え、新たなイノベーションにつなげていこう――そのためには、部門や地域を超えた円滑なコミュニケーションができる組織風土が不可欠、と判断したのです。


2022年、全国にある保険金サービス部門の社員が集まり、オフサイトミーティングを開催。職場も年次も異なる数百人もの社員が、幼少期からの生い立ちをお互いに語り合いながら、会社として今後向かうべき方向を話しました。

そのうえで、現場が得た情報を全社的に共有する仕組みとして、社員一人ひとりが意見やシェアしたいことを気軽につぶやける社内SNSを開設しました。この一連の取組みによって、エリアの壁、年次の壁、本社と現場の壁を越えたフラットな関係を少しずつ構築していきました。


「昨日、お客さまからこんなお声をいただきました!」

「この書類をデータ化すれば、よりお客様への支払業務を短縮できるのではないでしょうか?」

「このプロセスをなくせば、もっとお客さまの保険請求が楽になるのではないでしょうか?」


社内SNSには、全国の保険金サービス部門の社員から日々コメントが寄せられています。それらの意見をヒントに、実際に業務改善が図られたり、新商品が生まれたりする事例が大小さまざま生まれています。時には社長や役員が自らコメントを返すことも。


「投稿には、関連する部署が必ずコメントを返すようにしています。そのことで、投稿した社員にとっても『ちゃんと読んでくれているんだ!』と、さらに投稿するモチベーションが高まります。こうした取り組みによって、クローズドだった情報が少しずつ社内に循環しつつあるのを感じています」(伊藤)


「私たちは、本当にお客さまを見ているだろうか?」と自問し続ける



保険サービスは長い歴史の中で制度が確立され、人々の生活に身近な存在になっています。しかし、その一方で人口減少、少子高齢化、気候変動、デジタル技術の進化など、私たちをとりまく社会は日々変化し、それに伴い人々の価値観やライフスタイルも多様化しています。当然ながら、保険サービスに対する期待やニーズも変化します。


「人のために」を企業文化として掲げている以上、保険のレパートリーやサービスもお客さまのニーズの変化を察知しながら常に見直し、変化していく必要があります。


そのためには、「私たちは、本当にお客さまを見ているだろうか?」と社員一人ひとりが自問しながら、お客さまの心の声に耳を澄ませ、ビジネスモデルや業務プロセス、そして自らの仕事のあり方を見直し、変化させていく姿勢が求められます。


「入社した当初は、お客さまへの対応が機械的で冷たい、と上司からよく指摘を受けていました」


損保ジャパンの「クレドマイスター」として、お客さま対応において毎年のように社内表彰を受けている小林。そんな彼女にも、お客さまとの接し方で悩んでいる時期があったといいます。


自分と違ってあの先輩社員は、お客さまアンケ―トでも好意的な声が集まっている。なぜだろうと観察してみると、丁寧に時間をかけてお客さまの声に耳を傾けていた――そんな先輩社員の姿を見て、学びながら、自身の対応タイルを変えていったといいます。



「私より以前に『クレドマイスター』を認定されてきた先輩社員は、どなたもお客さまのため、そして同じ課の社員のために、率先して動いている人ばかりでした。いつか私もあの人みたいになりたい……と背中を追い続けながら、今も試行錯誤しています」


創業135年を迎えましたが、これからの未来はますます不確実性を増し、誰にも予測できません。だからこそ、リスクへの備えである「保険」もまた、社会に新しい価値を提供していかなければなりません。そのために、私たちは会社としても個人としても、失敗をいとわずにチャレンジし続けなければなりません。


先人から受け継いだ「人のために」「やり抜く力」のDNAを胸に、未来に向けて常に変化し続けることで、「安心・安全・健康」の新しい価値を創造する――それが、未来に向かう私たち損保ジャパンの「Spirit」なのです。





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