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人の数だけ、物語がある

こだわり続ける住まいの“空気質”向上を目指す研究開発者の想い 「創業60周年。感謝と挑戦を胸に」空気質編(1)

著者: パナソニック ホームズ株式会社

パナソニック ホームズは2023年、創業60周年を迎えました。創業来こだわってきたテーマの一つが「空気質」です。空気質がもたらすそこに住む人への健康や暮らしの質への効果を踏まえながら、「空気質」をさらに高めるための研究開発者の想いについて前編後編の2回に渡ってご紹介します。前編では、当社が創業来空気質にこだわり続けてきた想いとそれが住まう人の健康や暮らしの質にもたらす効果、その実証に取り組んでいる研究開発者の想いを紹介します。

温熱環境がもたらす冬季血圧・夏季睡眠への効果を確認

暮らしやすさを実現する室内環境としては、温度、湿度、気流、光などがあります。なかでも住宅内の温熱環境が居住者の健康に与える影響については、近年様々な知見が明らかになりつつあります。


そこでこのほど、当社はが手がけている商品群が健康に及ぼす影響を調べるため、住宅用全館空調システムの「温熱環境」が冬季血圧・夏季睡眠に与える影響について慶應義塾大学の伊香賀 俊治教授と、また、微粒子を除去するHEPA フィルターを取り入れた換気システムの「空気環境」が肺機能に与える影響を慶應義塾大学の井上 浩義教授と共同で実証研究を行いました。


このテーマを選んだ背景としては、冬季に頻発する室内温度差に起因するヒートショック(年間死亡者数 17,000 人と推計)は血圧の乱高下に伴い発症するといわれており、血圧上昇には寒冷な居住環境が影響を与えること、睡眠の質は室内温熱環境が大きく影響しており特に高温多湿である夏季は睡眠効率が低下すること、また、PM2.5をはじめとする大気汚染物質に長期間さらされると特に心血管疾患・呼吸系疾患による死亡が増加するという報告があること、が挙げられます。


冬季居住者の血圧変化に関する実証では、全館空調によりWHOが勧告する最低室温 18℃以上を全室で満たしており、危険入浴リスクの低減に有効とされる室内温熱環境が維持できていることがわかりました。また、全館空調群は個別空調群に比べ、起床時最高血圧が 4.1㎜Hg 有意に低い結果が得られ、厚生労働省が提唱している「健康日本 21(第二次)」の目標値である平均血圧4㎜Hgと比べても、断片的な評価ではありますが、室温の維持が血圧上昇の抑制に寄与することが示唆される結果が得られました。すなわち、空調方式を含めた室内温熱環境の改善が循環器疾患予防に有効な方策として期待できることが明らかになりました。

各部屋の平均室温比較 起床時血圧比較

※1.起床時最高血圧:起床後1時間以内の収縮期血圧


寝室の就床時平均温度および平均相対湿度は個室空調群に比べて全館空調群が低く維持され、暑さにより睡眠が困難となったとする割合が低いという結果が得られました。全館空調群は個別空調群に比べ入眠する時間が 0.60 倍短く、睡眠効率は1.09 倍高いことも示され、睡眠の質を向上させることが期待できることもわかりました。


空調方式と入眠潜時・睡眠効率

※1.入眠潜時:総就床時間のうち、眠っていた時間の割合


また、外気を取り入れる換気装置の入口にHEPAフィルターを搭載した住宅では、PM2.5 濃度が外気に比べ屋内は 82~91%低く抑えられていることが確認できました。これにより、肺機能の低下が抑えられていることも確認でき、PM2.5 除去の換気システムを備えた住宅は居住者の肺機能などの健康状態に良い影響を与える可能性が見て取れました。


肺機能評価結果

※1.FVC(最大限息を吸った後にできる限り一気に吐き出した空気の量、努力性肺活量、Forced Vital Capacity)

※2.FEV1(FVCの最初の1秒間で吐き出した空気の量、1秒量、Forced Expiratory Volume in one second)

※3.肺年齢(日本呼吸器学会により定義された、性、年齢、身長、FVC、FEV1から計算される指標


*ご参考:2021年12月1日発表リリース

住宅用全館空調システムの「温熱環境」が冬季血圧・夏季睡眠に与える影響についての実証研究に携わったパナソニック ホームズ R&Dセンター 環境技術研究室の関谷 佳子はこの結果について「実居住者の血圧・睡眠のデータを測定し、分析・検証に関わることで、全館空調下における効果が確認でき、自分自身も改めて室内環境の重要性を認識しました。この結果を踏まえ、住宅全体を連続空調する全館空調システムやPM2.5 を除去する換気システムによる室内の温熱、空気環境の改善をさらに進めていきたい」と話します。

60年間、空気質にこだわり続けてきた理由

パナソニック ホームズの創業者である松下 幸之助は「居は気を移す」という孟子の言葉を引用し、「住まいは人間形成の道場」と位置づけ、「細心の注意を持って住まいづくりを心がけねばならない」と考え、60年前に新たに住宅事業に臨みました。


住まいにおいて、人が最も多く体に取り込んでいるものは空気であり、人は1日におよそ直径3mの球に相当する18㎏の空気を吸っています。そして、人は生活時間のうち約60%を家の中で過ごします。このことからも住まいにおける空気の果たす役割の大きさがわかります。だからこそ、パナソニック ホームズは空気質にこだわってきました。


例えば、1961年に市場に送り出した「松下一号住宅」では自然換気口を採用しました。1993~98年にかけては、床下利用の換気システムである「呼吸の道」を開発し、夏には涼しい空気が、冬には暖かい空気が室内に取り込まれるようにしました。そして2017年には、快適と省エネを両立できる、HEPAフィルターを採用した全館空調システム「エアロハス」を発売しました。

全館空調システム『エアロハス』イメージ 


「エアロハス」は3つの大きな特長を持っています。まず、各室個別の温度制御。専用エアコン1台で、四季を通じて、家の中を快適な温度にし、心地よく過ごせます。2つ目が、換気、循環空気の浄化による空気質の確保。換気・循環経路に、0.3μmの微小粒子を99.97%捕集できる高性能な「HEPAフィルター」を搭載し、花粉やほこり、PM2.5といった物質の侵入を抑え、安心の空気環境を保ちます。そして3つ目が、地熱利用、高効率設備による省エネ。天井や外壁だけでなく基礎の内側まで断熱材を施すことで外気温の室温への影響を抑え、地熱により年間を通して温度の変化が少ない床下の空気を、換気に活用し、省エネを実現しています。


住まいの快適と省エネを両立でき、住宅の脱炭素化で普及推進されるZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)に対応可能な全館空調システム「エアロハス」は、現在、累計販売 約4,200棟を達成しています。

お客様からの喜びの声をエビデンスに

関谷は「エアロハス」が発表後の2018年にパナソニック ホームズに入社しました。大学時代は、建築における湿度と省エネをテーマに研究を行っており、就職活動をする中で「HEPAフィルターで空気を浄化し、あわせて全館空調で省エネを実現している「エアロハス」(当時は前身のピュアテック)の技術力に感銘し、自分もその研究に携わりたいと思いました」と志望の動機について振り返ります。


入社後は、住宅用全館空調システムやHEPAフィルターの導入により、実際に入居されたお客様の住まいにおいて空気質がどのように改善し、それがお客様の健康にどのような影響を及ぼすのかについて実証にもとづいた研究を進めてきました。「お客様から生の声として、よく眠れるようになった、花粉症が改善した、といった喜びの声を頂くことが増えていたのですが、感覚的なものだけではなく、根拠を持ってお客様に説明することが大切だと考え、大学との共同による実証研究に取り組むことにしました」と、今回の実証研究に至った経緯について語ります。


実証研究では、住宅用全館空調システムを導入している住宅と、そうでない住宅とでの比較を行わなければなりません。研究にご協力頂く居住者の方を年齢層などのバランスも考えながら集めることが必要で、まずは営業担当者を通じてお客様に実証研究についてのご理解を頂くところからスタートしました。お風呂に入る前に血圧を測定いただくというような被験者の方にとってご負担を強いることになるため、お客様の信頼関係がなければ成り立たない調査です。実際にデータの収集は関谷自身がお客様の宅に出向いて行いました。


実証研究によるデータによって明らかになりつつある結果をさらに補強するため、換気・空調設備の違いが住む人に与える影響について着目し、ZEH水準以上の断熱性能を備えた 3 種の住宅(高性能フィルター搭載の全館空調・床暖房・個室毎の冷暖房)への転居者を対象に、換気・空調設備の違いが健康症状・生活の質に与える影響についてのアンケート調査を実施し、2022年12月に発表しました。



アンケート調査は多くのデータを必要とするため、2017年に住宅用全館空調システムを発売して以降、CS部門と連携し、お客様への入居後のアンケート調査を地道に行い、2000人以上のデータが蓄積できたことで今回の検証が可能になりました。「中には病院のクリーンルームで使われるようなレベルのフィルターが住宅に必要なのかと言われる方もおられます。それを裏付けるのはお客様の声。そして、専門的な知見を持つ大学の先生と連携できたからこそ客観性を持たせた結果として発表することができました」と関谷は言います。


アンケート結果からは、「高性能フィルター搭載の全館空調」を導入した住宅への転居者は、花粉症、アレルギー性鼻炎、手足の冷え、寝つき、眠りの質、寝起き、活動意欲などの改善率が有意に高いことが確認できました。この結果については「これまで少しずつ積み上げてきたものがようやく日の目を浴びたという気持ちです。お客様の眠りの質が向上し、寝起きが良くなったという声を頂けたことや、花粉症が良くなったという声を多くの方から頂くことができ、健康への効果はもちろん、活動意欲が改善され、生活の質の向上にも寄与したことがわかりました。大学の時から携わりたいと思っていた研究を続けることができ、自信を持ってお客様にお勧めできると感じていた住宅用全館空調システムの価値がデータで裏付けられたことが何よりうれしいですね」


そして、「今後は、ご回答に協力頂いたお客様には、購入された製品が良いものだと満足頂けるよう、さらに、社内の関連部門の方々には、お客様に対して商談でよりわかりやすく伝えることができるよう後押しをしていきたい」と話します。


新たな視点で「エアロハス」をさらに進化させ続ける

ただ、関谷は今回の結果に慢心することはありません。「良い結果が出た項目についてはさらに磨き上げていくとともに、逆に伸び悩んでいる項目については、それがなぜなのかを検証し、どのような改善をすればより良い効果につながるのかを考え、製品に落とし込んでいくことで「エアロハス」のさらなる進化につなげていきたい」とも。今回まとめた論文は、建築分野の日本建築学会、空気調和・衛生工学会で発表しましたが、最近では、関連のある有識者からのお声がけもあり、日本健康医学会、日本抗加齢医学会など医学分野の学会での報告にもチャレンジしています。このような取組からさらにネットワークを広げ、健康に結び付けた研究テーマを掘り下げていく予定です。


今回の実証研究、調査を通じてパナソニック ホームズが創業来手がけてきた「空気質」のこだわりについて改めて触れる良い機会になったと話す関谷。「空調技術、換気技術をベースに、温熱や湿度、清浄度だけでなく匂いといった空気質にかかわる領域を広げ、オリジナル性のある研究も進めていきたい」と先を見据えています。


同僚の平谷 瑞希と「エアロハス」空調ユニットを前に



次号は、パナソニック ホームズがご提供する空気質に欠かせない技術研究に取り組む若き研究開発者をご紹介します。(2023年7月21日公開予定)


◎パナソニック ホームズ株式会社について

パナソニック ホームズ 創業60周年特設サイト:https://homes.panasonic.com/60th/

商品ページ:https://homes.panasonic.com/

企業情報ページ:https://homes.panasonic.com/company/

公式Twitter:https://twitter.com/panasonic_homes




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