360度お湯に包まれる。湯船に浸からず身体を芯まで温めるU字型シャワー「SHIN-ON」の開発秘話。
LIXILグループの株式会社NITTO CERAは、2023年4月24日より360度身体がお湯に包まれ、まるで湯船に浸かったかのように芯まで温まるU字型シャワーヘッド「SHIN-ON」(しんおん)の販売を開始しました。
一般販売に先駆けて行ったクラウドファンディングでは、3か月間の販売目標としていた200台を約1か月で達成。特徴的な形状だけではなく、「シャワーだけでは温まり足りない、でも湯船にお湯を張るのは面倒」という悩みを解決する新しい形のシャワーとして多数のメディアでも紹介され、注目を集めている製品です。
本製品はコロナ禍を通じて起きた生活の変化をきっかけに、多くの検証や新しい挑戦を重ねて誕生しました。本ストーリーでは、「SHIN-ON」の企画開発担当である草川より開発の裏側と製品に込めた想いをお伝えします。
「SHIN-ON」の企画開発担当である草川 研二
新しい入浴スタイルのシャワーを考案。
今回の「SHIN-ON」を企画したのは、LIXILの新規事業チーム。過去には「KINUAMI」というシャワーヘッドから心地よい泡が出るシャワーなどを開発してきた同チームでは、日頃から様々な企画アイデアが飛び交っています。
SHIN-ONは、「天井から降ってくる湯滝のベール空間に囲まれ温まる」というアイデアからヒントを得て、お風呂空間で、浴槽に浸かる以外にも温まることができ、心地よい入浴体験を作れないかという発想から、企画が始まりました。
また、現在進んでいる単身世帯の増加は、シャワー浴の増加も示していました。そこで、シャワーでも手軽に湯船に浸かったような温浴感を楽しめれば、多くの方に受け入れられるような新しい入浴スタイルを確立できるのではないかと感じたのです。
しかし、企画を進める当時はコロナ禍。出社ができなくなり、オフィスで開発チームと連携しながら外部業者等に試作品を制作外注し、現物を見ながら検証を重ねる、という従来は当たり前だったプロセスが取れなくなってしまいました。さらに追い打ちをかけるように新規事業企画の予算もタイトになり、企画担当として自宅で一人絶望の淵に立つような思いだった記憶があります。
そんな中でも今できることをしようと思い、草川は上記のアイデアを掘り起こして形にしてみることにします。ホームセンターでプラスチックパイプやゴムホースなどの部材を購入し、DIYでフープ型に作成して自宅で浴びてみました。試作1号機はお湯の勢いが足りずそこまで気持ちの良いものではありませんでしたが、360度お湯に包まれる新感覚の浴び心地に、面白さを見出しました。
当時作成したサンプルと、その変遷
そこで、フープのサイズを調整したり、吐水穴を増やしたりと工夫していくと、心地よさが増していくことを実感できました。それでもまだ課題はとても多く、初期試作は完成からは程遠いものでしたが、浴び心地に関する様々な指標を設定してチームで検証を実施し、試行錯誤を何回も重ねて改善していきました。そして、約1年間の改善活動を通じて、浴び心地が満足できるようになったところで、部外の社員にユーザーレビューするフェーズに移行しました。
デザインや使い勝手にこだわり改良を重ね、新しい形のシャワーが完成
新しいコンセプトと形状の入浴デバイスだったこともあり、仮説検証のために100人近くの社員をユーザーに見立ててアンケート調査を行いました。その中でも特に価値が響いた社員にはインタビューを実施し、入浴や住生活に関する困りごとにも丁寧に耳を傾けました。一部の社員には試作品のモニター体験とレビューにも協力してもらい、ユーザーと一体となって製品開発を進めてきました。
コロナ禍でおうち時間が増え、ライフスタイルが多様になる一方、オンオフの切り替えが難しく、ストレスがたまりやすいなど、在宅ならではの悩みを多く耳にすることもありました。そんな時代だからこそ、日常の中に心地よい幸せ時間を増やしたい、そして誰もが手に入れられるような、シンプルでスマートなソリューションが刺さるのではないかという考えが強まりました。
企画初期の使いづらかった試作の段階では、親族にも「こんなに使いにくいものは売れないから、さっさとやめた方がいい」と厳しい批判を受け、悔しい経験もたくさんしました。しかし、しかし改善を重ね、SHIN-ONを使ってシャワーを浴びている最中の満足度だけでなく、ユーザーにとっての使いやすさ、もっと言うと使っていないときの状況も含めて一連の体験満足度を高められる段階にまで改善できた時、「これはすごくいい」という評判が生まれるターニングポイントとなりました。この経験から、良いと信じるアイデアには、逆風が吹いても諦めずに前進すべきだと、新規事業を進める上での大事な教訓を手に入れました。
その結果、シャワーでもさっと手軽に温まり、入浴感をいつでも楽しめるソリューションにまで昇華させることができました。かつ環境にも配慮した節水仕様とすることで、人と地球に寄り添うデザインを実現できました。
こうして完成した新感覚のシャワーは「芯」まで「温」まり、「身」も「心」も「温」まる、「新」しい「温」まり方を目指し、製品名を「SHIN-ON(しんおん)」に決定。
チームメンバーと共に何度もシャワーを浴び、創意工夫して完成したSHIN-ON。広告用の撮影現場でモデルさんに浴びてもらい、気持ちよさそうな表情と共にスクリーンに映り出された瞬間は、まるで開発してきたプロダクトに命が吹き込まれたようで、それまでの苦労がぱっと報われた気持ちになり感動したと振り返ります。
身体を温める未来型シャワー「SHIN-ON」の特長とこだわり
クラウドファンディング期間も含めて、企画開発に3年の期間を経て、遂に誕生した「SHIN-ON」。U字形状のシャワーヘッドで身体をお湯で包み込むように温める、これまでにない形のボディシャワーに仕上がりました。「シャワーだけでは温まり足りない、でも湯船にお湯を張るのは面倒」という悩みを解決し、より豊かで快適なバスタイムを提供します。
様々なこだわりを詰め込み完成した製品でもあり、ポイントをお伝えします。温まるということに注力したこともあり、お湯で一度に身体を包み込むので、効率よく温まる設計となっています。浴びた直後もその後も、従来のハンドシャワーだけを使用する時よりも温もりが持続する結果も出ました。
ハンドシャワーを使用した時よりも身体が温まり、浴びた後も温もりが持続
身体に合わせた吐水設計
身体部位ごとに温かさを感じやすい最適な吐水方式を採用し、胸部側には大玉ミストを、頸動脈が多く集まる首肩まわりにはストレート水流を配置しています。首肩まわりのストレート水流では「心地よい刺激」も得られます。また、より効率的に身体を温めるため、身体にくまなくお湯が当たるよう、身体の構造に合わせて吐水位置と角度も調節しました。
首肩まわりにはストレート水流で心地良い刺激を、胸腹部には大玉ミストで温かさを
DIY仕様なので賃貸でもOK
賃貸住宅では、浴室空間をアップデートしたいと思っても、そもそもリノベーションできないことがほとんどです。
そこで、このSHIN-ONはシンプルでスマートなソリューションにこだわり、既存水栓に追加設置するだけのDIY仕様としたことで、賃貸住宅でも安価に、かつ簡単にこの体験価値を手に入れられるようになりました。フォーカスをしてきた単身世帯の方の多くが年齢層として若いこともあり、手軽に活用できることを心掛けています。
お湯を張るよりも経済的
使用する湯量は、節水シャワーでの入浴時と同等レベル。さらに、浴槽にお湯を張るよりも少ない湯量で入浴できるので、節水・節湯(省エネ)にもつながります。
収納性にも配慮
浴室は限られた狭い空間なので、極力スペースを確保できるように工夫しました。これまでにない形状のシャワーなので、実際に試作品を活用して収納パターンを複数検討し、一番手軽な片手でクルっと横に回せる設計仕様にしました。これは、顧客の声に基づきながら、こだわって追加したポイントです。この使いやすさとスッキリ収納を、ぜひ体験してみください。
「SHIN-ON」を入浴における新たな定番製品に
SHIN-ONは、浴槽浴とシャワー浴の良い部分をかけ合わせて、創られています。浴槽浴は、浴槽に浸かって身体の芯までしっかり温めることで、リラックスできたり、コンディションを整えたり、眠りにつきやすくなると言われています。一方、機能性に優れ手軽にさっと浴びられるシャワー浴は、浴槽にお湯を張る必要もなく、掃除も楽です。SHIN-ONでは、浴槽浴とシャワー浴のそれぞれの利点を掛け合わせ、「さっと手軽に温まることができる」入浴デバイスに仕立てました。また、暑い時期や運動後には、一気に汗を洗い流してさっとクールダウンすることもでき、多様な目的に合わせた使い方が期待できます。
手作りの試作品から始まったデバイスですが、「2022年度グッドデザイン賞」において、特に高い評価を得た100点を選出する「グッドデザイン・ベスト100」受賞までに進化させることができました。
今後は、シャワーとは洗い流すものであるというこれまでの概念を超えた、身体を温めるシャワーとして、入浴における定番製品となることを目指し、より多くの方に喜んでいただけるよう事業展開してまいります。
誰もが豊かで幸せな体験を、暮らしの中に手に入れられるようにしたいという想いと、工夫が詰まったSHIN-ON。ぜひ一度ご自宅で楽しんでいただけましたら幸いです。
SHIN-ON公式オンラインショップ:https://s.lixil.com/shinon-shop
SHIN-ON インスタグラム:https://s.lixil.com/shinon-insta
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