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「ものづくりの次の一手を育むまち、高岡」を目指し、若手職人・問屋がクラフトフェアを初開催。“発想と技術が越境し、出会う場”がいま工芸産地に求められる理由

著者: 高岡伝統産業青年会


2023年11月3日(金)・4日(土)、富山県高岡市を舞台に「ものづくりの次の一手」をみつけるクラフトフェア「ツギノテ」が初開催されます。本フェアは、作り手・売り手・使い手を繋ぎ、ものづくりを次の時代へつないでいく“発想と技術が越境し、出会う場”を創出することを目指しています。高岡駅前の立体駐車場を舞台に、「全国の作家によるクラフトやプロダクト製品のマーケット」と「伝統産業・工芸を中心とした職人たちの技術展」をぎゅっと集めた2日間です。

▶︎クラフト作家・アーティストの出店募集中 -7/26まで:

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▶︎2022年に高岡市内の立体駐車場で開催したクラフトフェア「ツギノテ」のプレイベントの様子。


主催するのは、高岡市の若手職人や問屋で結成される団体「高岡伝統産業青年会」。高岡が誇る伝統技術、職人の仕事を展示会や鋳物体験、工場見学ツアーなどを通して県内外へ高岡の伝統産業の魅力を発信を続け、今年創立50周年を迎えます。

 

昨今、ライフスタイルの変化や産業の発達、担い手不足に伴い、全国各地のものづくり産地が多くの課題に直面しています。地域、業種、扱う素材、文化など様々な境界線を超えた「ものづくりの再編」がいま、求められています。


今回、伝統あるものづくりを未来に繋げるために挑戦する若手職人たちのストーリーを、高岡伝統産業青年会で「ツギノテ」企画責任者を務める羽田純と、「Oji & Design」代表 / 手工業デザイナーであり、高岡クラフトコンペティションの審査委員長を務める大治将典(おおじ まさのり)氏がお届けします。


▶︎左:高岡伝統産業青年会で「ツギノテ」企画責任者を務める羽田純、高岡クラフトコンペティションの審査委員長を務める「Oji & Design」代表 / 手工業デザイナーの大治将典氏

ー 7人の鋳物師(いもじ)から始まった「ものづくりのためにつくられた街」富山県高岡市


羽田:

鋳物、漆器の伝統産業が息づく街、富山県高岡市のものづくりの歴史は慶長16年、前田利長公が高岡入城に際し全国から7名の鋳物師(いもじ)を招き、現在の高岡市金屋町に工場五棟を建設して鋳物場としたことで始まりました。これが後の金屋と高岡銅器の始まりと言われています。


▶︎高岡の鋳物に関する「前田利長書状(部分)」/ 高岡市立博物館蔵


高岡のものづくりの大きな特徴は、分業制であること。1つの商品を作るために、それぞれの工程を専門にする工場があり、鋳物の型となる原型を作るところから、最後の仕上げにあたる研磨や着色をする過程で、商品はいくつもの工場を経て出来上がります。「自分のところにない技術でも、あの職人にお願いしたら作れる」と人を巻き込みながらものづくりをする文化があります。



ー 全国の作家にとって“どんな街でありたいか”を36年間追求し続け、辿り着いたクラフトフェア「ツギノテ」という仕掛け


大治氏:

高岡は1986年から続く日本最大級のクラフトコンペティション「工芸都市高岡クラフトコンペティション(※1)」の開催地として作家やアーティストに知られています。工芸産地発の全国公募展として全国のクラフト作品を募集することで、クラフトマンやクリエーター達の交流の場となることを目指してはじまり、今年で36回目の開催となります。その背景には、「優れた工芸の技術をちゃんと産業化していこう」という歴史ある産業の街としての強い思いがありました。


▶︎1986年から1988年までの現存する数少ない初回の図録。毎年発刊され、今年で36冊目となる。


大治氏:

90年代初頭には、“作家の登竜門”と言われるようになりましたが、2010年以降からECサイトやSNSなどが発展し、個人として作品を社会へ発信していけるようになったことで、今一度コンペティションの役割を考え直すようになったんです。


僕はちょうど2015年に審査員になり、2016年から審査員長に就きました。そこから部門ごとの評価を廃止し、その年のテーマ設定に沿った作品を募集することに決めました。ジャンルの境界線がないなかで、「今年らしい表現って何だろう」と、いろんな専門を持つ審査員たちが多面的に議論をしながら作品を見ていくことで、作家の方々にとっても表現しがいがあって、思いもしなかった発想が生まれると思ったんです。


▶︎2021年度の工芸都市高岡クラフトコンペティションの入賞作品。多種多様な素材をもとに、それぞれがテーマに沿って作品づくりを行う。


羽田:

僕は大治さんの考え方がすごくいいな、と思っていて。工芸都市高岡クラフトコンペティションに2012年からデザイナーとして関わる中で、応募してくれる熱量ある作家さんたちにとって、この場がどうあるべきかをずっと考えてきました。培ってきた経験と技術と知恵で「こんな面白いことができる」ということを表現したい彼らが、ちゃんと次の作品づくりに繋げられる仕組みを作らなきゃって、なんの権限もない時から言い続けてましたね(笑)。



大治氏:

はねちゃんは、コンペティションとセットで、受賞した作家さんたちを連れて工場見学ツアーをしないか、とか色々提案してくれていた。ついに去年、工芸都市高岡クラフトコンペティションのディレクターに就任して、クラフトコンペティションを通して高岡の街を訪れる意欲ある作家さんたちを巻き込む仕組みとして、クラフトフェア「ツギノテ」を構想したんだよね。敢えて、ものづくり職人の団体である高岡伝統産業青年会が主催することも作家さんにとっては、すごくいいと思ったよ。

ー 外からくるアイデアや人に対して「半分ドアが開いている」高岡ならではの、ものづくりとは?


羽田:

そうなんです。高岡だけでなく、もっと県外のクラフト作家さんやアーティスト、職人など、ものづくりに携わる人たちの「技術」や「発想」が出会うことで、高岡の街から「ものづくりの一手」となる、新しい産業が生まれるんじゃないか、と考えてるんです。


例えば、デザイナー・美術作家である寺山 紀彦(のりひこ)さんが高岡の鋳物工場を見学されてインスピレーションを得た作品の素材は、“鋳物”ではなく、鋳物を鋳造する際に使う道具の1つ、“セラミックの原型”をモチーフにしたものでした。それに当時すごい衝撃を受けたことを覚えています。作家と技術の出会いのなかで、こういうものづくりがもっと増えると面白いな、と思っています。


▶︎デザイナー・美術作家の寺山 紀彦氏が高岡の鋳物工場を見学後、原型にインスピレーションを受けて制作した作品。 http://studio-note.com/structure-of-sessile/


大治氏:

プロダクトデザイナーの視点でみる「高岡ならではのものづくり」は、少量多品種のプロダクト生産が可能であること。僕は、日本各地の地場産業の仕事を中心に、暮らしを豊かにする生活道具を生み出しつつ、売る仕組みづくりにも取り組んでいるのですが、多岐にわたるプロダクトラインナップを展開する際に、50個ほどからの中量生産が可能なことは、すごく貴重です。



あと、16年ほど高岡の産業に関わって感じたのは、もともと半分ドアが空いているような、つまり外からの人やアイデアに対して受け入れていく姿勢や文化。高岡伝統産業青年会のような、ざっくりしたアイデアから相談ができ、実現できる職人さんを繋いで話を通してくれるような、気概がある人たちがいるところかな。

ー  「いま、未来に繋げる行動をしないとダメだと思っている」ものづくりの産地の再編が鍵


大治氏:

僕が各地の工芸系メーカーと5年ほどお仕事するなかで、高齢化などの理由で産地で漆の生地職人が減り、木地が手に入らないという話をよく聞くようになりました。県内だけではものづくりを完結できなくなってきている産地が日本全国にあるように、いち産地だけでものを作る時代が終わりを迎えていると感じています。産地ブランドに固執したものづくりを打破しなければ、ものづくりが続けられなくなります。


例えば高岡漆器というブランドが、北陸漆器となる日が来るということ。これは、「産地の再編」を意味します。作りたいものがあるなら、産地を超えて新しい人や技術と出会い、作ってみること。それを10個、50個、100個と作っていく過程で、やっと1つ、新しい産業の種が生まれるかもしれない、そんな時代に差し掛かっていると痛感しています。



羽田:

実際に、今の高岡の産業を牽引している能作やFUTAGAMIのようなヒーローメーカーがこの先も次々と生まれる地盤はまだできていないと感じます。それは構造的な問題もあると思いますが、ちゃんと新しい組み合わせや化学反応が生まれるように企業も動いていかないといけない。それを今回、僕たち高岡伝産は「ツギノテ」を通して仕組みにしたいと思ってるんです。

ー みんなが勝てるオープンファクトリーとは?作家と職人が同居する「2日間限定の工業団地」を駅前の立体駐車場につくる


羽田:

クラフトフェア「ツギノテ」は、高岡駅前の立体駐車場(予定)を舞台に、1フロアは全国の作家によるプロダクトの展示・販売、そしてもう1フロアに工業団地を2日間限定でぎゅっと集めて作るイメージなんです。


近年、オープンファクトリーや産業観光が認知されはじめているからこそ、自分たちなりの「適正なカタチ(みんなが勝てる仕組み)」をすごく考えています。これまでは、来場者の方に市内に点在する工房・工場を回ってもらっていましたが、時間的な制約もあり1日で見学できるのは数カ所でした。でも、1フロアにさまざまな企業が集うことで、お客さんが見学できる技術の数も、出会える職人の数もグッと増えます。


また、作家さんやアーティストさんの展示・販売と地元の伝統産業やものづくりに関わる企業の技術展示が同居する面白さもあります。どういう発想や技術から商品が制作されているかを知れる交流の場は、お互いにとってプロダクト制作のアイデアが詰まっているわけです。



大治氏:

例えば、僕が仏具の街である高岡の“おりん”をつくる技術を応用して、置き型の風鈴を作ったように、目線を変えたものづくりがどんどん生まれていくような発想の出会いがあるといいよね。


羽田:

そうなんです。そしてもう1つ大きな強みは、クラフトコンペティションと同時開催することで、高岡を訪れる受賞者と、ツギノテ出店者である職人や企業が出会う場にもなるという点です。この出会いから、新たな作品製作や商品製作の取り組みが生まれ、ゆくゆくは作品や商品の発表・発売の場になったらいいな、と考えています。だから、「ツギノテ」には高岡でこれまで歴史を作ってきたようなものづくりの先輩たちもどんどん巻き込みたいと思っています。


“ものづくりの産地”を看板にできる地域は沢山あったとしても、40年間クラフト審査会を続けてきたまちは無い、やはり高岡の武器はこれが強いです。長年継続したことへの美学的な価値観ではなくて、もっと単純に言えばクラフトコンペティションの最大の資産は「全国の数千名のクリエイターのコミュニティを蓄積している」ことだと思っています。「出品毎度あり、結果はこちらです」だけではなくて、「その創造力を、高岡で一緒に活かしませんか」と次の一手に変えていくことが、高岡で開催し続ける最大の魅力であり、僕たちが目指したい未来です。



「ツギノテ」は今年初開催ですが、来年以降もかたちを変えながら続けていきます。これまで50年間、“いまある技術”を世の中に広める役割を担ってきた高岡伝統産業青年会ですが、これからは“新しいものづくりが生まれる機会”を作っていくことがこの先50年の役割だと思っています。


出店されるクラフト作家さんやアーティストさん、地元の産業に携わる方々と一緒に、ものづくりのツギノテを一緒に見つけたいと思っています。出店にご興味がある方は、ご連絡をいただけると嬉しいです。(高岡伝統産業青年会 一同)


■ 出店者募集〜7/26(水) 18:00まで:https://tsuginote.jp/

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※1:工芸都市高岡クラフトコンペティションは1986年から続く、全国公募型クラフト審査会です。https://www.ccis-toyama.or.jp/takaoka/craft/ (2022年度 入賞作品: https://www.ccis-toyama.or.jp/takaoka/craft/prize/c2022/ )





















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