「街の可能性を更新する、新しいビジョン」(いちご よこすかポートマーケット)
当社は、人々の豊かな暮らしを支える「サステナブルインフラ企業」です。不動産を⼈々の暮らしをより豊かなものにする「インフラ」として捉えております。
いちごでは、当社の不動産技術とノウハウを活⽤し、⼀つ⼀つの不動産に⼼を込めた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造することを「心築(しんちく)」といい、⽇本における「100年不動産」の実現を⽬指しております。
当社が手がける心築のサイドストーリーを、「In the Community-コミュニティと共に」というシリーズにて、当社ホームページで公開しています。
今回は、昨年、旧よこすかポートマーケットの既存建物を活⽤し、「三浦半島フードエクスペリエンス」をコンセプトに、新たにリニューアルオープンした「いちご よこすかポートマーケット」が出来るまでのストーリーを全2回に渡りお届けいたします。
「街の可能性を更新する、新しいビジョン」
周辺上空から施設を臨む、写真左上が猿島
開国の街、よこすかに誕生した新しい商業施設
1853年、アメリカからマシュー・C・ペリー率いる艦隊が浦賀沖に来航したことにより、横須賀は日本が世界に門戸を開くきっかけをつくった街として知られてきた。
三浦半島を三方で囲う海と起伏の多い地形に加え、東京湾唯一の自然島である猿島、三浦一族の史実や開国期を彩った歴史的あるいは文化的な資産、外国人による国際的雰囲気など、横須賀には独特な自然資源・地域資源が多く存在する。
2022年秋、横須賀の海沿いに一つの商業施設「いちご よこすかポートマーケット」がオープンした。水産倉庫を直売所として活用していた前施設の仕切り直しに伴い、いちごが公募選定を経て新たにリニューアルを施したものである。
「この横須賀で、10,000メートルプロムナード(愛称:うみかぜの路)をハワイのカラカウア通り、そしてこのポートマーケットをアラモアナショッピングセンターのようにしたい。ようやくその夢の第一歩が叶えられた。」
オープニングセレモニーで上地克明横須賀市長はこう語った。
セレモニーは横須賀市長や地元議員も参加する、街を挙げてのイベントとなり、地元の期待が大きいことを改めて認識する機会となった。
「三浦半島フードエクスペリエンス」というコンセプトの下で生まれ変わった施設は今後、地域に根付いた観光集客拠点としての発展を目指す。
オープニングセレモニーには上地克明横須賀市長も参加、テープカットに臨んだ
施設再建の背景
以前は水産事業者を中心とした店舗構成だった、と語るのは、「一般財団法人シティサポートよこすか(横須賀市の100%出資団体:以下CSY)」代表理事の竹内英樹氏。
当時は所有者・運営者であったCSYの評議員としてこの施設に関わっていた。
1987年に建設された水産冷蔵倉庫を活⽤し、横須賀市の地産地消推進事業の⼀環として2013 年にオープンした前施設は、横須賀西部にある「すかなごっそ(農産物の大型直売所)」と並ぶ東部の魚の拠点として運営されていた。オープン当初は年間50万人台の集客を誇ったものの、徐々に減少。2018年には32万人台になった。
一般財団法人シティサポートよこすか(CSY)代表理事:竹内英樹氏(左)と事業課専任主幹:笹木純氏(右)
「”経営を何とかしないといけない”と言い続けていたが、状況は変わらず、2018年に一旦仕切り直しをした。地元向けか観光客向けか。中途半端な立ち位置だったことが反省点だった。」
当時は水産物のほか、野菜も販売していたが、近隣にスーパーマーケットが出店すると価格競争が生まれ、特色が打ち出せていないという指摘もあった。
CSYは運営から手を引き、一年限定でテナントに運営を任せる間に再建策を練った。
サウンディング調査*を行った際はファミリーレストランやスーパーマーケットの事業者が現地を訪れたが、敷地形状や規模、周辺の競合状況に加えて、横須賀市との連携による観光拠点化という前提条件が重なると、出店を期待できる回答は得られなかった。
*サウンディング調査:市有地などの活用方法の検討にあたり、公募により民間事業者から広く意見や提案を求め、意見交換等を通じて、事業成立の可否の判断や市場性の有無、事業者がより参加しやすい公募条件の設定を把握する調査のこと
そのような時に、いちごはCSYからアプローチを受け、検討を進めることになった。
「私たちは不動産を甦らせてきたほか、農業支援や観光業の経験を持ち、ノウハウが活かせる好機として手を挙げさせていただいた。」
いちご株式会社執行役副社長兼COOの石原実は、施設再建についてこう語る。
インタビューを受ける いちご株式会社執行役副社長兼COOの石原実
フードエクスペリエンス という考え方
「農業、漁業、畜産業から料理、サービス、⾷空間、マルシェ、⾷育、さらには環境問題から社会貢献まで、”⾷”を中⼼にしたあらゆる体験を提供する。食材提供までのプロセス、食べ方の演出も一つ。生き物、食への感謝を自然な形で表すことは大事であり、1次産業に携わる人への尊敬や、実収入にもつなげていきたい。こういう考えから、リニューアルコンセプトを”フードエクスペリエンス”とした。」
CSYはPPP*(パブリック・プライベート・パートナーシップ)として運営事業者選定に向けた公募を実施。選考委員会などの審査を経て、2019年にいちごを代表者とするコンソーシアムを選定した。
**PPP(Public Private Partnership):公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間事業者が連携して行うことで、民間事業者の創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政業務の効率化等を図るもの
その後、いちごは多くの協力者と連携しながら、コロナの環境下で出店者を募集。
地元の水産会社を中心とした魚・肉・野菜のセレクトショップ、よこすかネイビーバーガーの老舗店、横須賀の地ビール店、横須賀・葉山エリアで有名なプリン店やパン屋、サンドウィッチ店や土産物店など、”フードエクスペリエンス”を体現する16の店舗が集まった。
「”フードエクスペリエンス”というしっかりしたコンセプトに加えて、統一感の感じられる空間と魅力的なテナントたちが合わさり、“来たい”と感じる魅力的な施設になった。それに、地元の漁協や農家それぞれが看板を出してくれた。あれには感激した。」(竹内氏)。
年間来場者数100万人を目標の達成に向け、順調な滑り出しを見せた。
コミュニティが育まれるためのポテンシャル
「空間の持つ力をデザインによって伝え、多様な人が集う熱気あるコミュニティを作りたい。」
こう語るのは、企画・改修計画・顧客接点のデザイン全般を担った流石創造集団株式会社の堀之内 司(ほりのうちつかさ)氏。これまでもいちごのプロジェクトに多数関わってきたが、今回の案件は彼らが最近取り組むテーマとの親和性も高かったと言う。
流石創造集団株式会社の堀之内司氏
「地に足の着いた1次産業を今一度見直すことが、自分たちの近年のテーマ。土と水から米と酒、みそと野菜、そして器など、一つのものから生み出される多様なものを活かし、ムダを生じさせない農的な暮らし。このような根源的な営みから、現在そして未来を見据えたライフスタイルの発信を試みたいと、石川県の限界集落にある古民家を取得・改修して運営している。」
「滝ケ原ファーム」と呼ばれるその施設では、日本の若者たちに加えて、欧州の大学を卒業した若者たちも集まって住み、地元の人々に混ざって農作業を行う。
「こういった取り組みの先に、次世代の生き方、それに小さくも豊かなビジネスが生まれるのでは、と考えている。いちごとはこれまでも協働してきたが、横須賀の話を聞いた時、この試みが応用できるのでは、という発想があった。」
農を軸に、世代・国籍・暮らし方の異なるもの同士が集い、自然の恵みや地域の魅力を実感しながらコミュニティを育む。この営みの基にあるのは、多様なものを受け入れ、交差させることだと言う。
「横須賀は三浦半島にありながら、三浦・逗子・葉山とは異なるカルチャーがある。アメリカの雰囲気がある一方でローカル色も濃く、いろいろな人が行き来している。
そのミックス感が特徴的であり、コミュニティができる可能性を感じる。
これに加えて、私たちが海外視察等で見てきたファーマーズマーケット、また青山で運営している「国連大学ファーマーズマーケット」などの要素を盛り込むことで、”フードエクスペリエンス”というコンセプトを中心とした熱気ある活性化ができるのでは、と考えた。」
900坪の水産倉庫が持つ天井の高い空間を活かし、ライブ感が感じられ、色々なものがミックスされた商業施設。そんな姿を想像しながら店舗・建築・運営を調整していく中で、関係者がだんだんと一つにまとまってきた感じがする、と堀之内氏は回想した。
さまざまな音楽とのシナジー
来訪する人は老若男女さまざまであり、各々が気になる店のショーケースを眺め、食べ物を買い、施設内のイスや海が見えるデッキテラスで飲食を楽しんでいる。
船を形取ったパネルや長いシートベンチ型が設置されたコーナーでは、子どもの記念撮影をするなど、微笑ましいシーンも垣間見られる。
横須賀が持つ歴史や海際の雰囲気にちなんで、BGMにはブラジル音楽の要素が入ったジャズや、緩やかなテンポのブラックミュージックが流れている。
最近は昼・夜とコンサートイベントも行われている。
CSYは文化振興事業にも携わっており、その一環として、ここでも「サンセットライブ」と称したコンサートイベントを展開している。今後はさらに、市の観光対策の一つとして音楽やスポーツのイベントを企画推進していく、と竹内氏は言う。
市長が力を入れて音楽活動のバックアップを行っている横須賀では、街中でのコンサート活動や、地元に根差した財団として、地元のミュージシャンとの協働にも注力している。
またスポーツにおいてもBMXの世界大会を誘致する一方、Jリーグのチーム練習場を久里浜に、プロ野球チームの練習拠点を追浜に誘致している。サッカーと野球、それぞれのプロの拠点が同じ街にあるのは全国的にも珍しい。
農業と観光を軸とした地域活性化への貢献
横須賀という街が持つカルチャーに、食、そして音楽やスポーツによって地域一丸となった活性化が進む中、関係者はすでに新しい課題へと目を向けている。
「農による新しいライフスタイルを育み、それに賛同する人を増やす。つくることから売ることまでをつなぎ、情報発信を通じて新たな暮らし方の提案を行う。
また、その過程で生まれたつながりをコミュニティへと築き上げていく。
ポートマーケットはその起点であり、拠点である。この施設をつくったことで満足するのではなく、そういう視点を持って横須賀の活性化に寄与していきたい。」(堀之内氏)
「隣の鎌倉を含め、横須賀は観光客の9割以上が日帰りである。経済効果を出すためにも、宿泊を兼ねた観光需要の獲得は必須である。鎌倉から横須賀、そして三浦半島など周辺地域には見所も多い。横須賀はドルが使える店舗もあり、ナイトマーケットを充実させることで国際色豊かなインバウンドの拠点になり得る。横須賀市は観光客数増を目標としているが、実現は十分可能だ。それに貢献していきたい。」(石原)
「今後は、近隣の三笠公園や猿島で遊び、その後ポートマーケットで食べる、というルートを確立させたい。それに、海際には再生余地のある施設がまだある。エリア全体の魅力付けを行い、訪れた方々に1日滞在してもらえるよう演出していきたい。」(竹内氏)
横須賀に生まれた新たな観光資産は、地域独自の恵みを束ね、新しいライフスタイルを掛け合わせることで、農業と観光の相乗効果を目指している。三浦半島を舞台にしたこのチャレンジは、始まったばかりだ。
「いちご よこすかポートマーケット」誕生までのサステナブルストーリー(後編)
「横須賀好きが語り継ぐ、街への想い」へ続く
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