関東大震災から 100 年。万一の被災時にも住まいの迅速な支援・復旧で安心を提供したい!地震被災リスク推定システムの開発物語。「創業 60 周年。感謝と挑戦を胸に」災害に強い家づくり③
今からちょうど 100 年前の 1923 年 9 月 1 日に発生した関東大震災は南関東を中心に死者・行方不明者が 10 万人を超える未曽有の大災害となりました。生命や財産を守るためには、災害による被害を防ぐための「防災」、そして万一起きてからでも被害を最小限に抑える「減災」の両面から取り組みが求められます。なかでも重要なのが、ふだん私たちが暮らす住まいの備えです。
「災害に強い家づくり」3 回シリーズの最終回は、地震発生時、オーナー様宅への支援・復旧を迅速化することを目的に開発された、地震被災リスク推定システム「P-HERES(ピー・ハーレス)」について紹介します。
地震発生後の安心をどのように実現するか
パナソニック ホームズでは「災害時に倒れない、被災しても自宅で最低限の生活を維持できる。“家”は重要な防災対策」という考えのもと、家づくりについてはもちろん、お客様が家の購入を考えるところから、住み続けていただくまでの安心を保証する仕組みや体制を整えてきました。
「災害に強い家づくり」シリーズの1回目では、被災時の建て替えや補修にかかる費用を35年間保証する「地震あんしん保証」を、2回目は、東京都品川区・戸越地区における「不燃化住宅」の取り組みをそれぞれ取り上げ、地震を想定した備えと被害を最小限に抑えるための防災意識の醸成の大切さに触れてきました。
では、実際に地震が発生し、建物に何らかの被害が生じた可能性がある場合、オーナー様にどのように安心を提供できるのか。その答えの1つが、パナソニック ホームズが関東大震災からちょうど100年の節目となる9月1日に合わせて発表した地震被災リスク推定システム「ピー・ハーレス」です。このシステムを通じ、地震発生時にどのエリアのどのタイプの住宅の被災リスクが高いかを自動的に判断し、迅速な支援・復旧に役立てていきます。
「ピー・ハーレス」シミュレーション
「ピー・ハーレス」による被災レベル判定のフロー
地震発生時の復旧支援については、従来、一定震度以上の揺れがあったエリアに住んでおられるオーナー様に対して電話や訪問により建物の被災状況を確認したうえで、修復が必要な場合は技術スタッフを派遣していました。ただ、このような人海戦術に頼る手法では、被害の全体把握に時間を要するだけでなく、被害に遭われたオーナー様の中でも支援・復旧に駆け付ける緊急度の判断をつけることが難しく、迅速で効率の良い支援ができないという課題を抱えていました。
システム開発の素地はすでにあった
この課題解決につながるきっかけとなったのが、2019年10月にパナソニック ホームズ社内で「災害対応」をテーマに開かれたCS(Customer Satisfaction)会議です。その前年の2018年の6月には大阪北部エリアを震源とする震度6弱の大阪北部地震が、さらに9月には西日本から東日本を横断した台風21号による甚大な被害が相次ぎ、頻発する自然災害の対策について、全社的な対応としてスピード感をもって取り組んでいかなければならないという危機感のもと、人材確保と育成、災害情報の早期把握などをテーマに組織横断で話し合いの場が持たれました。
全社的な技術課題の解決を担当する技術部 構造・地盤技術課 課長の山形 秀之はその会議を通じて初めて人海戦術に頼る手法で支援・復旧の判断が行われていたことを知りました。「地震の規模が大きい場合に、必要に応じて営業前線からの依頼を受けて被害状況の把握に駆け付けますが、その前段階での情報把握の方法がアナログな方法に頼っていることを知り、技術部門として何とかしたいと考えました。それならば構造システム開発を担う、我々の課で効率化のための提案をしたいと申し出ました」と話します。
技術部 山形 秀之
この提案は、災害発生時に支援・復旧の窓口となるオーナーサポート部にとっても渡りに船の話でした。オーナーサポート部 オーナーサービス企画推進課 課長の好岡 宏哲は「現状の人海戦術の中でいかに効率的に行うかという発想しかなく悩んでいたところだったので、非常に心強い申し出でした。すぐに一緒に取り組みましょうということになりました」。
技術部 構造・地盤技術課ではそれ以前から地震時の被害状況を邸別に把握するシステムの開発にパナソニックと取り組んでいました。「大型のビルにセンサーを付けて被災度を判断するシステムを住宅向けに応用し、簡便なセンシングシステムを構築する仕組みを技術的には確立できたのですが、設置やメンテナンスの費用を考えるとオーナー様への負担が大きいことがわかり実用化は断念しました」と技術部 構造・地盤技術課 主幹の佐田 貴浩は、支援・復旧を効率的に進めたいという強い思いと開発の素地がすでにあったことを語ります。
公開情報と自社データベースを組み合わせ、AIで被災度を解析
コストを抑えながら被災度を迅速かつ効率よく判断するためにはどうすればよいか。そこで着目したのが、国立研究開発法人 防災科学技術研究所が持つ強震観測網で記録された加速度時刻歴波形データとAI技術の活用です。加速度時刻歴波形とは、南北、東西、上下方向の揺れの振れ幅や周期を時間軸で記録したもので、全国約1700地点の観測データが公開され、誰でも利用できるようになっています。
「ピー・ハーレス」開発の最大のポイントは、この加速度時刻歴波形データとAI(ニューラルネットワーク)を用いて、パナソニック ホームズが持つ「大型パネル構法」「制震鉄骨軸組構法」「重量鉄骨ラーメン構法」という3つの構法ごとに迅速に被災度を解析していることです。「堅い構造の建物は短い周期の揺れと、柔らかい構造の建物は長い周期の揺れと相性が悪い(共振する)という特性があり、地震ごとの波形の特性をもとに構法ごとに変形具合を推定しています」と佐田は言います。パナソニック ホームズでは過去に構法別に実際の住宅を用いて実施した実大住宅振動実験を含め、これまでの研究開発で収集した構造実験などのデータをもとに、地震の波形ごとにどの構法で最大どれだけ変形するかをAIに学習させてシミュレーションする手法を確立しました。
技術部 佐田 貴浩
被災リスクの大きさを判定し、支援・復旧の優先順位をつける
実際に地震が発生したときには、発生直後に公開された強震観測網から全国各地の地震データを取得し、エリア、構法別に被災想定レベル(被災リスク)を判定します。判定結果は、パナソニック ホームズの顧客情報データベースと連携し、エリア・構法ごとに、「被災リスクなし」から「被災リスク大」までの5ランクで色分けされ、どの地区のどのオーナー様でどれほどの被害が起きているかどうか(構造体、外壁、内装材)を地図上に落とし込むことで、瞬時に状況が把握できるようになっています。地震データ入手後から色分けされるまでの所要時間は10~30分程度です。その情報をもとに被災エリアの支社・営業所などの営業担当者に対し、優先度を上げて連絡をしなければならないエリア・構法の情報を伝え、それをもとに各営業担当者がオーナー様に連絡を取っていくことになります。
「従来は、震度6弱以上のエリアを対象に、震度の大きいエリアから順番に対象者全員に連絡を取っていたのですが、システム導入によって、実際に被害が大きいと想定されるエリア、お客様を絞り込み、優先度を上げて連絡を取ることで、被害を受けたお客様に迅速に対応できるようになります。これによって実際に支援・復旧が必要なお客様のもとへ向かう時間が大幅に短縮され、不安な状態で支援を待っておられるオーナー様のもとへできるだけはやく駆け付けることで安心を提供することにもつながります」と、好岡は導入のメリットを語ります。
オーナーサポート部 好岡 宏哲
2021年2月に発生した福島県沖地震の際には「ピー・ハーレス」を用いた実証を行いました。震度6弱のエリアには約2千8百棟、震度6強のエリアには51棟の当社オーナー様の建物があり、「ピー・ハーレス」による判定の結果、その中でも宮城県の東南端の太平洋沿岸に位置する亘理郡山元町の14棟の被災リスクが最も大きいことがわかりました。そこで、関東・東北支社を通してオーナー様に連絡を取り、すぐに現場に駆け付けました。その後、技術部・商品開発部を交えて復旧対応も円滑に進めることができ、システムの有効性を確認することができました。
パナソニック ホームズは、関東大震災から100年の節目である今、改めて防災における住まいの重要性について考え、「毎日と、万一の安心がつづく『大丈夫』と言える住まいを。」のメッセージを掲げ、さまざまな施策に取り組んできました。
「今後は、構法ごとの被災リスク推定からさらに踏み込んで、1棟ごとに異なる設計プランもふまえた被害推定へと近づけていけるようより精度を高めていくとともに、頻発する台風をきっかけとする水害についても、外部のサービスを使いながら的確に現地の状況を把握し、支援・復旧に対応できる体制を整えていきたい」と好岡。
「CS No.1」を目指して、災害時に安心を提供する取り組みに終わりはありません。
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被災されたオーナー様への支援・復旧の取り組み
パナソニック ホームズが創業してから60年の間に日本列島の各地で数多くの大きな地震に見舞われてきました。中でも甚大な被害をもたらした二つの大地震、阪神・淡路大地震と東日本大震災の際、どのような対応を行ってきたのか振り返ります。
倒壊ゼロだった阪神・淡路大震災後の当社の住まい
1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災は、兵庫県淡路島北淡路を震源とするマグニチュード7.2の激震が都市部を襲った大地震として、地震災害に対する意識を大きく変える契機となりました。当社では、直ちに全社対策本部を設置し、オーナー様などへの対応、商品・生産物流対策、従業員の救援など、多岐にわたる救援・復旧活動に取り組みました。まずは、兵庫地区に住むオーナー様の安否を電話で確認するとともに、当社とグループ各社から集まった1,554人が支援物資とともにオーナー様宅を訪問し、お見舞いと被害状況の確認を行いました。
被災地に建つ1万4,953棟のパナソニック ホームズの建物は軽微な損傷はあったものの、全・半壊はありませんでした。甚大な被害をもたらした震災を通じて、当社は改めて人々の生命と財産を守る住まいづくりという仕事の責任の重さを再確認するに至りました。と同時に、被災地をはじめ多くのオーナー様から「パナソニック ホームズにしてよかった」という信頼のお言葉をいただき、さらなる安全・安心を提供しなければならない、という使命感を全社員が真摯に受け止めることとなりました。
震災後、電話の通じないオーナー様宅を2人1組で訪問するなど、全社をあげての取り組みが行われました
震災復興に向けては、住まいを失った多くの方が避難所での生活を余儀なくされており、国を挙げての応急仮設住宅建設が進められる中で、当社も兵庫県の依頼を受けました。ただちに社内プロジェクトを発足させ、一般住宅から仮設住宅への転用を図る設計変更を行いました。戸建住宅の2階部分を利用して平屋建てにするという方法で、スピーディに試作棟を完成させ、その技術をもとに、全600戸の仮設住宅の建設を行いました。
2011年3月11日に発生した東日本大震災は、マグニチュード9.0と日本国内観測史上最大の地震です。地震に加え津波の被害が加わり、被害の範囲が広域に及びました。当社は、機能している支社・支店を拠点に手分けをしながらオーナー様の安否、被害状況を確認しました。その数は、震度5強以上の地域にお住いのオーナー様約6万棟にのぼります。地震発生後から数カ月の間に、被災されたオーナー様から1万2,000件以上のお問い合わせや支援要請があり、5月末までに延べ2,150人の支援体制で対応に当たりました。
直接的な支援とともに、住宅メーカーとしての支援活動も3月下旬に始動し、仮設住宅建設プロジェクトが発足。「1戸でも多く、1日でも早く、仮設住宅を被災地の皆さまに供給する」というスローガンのもと、7月末までに岩手・宮城・福島において1,362戸の住宅と集合住宅やグループホーム等、複数の施設も建築しました。
完成した応急仮設住宅
また、4月には住宅メーカーとしての復興支援策として、「復興支援商品」を業界で初めて発売。平屋と2階建ての厳選した30プランで、太陽光発電システムやタイル外壁を標準仕様としました。これは、多くの被災者が避難生活を余儀なくされている状況において、「少しでも早くわが家を持ちたい」という被災者の方々の想いにお答えするためです。多くのお客さまに評価をいただき、381棟を受注しました。
復興支援商品 htmlhttps://homes.panasonic.com/company/news/release/2011/0728.html
その後も、2016年の熊本地震など、大きな地震が頻発していますが、パナソニック ホームズで建築いただいた住宅は“倒壊ゼロ”であり、オーナー様に”毎日と、万一の安心がつづく『大丈夫』と言える住まい”をご提供し続けています。
▶”災害に強い家づくり” 第1号
▶”災害に強い家づくり” 第2号
次号は、当社の街づくりについてご紹介します。(2023年10月公開予定)
◎関連リリース:https://homes.panasonic.com/company/news/release/2023/0823.html
◎パナソニック ホームズ株式会社について
パナソニック ホームズ 創業60周年特設サイト:https://homes.panasonic.com/60th/
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