子どもが不登校になった保護者さんへの道しるべ。 「昼夜逆転」「ゲーム三昧」「約束が守れない」となった不登校の子どもにどう対応すればいいか。
高等専修学校神戸セミナーは、中学や高校で元気をなくしてうまく行動できなくなった人の笑顔と元気を回復してもらい、目標に近づくお手伝いをする学校です。
人間関係がうまく行かずトラブルになる、学力を上げたいが思うように行かない、起立性調節障害で学校に通えなくなった、などで困っている人が入学されます。
元気を回復するには学習システムや、ご本人とのカウンセリングも必要ですがそれと同時に「家庭での保護者様との会話」がとてもとても大切です。
否定的な声をかける、責める会話をすると元気は下がります。思っていること、困っていること、うまく行かずイライラすることを責めないで聞いてあげると元気は少し上がります。「行動しないことを責める会話」ではなく「元気を回復することを目指す会話」に変えるのです。
子どもが不登校になった保護者様の悩みと不安と苦労について、30年近く相談を重ね、良い変化を起こしていただくノウハウを書籍としてまとめさせていただきました。
大学受験予備校として、高校進学、大学進学よりも大切なことに気づいた
神戸セミナーは1968年創業の大学受験予備校です。ある時期から「順調でない状態になった人」を対象とするように切り替えました。最初は「学習が続かない、志望校と学力がつりあわない」という人が多く、そういう生徒さんに「ちゃんと勉強しないと合格できないよ」と誰でも言うような面談をしていました。そういう面談をするとほとんどの人は、下を向いてため息をついて帰っていきます。その様子を見て、これではダメだと思いました。
仕事でも勉強でもスポーツでも「明るく元気」でないと良い結果はうまれません。
「暗くて辛い」という状況の人がいい結果を出せるわけがありません。
元気で快適に学習している人には「もう少し頑張ろう」と言っても大丈夫なのですが、今うまく行っていない人に「もっと頑張ろう」と言うと更に元気をなくすわけです。
そうか、「勉強すること」よりも「元気と笑顔」を回復しなければダメだな、そういう事に気がついたのが1997年頃、私が神戸セミナーで勤務して6年ほどたったころです。
生徒の状況によって面談の方針を変えること、辛い状況を理解してあげること
明るく元気にある程度学習できている人には「この科目を頑張れ」「もっと勉強しよう」と面談でお話ししても構いません。「わかりました!」「ありがとうございます!」と返事するでしょう。しかし、やろうと思っていても勉強が手につかない人や、登校するのがつらくなっている人、朝、起きようと思っても起きられない人に「ちゃんとやろう」というのはとても残酷なのです。実際にそういう面談を多く経験すればわかります。そういう人は「やるべき」と思っているのだがその行動ができない状況なのです。そういう生徒への面談は「辛い状況を理解してあげること」が大切です。「勉強する」という行動の話をするのではなく「やりたくてもできない」という気持ち・思い・ストレスについて聞いてあげることが必要なのです。
ブリーフサイコセラピーという心理学を学ぶようになってようやくそういうことを理解し、笑顔を増やす面談ができるようになりました。
(校内で開催している保護者様向け講演会より)
不登校や高校中退の生徒さんの元気を回復するための学校へと、事業を転換した
少しずつノウハウがわかってくると同時に、本校は不登校や高校中退の人をメインとする学校に切り替える決断をしました。順調に学習が進んでいく生徒さんであれば、集団授業をたくさん受けていただき、テストと数回の面談だけで対応可能です。しかし元気がなくて学習が進まず、外出や登校にストレスを感じる生徒さんには授業や学習よりもまず、元気を回復する面談が必要なのです。高校を卒業すること、学力を上げることの前に「どうすれば元気になるか」を一緒に考える面談を行うことが効果的であるということがわかってきました。そういう面談をすると生徒さんは面談を休みません。面談に来ると元気になり意欲が上がると言ってくれます。不登校の方は、起立性調節障害、過敏性腸症候群、適応障害でウツ傾向などの症状があるので、数年かけてそういう分野の知識、対応のスキルとノウハウも身につけるよう努力を重ねてきました。
家庭の言い争いを減らし笑顔を増やすため、保護者と連携
しかし学校側がスキルを身に着けて、面談で生徒さんの笑顔を増やしても、帰宅して保護者様と「言い争い」をしてしまいまた元気がなくなる、意欲が下がる、学校に来なくなる、ということがしばしば起こりました。
学校に来て教員と接する時間より家族と接する時間の方が長いものです。となると生徒さんの元気を回復するには保護者様との連携が不可欠です。学校と同じように「元気の回復」を目指していただくことが必要です。
本校では入学前から保護者様向けの講演会、面談を実施して「家庭での対応」についてお願いするようにしました。家庭での対応を変えていただくと「笑顔が増えた」「イライラしなくなった」「言い争いが減った」などの効果が現れます。すると保護者様も安心し、心に余裕が生まれ、ニコニコと対応していただくことが増えるので更に良いサイクルができていきます。
「不登校は保護者の責任」は暴論。当事者としての保護者を支援
カウンセラーさんの中には「不登校は保護者に問題がある」「まず保護者が変わらないとダメだ」とおっしゃる方がいます。しかし保護者様は支援する側ではありません。「当事者」であり「困っている方」なのです。
「保護者の対応が悪い」のではありません。知識と経験がないから仕方がないのです。ほとんどの保護者様は、起きようとせずグズグズしている子どもを見たら「起きなさい!」「早くしなさい!」と声をかけるものです。当然です。
元気がなくなって学校を辛いと感じているようなら、親は行くことを促すのではなく、無理をせず休めと言う方が良いんですよ、ということを丁寧に繰り返し説明して納得していただくことが大切です。
本校では月1回のペースで保護者様向けの講演を実施し「話を聞いて直ぐにできるものではありません。繰り返し何度でも説明し、アドバイスしますから一緒に頑張りませんか」とお願いしています。
(本書より)
早期の対応がとても重要
お子様が不登校になられた初期の段階から、責めないで笑顔と元気を意識して困りごとを共有していただくと、早期に「解決」していきますが「責める対応」を長期間続けてしまうと状況が悪化することが多いもの。
本校では年間10回程度、保護者様向けの不登校講演を開催しています。しかし講演を聞きに来られる方、相談に来られる方は一定期間が過ぎてからのことが多いため、講演会では日程が合わないと参加できませんし、遠隔の方にはハードルが高いものとなります。
(校内で開催している保護者様向け講演会より)
そこで「書籍の出版」という話が数年前から上がっていました。書籍として全国から購入していただければ、不登校のお子様への対応方法のノウハウを早めに知っていただくことが可能になります。
また『あなたの子どもはなぜ勉強しないのか」という不登校向けではない書籍をシリーズで2冊、書いており合計で3万冊ほどの実績もありました。
(本書より)
世の中にあふれる「マニュアル的」な助言への問題意識
そもそも親子関係は「これが正しい子育て」とマニュアル化することはできません。保護者さんもお子様も、価値観、目標などはそれぞれ異なっているのが当たり前。また親子の関係が「共感的な会話が多い」のかまたは「対立的な会話が多い」のかは個々のケースによって異なりますし、状況によって変化していきます。
つまり不登校について「こういうときにはこうしましょう」というマニュアル的な言い方は不適切なのです。できるだけ個々のケースをお聞きしたうえで助言させていただくのが望ましいのです。
しかしネット上などには様々な「一般論」や「マニュアル的助言」が溢れています。
例えば「昼夜逆転は良くない。まずは生活習慣を改善するのが良い」「ゲームのやりすぎは良くない。話し合ってルールを決めましょう」「無理に登校させず見守りましょう」などです。
「昼夜逆転より規則正しい生活を」というのは当たり前過ぎて議論にもなりません。しかし「昼夜逆転を正すのと、家庭での言い争いを減らすのとどちらが優先か」と問題提起をさせていただくと、なるほど。言い争いが増えただけで何も良くなっていないかも、と気づいていただくことが多いのです。具体的な行動について一般論で語ることは望ましくないのですが「考え方」を提案することはできます。
本書では、お子様が不登校になって戸惑い、心配し、悩み、不安を抱えておられる保護者様にたいして「どのように考えると困りごとが解決に近づくのか」という視点で、可能な限りわかりやすく表現させていただきました。
本書を通して家庭の笑顔が回復していただければと願っています。
◎プロフィール
喜多 徹人(きた てつと)
学校法人神戸セミナー校長
高等専修学校神戸セミナー校長/カウンセラー
1960 年滋賀県生まれ。
滋賀県立膳所高校時代、硬式野球部 1 番セカンドで夏の甲子園出場。(県予選での「5 試合で 3 塁打 6 本」は 2022 年現在滋賀大会記録)
駿台予備学校で 2 浪の後、京都大学法学部へ進学。
学生時代は、母校の野球部のコーチ、家庭教師、学習塾の運営と講師を経験。
生徒、保護者、教諭対象の進学講演の講師として年間 90 回の講演を担当している。趣味は多彩で、混声合唱、クラシック鑑賞、プロ野球観戦、アメフト観戦、テディベア収集など。
日本ブリーフサイコセラピー学会と、日本家族療法学会の年次学術大会の実行委員長を担当。他にも日本心理臨床学会でシンポジウムを企画するなど、さまざまな心理・医療系の学会に参加し発表等を行っている。
主な著書は『あなたの子どもはなぜ勉強しないのかーそのアドバイスが子どもをダメにするー』(学びリンク)、『あなたの子どもはなぜ勉強しないのか PART 2ー 15 歳を過ぎたら犬家族から猫家族 へー』(同)、『不登校・ひきこもりに効くブリーフセラピー』(日本評論社)共著、『逆転の家族面接』(同)共著など。
◎書誌情報
■書 名:『子どもが不登校になったら親はどうすればいいのか』
■著 者:喜多徹人
■定 価:1,650円(本体1,500円+税10%)
■体 裁:四六判 160ページ
■発売日:2023年7月
■ISBN :978-4-908555-66-4
学びリンク株式会社ホームページ書誌詳細ページ
https://manabilink.co.jp/publication/detail_90.html
◎本書のご購入はこちら
Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4908555664
楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/17539741/?l-id=search-c-item-text-01
紀伊国屋書店 https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784908555664
honto https://honto.jp/netstore/pd-book_32571110.html
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