360度メディアを誰もが使えるようにしたい。WHERENESS(ウェアネス)開発を通じたACTUAL Inc.が思い描く未来とは。
アクチュアル株式会社は、「人間が人間らしくあり続けるために、バーチャルとリアルが共存するアクチュアルな社会を実現する」という企業理念のもと、京都を拠点に活動しているデザインソリューションスタジオです。デザインソリューションとサービスを調査・事業構想からハンズオンでの制作・運営まで一貫して提供し、日本全国のクライアントに届けています。
2023年5月、アクチュアル初の自社開発アプリケーションが誕生しました。360度動画・写真をクラウド上で再構築し、配信することができるワンストップアプリケーションWHERENESS(ウェアネス)です。
今回は、代表取締役の辻勇樹に「世界を体験できる記録」を提供するWHERENESS の開発に至るまでの経緯や、WHERENESS を通じて実現したい世界について話を聞きました。
コストがかかるため気軽に使えない360度メディア
360度動画・写真と言われたときに皆さんは頭の中にどのようなものを思い浮かべるでしょうか。360度メディアを見たことがないという方も多いかと思います。一度こちらの動画をご覧ください。
360度メディアは新しいもの、とお考えになるかもしれませんが、その歴史は意外にも古く、18世紀ころから360度メディアという概念は存在していました。しかし、近年になるまでその利活用はあまり進んでいませんでした。その理由は、360度メディアは四角いフレームのあるメディアと比較して「扱いにくい」ものだからです。360度メディアはデータ量がとても重く、編集に時間がかかります。そのような理由から、360度の映像制作は非常にコストのかかるものでした。コストがかかるということは、誰もが気軽に使えないということです。
360度メディアは「体験」を残していくために最適だった
大学院では、義足の開発を学び、バングラデシュの地方で現地調査を行っていました。大学院卒業後は途上国のリサーチデザインやマイノリティの方のためのデザインに従事していました。大学院在籍時に、一般の方々はあまり馴染みのない義足スポーツの現場に足を運んでいました。そういった現場のリアリティや、その場所で実際に体験すること、足がない方々の心境などを肌感覚で理解できるようなメディアは当時なかったという気がしています。また、途上国で現地調査をしている際に、自分でビデオカムを持ち撮影をしていたのですが、撮影した映像から雰囲気は伝わるのですが、質感や体感は伝わらないなとも思っていました。
人間の「体験」は少なくとも、「四角い」ものではありませんが、四角くないものを四角に収めるということで記録というものを効率化し、記録技術が発展してきました。そうした中で、本来の我々の「体感」や「体験」といったものが、この四角い記録メディアを通して残っていくとは思えません。
そう考えた時に、360度メディアというものが、「体験」を残していくためには現状、最適なのではないかと考えるようになりました。360度と聞くと、「メタバース」を連想される方も多いかもしれませんが、私たちは「記録」と「体験」という2つのキーワードをもとに360度メディアの活用を推し進めています。
ひろく一般的に使われるプラットフォームの開発
360度メディアは、他のメディア体験と比較して、見た人が自分で体験したと思える、主体性の高いメディアです。また、360度ありのままを撮らざるをえないので、リアリティがあり、嘘のつきにくいメディアでもあります。その嘘のつけなさが、ある種、情報の信頼性の担保にも繋がっていると言えるかと思います。
嘘のないデジタルと、時空間の体験を主体性を持って共有できるというメリットがあるにも関わらず、実際に使用するにはコストが高い点や、使いこなすのに新しいナレッジがいるといったような点で課題が顕在していたため、ひろく一般的に使われることはありませんでした。これらの課題を解決し、誰もが使えるような形にするためには新しいプラットフォームを作るしかないという考えに至り、現在開発を進めているところです。
リアリティを担保したい人たちにWHERENESSを使ってほしい
家族との大切な思い出や、大規模なイベントや展覧会、企業・科学研究におけるフィールドワークの調査記録など、写真や映像で切り取るにはもったいない体験、日々失われていく体験を残していきたいという方に、WHERENESS を提供していきたいと考えています。
具体的な事業領域ですと、SDGsとは相性が良いのではないかという印象があります。SDGsという地球規模の課題解決は、社会的に良いことであると言われており、そういうものを伝えるにあたって、かっこよく撮りすぎてしまうと魅力的なコンテンツにはなると思うのですが、リアリティがない、”現実”が伝わりにくくなってしまう可能性があります。360度というメディアを活用することによって、リアリティを担保していくことができます。
他の領域での例を挙げると、人材採用領域との相性も良いのではないかと考えており、求職者と雇用者の情報格差を少なくするという点がポイントだと思っています。映像メディアは、編集をかければかけるだけリアリティを喪失していく、現実から乖離していくものです。現実の感覚を部分的に強化することで、その体験をより伝えやすくするという性質はありますが、編集の過程でノイズのようなものは全て取り除かれてしまうので、結果として、伝わる情報はクリアになる一方で、全員が同じような伝わり方をするようになってしまいます。
しかし、人材採用、言い換えると人生における大きな意思決定で重要なことは、ノイズなども含んだ上での意思決定だと思っています。採用者側がきちんと伝えられているか以上に、求職者側が「なぜここで働くのか」ということを意思決定しているということの方が大事だと思います。なぜならそれは、個人個人の意思決定だからです。ありのままを見せた上で意思決定をするということは、お互いに隠し事がない状態でスタートができるということだと思います。個人個人の意思決定ができるというのは、冒頭にお話した360度メディアが「主体性があるメディア」だからこそという部分にも繋がってくると思います。
情報の受け手側が能動的にメディアを体験できる世界を目指す
ソーシャルメディアの発展により、日々大量の記録と接するようになりましたが、それによって、オーセンティシティ、真実性の喪失といったことが起こっているのではないかと思います。何が本当なのか誰もわからない状況の中で日々コミュニケーションがなされています。それは現状のメディア体験というものが、非常に客観的だからです。一時はソーシャルメディアの台頭により個々人が発信できる社会になったことで情報の民主化が起こるのではないかと思われていましたが、現実に起こっていることは、フェイクニュースやゴシップなどの蔓延といったことではないでしょうか。皆が発信者になることで、受け手のことを考えていない記録が大量に発生しているのではと思います。本来、コミュニケーションを取り、合意形成をする上で大切なことは、相手の話を聞くこと、そして主体的に体験することです。しかし、そのような能力は今のデジタル環境下では育ちにくいと考えています。WHERENESS を通じて、記録を体験できるようにし、情報の受け手側も能動的に体験できるように、メディア体験を相互にしていきたいです。
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