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今日が、残りの人生の最初の1日。

発売50周年を迎える神戸のソウルフード「チョコッペ」。神戸の老舗ベーカリー“ケルン”を代表するパンの誕生秘話とは。

著者: 株式会社ケルン


チョコッペ

【創業77年】神戸の老舗ベーカリー”ケルン”

株式会社ケルンは1946年、神戸の御影にて創業した老舗ベーカリー。

人気商品に「チョコッペ」「御影メロンパン」「クロワッサンベーグル」などがあります。2021年12月に開始した廃棄ロス削減と社会的弱者支援のダブル解決を図る「ツナグパン」や、独自に製作した木製の「エシカルコイン」という地域通貨の神戸エリアでの流通などを通じ、お客様と共に循環型社会の実現をめざすことを経営方針としています。


「パンの街」として知られる神戸市で創業77周年を迎え、2023年11月現在、神戸市内に直営8店舗を展開しています。

創業以来、全店舗で仕込みから焼成、仕上げまでの全ての作業を一貫して行う「オールスクラッチ製法」を大切にしてきました。

ケルン御影本店


バゲット、食パン、サンドイッチから惣菜パン、おやつパンなど幅広く常時60種から

70種のパンが並ぶ中で「ダントツ人気No.1」の看板商品が「チョコッペ」です。

1974年に誕生し、来年2024年に50歳を迎えます。

このストーリーでは、50年に渡って愛されてきたチョコッペの生い立ちについてお伝えします。

累計2,200万本越の代表商品「チョコッペ」

店頭に並ぶチョコッペ


職人が毎日焼き上げる、2本のクープが入った長さ約18cmのソフトフランスにミルクチョコレートをサンド。仕上げに商品名が印刷された薄い紙の「帯」を巻いて出来上がり、というシンプルな構造で「神戸のソウルフード」として多くの神戸出身の方々に愛されてきました。現在は仕事や家庭の都合で他の地域にお住まいの方が「自分が生まれ育った神戸の大好きなパン」として周りの方に紹介してくださったり、全国放送のテレビや各種メディアで紹介されたりしたことで日本全国に認知が広がり続けています。


先代(2代目)社長の壷井醇が1974年に開発したこのパンは、現在ケルン全店8店舗合計で1日に平均1,300本〜1,600本、累計では少なく見積もって2,200万本を販売。

発売からこれまで販売したチョコッペを直線で並べると、神戸市から横浜市に到達することになります。来年2024年には東京都まで到達する見込みです。

当時は業界でもチャレンジングな商品だった「チョコッペ」の誕生秘話

ケルンのこれまで77年間の歴史をまとめた文書やいわゆる「社史」のようなものは残っていません。また、現在働いている多くのスタッフにとって、チョコッペは「入社した時からごく当たり前にあるパン」。それは現在、ケルンの代表を務める3代目社長の壷井豪(以下壷井)にとっても同じで「生まれた時からある」身近な存在です。


チョコッペが50歳を迎えるのを機に、改めてチョコッペ誕生の瞬間を知る常務の寺田雅俊(以下寺田)に当時の話を聞きました。

寺田は大学生時代にアルバイトでケルンに入社し、50年以上にわたってパンを作り続けてきました。

寺田常務


寺田「チョコッペよりも昔に開発され、今でも販売されているパンも作ってきました。

例えば『ミルティー』『フレッシュ』がそうです。クリームを泡立てる作業が大変だったのを覚えています」。


ケルンの看板商品はチョコッペですが、チョコッペの先輩にあたる「ミルティー」「フレッシュ」「ドイツ」なども根強いファンが多く、50年以上にわたって愛されてきた存在です。


 左からミルティー、フレッシュ、ドイツ、チョコッペ


2023年夏、長く働いている社員数名に10年単位の定番商品となっている、ケルンの代表的なアイテムについて「いつ生まれたパンか」という聞き取りをしました。

「これは自分が北御影店にいた時にできたから、1980年のはず」「六甲店にいた時、ずっとこればっかり作って延々と包んでいたよね」などと鮮明な記憶が次々に出てきて、「ケルンの長寿パン」の年表が完成しました。

ケルンの長寿パン


━━ 寺田さんはチョコッペが誕生した瞬間を知っているんですよね。

寺田「はい、覚えていますよ。チョコッペは1970年代初頭に先代社長が開発しました。

当時は、リーンなパンに甘いものをサンドするというのは一般的ではありませんでしたが、これからはその時代だ、と。チャレンジしてみようと生まれた商品です」。


日本では様々な具材やクリームをサンドしたコッペパンが広く親しまれています。

「チョコッペ」という名前からも、チョコレートクリームをはさんだコッペパンだと思われる方も多いのですが、チョコッペのパンはソフトフランスです。コッペパンが小麦粉、酵母、塩、水に加えて砂糖や卵、バター、牛乳などが使われた「リッチなパン」であるのに対し、チョコッペのソフトフランスは小麦粉、酵母、塩、水の基本材料で作られる「リーンなパン」です。サンドされているのは、パンの風味に合うように配合されたマイルドなミルクチョコレートクリーム。老若男女、お子さまからお年寄りまで広く受け入れられる味です。

過去に原材料の都合で、クリームの配合を変更したことがありましたが、すぐに気付かれるお客様がいらっしゃり「クリーム変わりましたか?」と問い合わせが相次いだため、すぐに元の配合に戻しました。それ以来、一度もレシピは変わっていません。

チョコッペの「帯」


━━ 特徴的な「帯」も発売当初から変わらずに巻かれています。

寺田「帯も先代社長が『作ろう』って。チョコッペから始まって、バタールやくるみパンにも帯を巻いていたんです。だから、その当時は3〜4品、帯付きの商品がありました。

でもすぐに取りやめになって、チョコッペと、その2年後に生まれたバタッペだけに帯が残りました」。


壷井「デザインやオリジナルのフォントは、デザイナーに制作依頼したものと聞いていますが、デザイナーが作成したデータの原本は残っていません。発売以来一切変更されず、データで引き継がれています」。

壷井代表取締役


━━ 帯を巻こう、という先代社長のアイデアはどこから来たんでしょうか。

「かわいいから」巻こうと思った、というのは聞いたことがあります。パンを着飾らせるという発想でしょうか。

壷井代表取締役と寺田常務


壷井「改めて考えてみるとパンに紙の帯を巻いて、テープで後ろを留めて、ってひと手間かかりますよね。社員の人たちから反発はなかったですか」。


寺田「なかったですね。当時、ベーカリーではサンドイッチやパンをナイロンの袋に入れる、くらいが主流だったと思いますけど、ケルンでは包装をきちんとしていました。

現代の感覚だと『過剰包装』と言われるかもしれませんけど、ナイロン袋に入れて、サミットバッグに入れて、手提げに入れて。きっちり、パンが崩れないようにして売っていました」。


壷井「お洒落に、丁寧に、という感覚でやっていたということなんでしょうね。その流れで帯も生まれた、と」。

壷井代表取締役と寺田常務

「チョコッペ」50年間定番商品でい続けている理由

チョコッペの製造


━━ チョコッペが50周年を迎えるにあたって、思うことはありますか。

寺田「チョコッペは発売当初からすごい人気商品で、作っても作ってもすぐに足りなくなるような状態でした。店舗によって出す数は違っていましたけど、御影本店では1日に

400〜500本は出ていました。一日中、ずっとチョコッペを作っているような感じで。

最近では『パン屋の要』とも言えるあんパンですら、以前ほどは売れなくなっている。そんな中で、50年にわたってずっと売れ続けているっていうのは貴重なことだと思いますよ」。


壷井「発売から50年を超えて定番商品になる。『持続可能性』ということを考えると、レシピは変わっていませんが、同じ銘柄でも小麦粉やクリームなどは50年の間にその質や成分は変わっています。食べ手であるお客様の味覚や嗜好も体調や食文化の変化、ご自身の加齢によって、知らず知らずのうちに変わっているんです。『変わらない』ということに固執するのではなく、食べられる方の変化に対してどのようにパンも変わっていくのか、ということが重要だと思います」。

お客様の人生と共に歩んできた50年。友だちや相棒のようなパンに。

2023年初夏、「チョコッペは1974年生まれ。ということは来年50歳になるということですよね?」と気付いたのがきっかけで、お客様から「チョコッペとの思い出」を聞かせていただこう、というキャンペーンを実施。約1ヶ月間の募集で、216件ものエピソードが寄せられました。初めてチョコッペを食べた時の思い出を書いてくださった方、修学旅行に持って行ったチョコッペがきっかけで新しい友だちとの仲が深まったという中学生。

子どもの頃からずっと食べ続け、今は親子で食べてくださっている方。神戸から他の地域に引っ越され、チョコッペと似たパンを探しては「やっぱり違う」と感じ、自作してみたという方。「気合いを入れる時には必ずチョコッペを食べます」という方もいらっしゃいました。「翌日になってパンがより硬くなったのを食べるのが好き」「トースターで2分温めてクリームをとろけさせて食べます」というこだわりを教えてくださる方も。

どのエピソードも、皆さんがチョコッペをとても身近な友だちや相棒のように感じてくださっていることが伝わってきて、私たちも幸せな気持ちになりました。

新しい展開も見せている「チョコッペ」。次の50年も引き続き愛されるパンであるために。

三宮店のチョコッペ看板


2022年の三宮店の移転オープン時には、道路から少し奥まった立地で「以前から来ていただいているお客様が新しい店を見つけられないかもしれない」と、目印のために身長160cmの巨大チョコッペの看板を設置。現在ではフォトスポットとして、一緒に記念撮影をしてくださる方も多くいらっしゃいます。

2023年秋にはチョコッペとバタッペのクリームを使った焼き菓子・ダコワーズも発売、など新しい展開も始まっています。


チョコッペのクリームを使ったダコワーズ


今後も皆様の人生を振り返ったときに「そういえばあの時、チョコッペがいたな」と思い出していただけるような存在であればとても嬉しく思います。

また、2023年夏に皆さんが寄せてくださった「チョコッペとの思い出」は、選定の上、

2024年中に制作する「チョコッペファンブック(仮)」に掲載予定です。

こちらも楽しみにお待ちください。




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