地元食材を使った菓子が地域経済のSDGsモデルとして評された高級菓子ブランド「くら吉」の創業ストーリー〜生産者との連携事業に着目したきっかけとは
秋田発高級菓子ブランド「くら吉」(株式会社ゆう幸)は、2023年11月1日に玉川髙島屋S・C本館B1フーズシティ内に玉川髙島屋S・C店をオープンいたしました。東京都内では4店舗目の常設店となり、そのほか秋田、仙台、大阪など全国8店舗をデパ地下中心に展開しております。
2023年11月にオープンした、くら吉玉川髙島屋S・C店
くら吉は、「こだわりの地域素材を活かした創作菓子」がコンセプトです。
菓子には、粒の大きさで知られる秋田県仙北市西木産の西明寺栗のなかでも、栽培方法にこだわる赤倉栗園の善兵衛栗や、秋田県上小阿仁村産の食用ほおずきを使用しているほか、日本一の生産量を誇る秋田産のラズベリーを活用し、産学連携によるブランド化をすすめております。弊社が選び抜いた素材を使用し、職人が一つひとつ手作りをすることで、高品質な菓子を提供しております。
2011年にみちのくの小京都・秋田県角館の小さな菓子店からスタートしてから約12年、売上増加率は600%を超えております。この急成長の裏には、企業経営力強化のみならず、秋田の素材を活かした菓子を通じて秋田の魅力を発信し、地域活性化や社会課題の解決に貢献したいという強い思いがありました。
地域とともに歩み続ける「くら吉」のこれまでと、これからの展望を代表取締役会長兼社長の佐々木幸生が紹介します。
季節の厳選素材と創意工夫を凝らしたモダン和スイーツ
くら吉では、「旬・菓・創」という考えのもと、丁寧に作られた旬のこだわり地域素材を活かした菓子創りを行っております。
「善兵衛栗(西明寺栗)マロンウィッチ」、「コアニスイーツホオズキほおずきウィッチ」、「あきたフランボワーズ ミニョンヌ ウィッチ」など、風味豊かなクリームを香ばしいタルト生地でサンドした「ウィッチシリーズ」、素材から職人が一つひとつ丁寧にクッキーに仕立て、かわいい秋田犬のクッキーが目を惹く「KURAKICHI あきた フルーツ クッキー缶」をはじめ、「生あんもろこし」、「秋田創作寒天菓子」など、素材を吟味した華やかなヴィジュアルのさまざまな和・洋菓子を販売しております。
左から、りんごケーク、善兵衛栗マロンウィッチ、ほおずきウィッチ 各270円(税込)
KURAKICHI あきた フルーツ クッキー缶 12種類入 大缶 4,860円
地域素材にこだわった質の高い菓子を提供するため会社を設立
「くら吉」は、もともと2005年に父がくら吉有限会社を設立し、観光地である角館に観光土産菓子販売店を開業しておりました。桜の名所として知られる角館のお土産菓子として、主力商品である「生あんもろこし」を中心に堅調な売上げを続け、多い時は日商300万円を超えるほどでした。しかし2011年の東日本大震災の影響を受けて観光客が来なくなると、売上げは激減しました。観光土産菓子事業のみでは立ち行かない…。ピークとオフピークの差がある観光客に頼った菓子販売はリスクがあると感じ、同年「くら吉」を母体に自社で菓子製造を行うべく「株式会社ゆう幸」を設立いたしました。
くら吉角館本店
デパ地下の出店が全国展開の発端となり、売上は右肩上がり
起業当時に掲げたコンセプトに基づき、一からこだわった菓子を提供する場として目をつけたのが、百貨店の食品売場いわゆるデパ地下でした。デパ地下といえば老舗・有名ブランドをはじめ、感度の高いスイーツブランドがひしめき合う激戦区ですが、あえて競争が激しい市場に挑んで、そこで生き残れる企業であれば、長く続けていけると思ったんです。
しかしデパ地下に進出することを目標の一つに掲げた際は、新しい仕事に二の足を踏み、さらには有名百貨店での販売に尻込みをして1週間の催事出店ですら秋田から出向くことに抵抗がある社員が多く、離職してしまうことすらありました。
それでも私は、信念を貫いて動き出しました。
しかも社内の営業は私1人だけ。デパ地下出店のノウハウも不足していたため思案した結果、戦略を練り手順を踏みました。
この当時、私は社長として資金調達のためのファンド・金融機関との交渉、経理実務、行政手続きなども行い、さらには菓子製造のノウハウを身につけるために、毎日午前中は工場で「生あんもろこし」のあんをすべて製造しておりました。
会社経営や事業構想を練る時間と併せて、わずかな時間のなかで有名百貨店を訪れての市場調査や情報収集、分析を行いつつ、さらに何度も百貨店に足を運び、百貨店バイヤーに対して新商品のマーケティングを繰り返し、テスト販売の機会を得ることができたのです。その販売が好評を博したのがきっかけで、現在のデパ地下の店舗展開につながっております。
老舗菓子店やスイーツブランドを見習ってマーケティングで徹底して意識したのは、とにかく差別化でした。さまざまなブランドが出店しているデパ地下のなかで、生産者が作った秋田の素材にスポットを当て、その魅力を発掘した商品を展開することで他社との差別化を図りました。
良質の素材を使用し、手作りの菓子創りを徹底することにより付加価値を高め、味覚はもちろん、さらに視覚にもポイントを置いています。より美しさを際立たせるために商品ディスプレイはジュエリーケースを彷彿させる作りにして、お菓子パッケージのヴィジュアルやパッケージの細部にまでにこだわり抜いたのです。
差別化を図るため、店舗のディスプレイにもこだわりました
そして、その分析の通りに、デパ地下常設店舗の売上げはコロナ禍においても比較的堅調に推移して、増収、増益を重ねました。
2020年2月に東京での初の常設店である松屋銀座店に出店したこと、これが事業としてのターニングポイントとなりました。銀座という一等地に出店したことから周囲からの注目も高まり、さらに売上げも好調なこともあり、さまざまな百貨店から出店のオファーをいただきました。
そのなかから、弊社のコンセプトに合致した百貨店を選ばせていただき、直近では2021年6月の渋谷東急フードショー店、2022年10月の阪急うめだ店、2022年11月の西武池袋店、2023年11月の玉川髙島屋S・C店と、相次いで出店を続けております。
事業のターニングポイントとなった、KURAKICHI 松屋銀座店
販売数が伸び、地元生産者の生産活動に持続可能な環境をもたらす
弊社で扱う素材は、化学肥料不使用、温湯処理出荷などを行っている赤倉栗園の「善兵衛栗」、たじゅうろう農園で栽培している化学肥料不使用の食用ほおずき「コアニスイーツホオズキ」など、生産者の栽培へのこだわりがあるものを厳選しております。
素材については私が生産者のもとに足を運んでお話を伺い、実際に味わって見極めていきます。起業当時から生産者への交渉も私が自ら行ってきました。時には考え方の違いなどもありましたが、コミュニケーションを重ねて何度も何度も話し合いを続け、信頼関係を築いてきました。
大きなものでは赤ちゃんの握り拳ほどの大きさになる善兵衛栗
また、秋田県産ラズベリーの「あきた フランボワーズ ミニョンヌ」は、秋田県立大学や地域の生産者と産学連携事業にて協定を結び、秋田県立大学生物資源科学部のキイチゴ実証研究などに研究資金を提供しているほか、秋田県内のキイチゴ生産者自ら有する圃場をこの事業に登録し、当社専用のキイチゴの圃場にしています。
生産者はキイチゴの品質を高めるため秋田県立大学生物資源科学部の指導による栽培マニュアルを遵守し、生産履歴の記帳を徹底することで、年ごとに生産に対する振り返りを行う一連のプロセスを通じて高品質化を図っております。
弊社はキイチゴの生産体制及び産地ブランド形成に資するため、登録した圃場で高品質化されたキイチゴを価値に見合う高価格で買取りを行っております。
秋田県立大学、ラズベリー生産者との連携事業に関する協定書締結式の様子
秋田県内生産者から菓子の素材を高値で購入することで、生産者の所得向上効果や1次産業への波及効果が期待でき、さらには高品質な秋田の素材を使った菓子を首都圏・大都市圏を中心とするデパ地下にある常設店舗を中心として販売を行い、地域経済の持続可能性を高める取り組みを行っております。弊社ではこのような秋田県内生産者の生産活動を持続可能なものとする体制づくりを、積極的に推進しております。
ラズベリー生産者と進捗状況の確認などを行うミニョンヌ推進会議を毎年開催
SDGsにも叶う事業と評価を受け、資金調達に成功
このビジネスモデルが、持続可能な生産及び消費のシステム構築を目指し、持続可能な開発目標(SDGs)の目標(9番・産業と技術革新の基盤をつくろう、15番・陸の豊かさも守ろう)にも叶う事業であると評価されて、2022年12月にはアグリビジネス投資育成株式会社から「特色ある地域食品産業の創生に取組む地域ビジネスモデルの育成」として、出資を受けました。
選定理由は、以下の通りです。
ゆう幸は、「安心・安全かつより良い素材」を生かした菓子を手仕事で丁寧な生産を行い、顧客に届ける企業であり、高い付加価値を持った商品は、素材の仕入れにおいても価値に見合った安定した購入を可能とし、連携する生産者の所得向上につながっています。弊社(アグリビジネス投資育成株式会社)は、これらのビジネスモデル、およびこれを経営として実現する製品開発力や佐々木氏のリーダーシップを評価して投資いたしました。
https://www.agri-invest.co.jp/株式会社ゆう幸への出資について/
アグリビジネス投資育成株式会社の親会社である農林中央金庫のコーディネートを受けて、JA全農あきたなどとともに、新たな食農バリューチェーンの構築に取組み、2023年10月にはその一環として秋田県鹿角市産の北限の桃を使用した新商品「KURAKICHI あきた フルーツ クッキー缶(あきた北限の桃アソート)」などを発売いたしました。
KURAKICHI あきた フルーツ クッキー缶(あきた北限の桃アソート)2,700円(税込)
今回の出資の受け入れをますます成長と発展を遂げる機会と捉え、お客様はもちろん、生産者など関係者のご期待に添えるように、また地域経済持続のためにも、さらなる事業成長を図ってまいりたいと思います。
目指すは秋田の魅力発信とグローバルブランドへの成長
秋田県の良い素材を活用して良い菓子を作り、今後もさまざまな場所に出店することで、全国の人に満足してもらうと、秋田に興味が湧き足を運ぶ人も増えます。
首都圏を中心とした食に関する感度が高いお客様に秋田発の菓子を味わっていただくことにより、外貨をもたらします。この循環こそが地域資源を守ることにもつながり、地域経済にも貢献できるものとして、秋田の魅力やストーリーを表現する商品を提供し続けていきます。
また、日本のみならずグローバル市場への進出も視野に入れており、今後は認知度、企業イメージ、企業価値を高め、多くの消費者から評価される食のラグジュアリーブランド・グローバルブランドへと成長を遂げることを目指しております。
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