35年間一人で挑戦し続けてきたクリスチャン研究者。一人会社が挑んだ「家庭用太陽熱造水器」の開発の軌跡とは。
私は、ある企業の研究開発部門において35年間、バイオ関連の研究開発に携わらせていただきました。65歳での退職を機に、2019年7月、一人会社「株式会社バイオEOR」を設立しました。創業2年目には、太陽熱を活用する家庭用造水器の開発を、ある企業から委託されました。開発を開始した時点で、委託元は原理実証用のプロトタイプを既に作成していました。しかし、それは市販の部品を組み合わせた高価なものであり、実用化にはコスト削減と性能改善が必須でした。低コストで高性能な製品を実現することが、私の最大の挑戦でした。私はイエス・キリストを信仰するクリスチャンです。このストーリーでは、新設したばかりの一人会社で臨んだこの難題に、ひとりのクリスチャン研究者として挑んだ開発の軌跡をお届けします。
夢のその先へ。ー創業~家庭用太陽熱造水器の開発の経緯ー
若い頃から、私は一人でいることを好む性格でした。周囲はしばしば、「みんなの輪の中に入ったら」と助言してきましたが、私には共同作業やチームワークを要する仕事は苦手でした。そんな性格から、「研究」という一人で行える仕事が自分に最適だと確信し、研究者の道を選びました。しかし、人間関係の問題は、どんな場所でも避けられないものだと後に理解しました。それでも研究者になることは、私の一生の夢でした。
大学院を卒業後、私は夢に向かって企業の研究職に就きました。65歳で退職するまでの35年間、私は転勤もなく、研究に専念し続けることができました。退職後は、自分の研究所を持つという更なる夢を実現すべく、すぐに株式会社バイオEORを設立、大阪市内のレンタルラボで、自分だけの研究室を開設しました。この一人会社では、バイオ研究の受託を目指し、実験、会計、企画、営業に至るまで、あらゆる業務を一人で担う必要がありました。研究は私の天職であり、生涯をこの道に捧げることを望んでいました。一人会社ならではの自由さと、柔軟で創造性豊かな運営が、困難な中でも楽しく仕事を続けることを可能にしました。また、この頃、私は聖書と出会い、イエスキリストを信じるようになり、洗礼を受けてクリスチャンになっていました。このことが、以後の私の研究生活に大きな変革をもたらしました。
会社立ち上げ直後は、以前勤めていた会社のテーマを業務委託で引き続き担当しました。こうして、大阪市内のレンタルラボで、自分だけの研究室を持つ喜びに浸り、一見、理想の研究生活を手に入れたかのように見えましたが、1年も経たずに委託契約が終了し、コロナの影響で約1年間、仕事が途切れ途方に暮れていました。しかし、聖書の教えから、必ずしも順風満帆の人生が良いとは限らないことを知っておりました。日々祈っておりますと、しばらくして別のテーマで新たな業務委託契約が与えられたのです。そのテーマが、家庭用太陽熱造水器の開発でした。
開発のコンセプト
日本は水資源に恵まれており、一般的に水不足に悩まされることが少ない国です。このため、個人ユーザーが太陽熱造水器を導入する必要性は低く、日本では家庭用太陽熱造水器の認知度もまだ低いのが現状です。さらに、日本の地理的な条件から日照時間が短いため、太陽熱を活用した造水器には不利な環境とも言えます。加えて、これらの製品が一般に高価格であることも普及が遅れている一因です。2023年9月26日から27日に福岡で開催された2023九州災害リスク対策推進展で当製品を出展した際、多くの来場者が当社のブースを訪問いただきましたが、この製品分野に殆ど馴染みがない様子でした。
しかし、海外では多様な種類の太陽熱造水器が開発され、災害対策用品やアウトドア製品として販売されています。これらの製品は日量約1リットルから10リットルで、価格帯は2万円から10万円程度です。日照時間や地理的な条件は変えられないものの、価格については改善の余地があると考えました。日本で太陽熱造水器が手頃な価格で提供されれば、その普及が進み、国内の災害リスク対策にも貢献できると思いました。委託元は安価で小型、かつどの家庭でも扱える手軽さを重視していました。そのため、この製品は利益よりも社会貢献の側面が強いと言えます。
このテーマに取り組むことになったことを、私はクリスチャンとして神様の導きであると強く感じました。実は、この時期、私はガーナの個人経営の孤児院の建設と経済自立を支援していました。以前より私はアフリカの発展途上国への支援に関心を寄せておりましたが、7年前、SNSを通じてガーナのクマシ市に住む方と知り合い、小規模な孤児院の建設と運営の支援を行っていたところでした。この出会いは私が聖書と出会った時期と一致しており、私はこの孤児院支援が神様の導きであると確信していました。そして、経済自立のため、敷地内の井戸を利用したミネラルウォーターの製造販売事業を立ち上げていたところでしたので、同じ水事業の中で太陽熱造水器の開発が孤児院のプロジェクトにつながる可能性を感じたのです。
このようにして、孤児院の支援とこの開発テーマが重なり、開発に対する確信を深めることができました。開発コンセプトとしては、委託元との議論を通じて、低コストで、シンプルかつ使いやすく、ランニングコストがかからず、動力を必要とせず、貧困地域でも導入可能な太陽熱造水器を目指す方向で自然と固まっていきました。また、利益追求よりも社会貢献を実現することが重視されました。
開発着手時にして最大の壁に直面
まず、開発過程で直面した最大の課題についてですが、開発に取り組み始めた当初、プロジェクトの前任者によってプロトタイプが完成しておりました。しかし、これは原理実証用で、市販の部品を組み合わせて作った高額なものでした。実用化には、低価格化が不可欠であり、これが最大の課題でした。さらに、造水性能にも問題がありました。通常、一人当たりに必要とされる水の量は一日あたり約3リットルですが、この製品の造水能力は一日に最大でも1リットルでした。何とかして造水性能を飛躍的に向上させる必要がありました。
ひたすらに解決策を模索し、試行錯誤。
次に、これらの課題をどのように克服したかについてですが、まず価格については、製造コストを低減する方策を模索しました。一つは金型製造の検討、もう一つは市販品を上手く組み合わせる方法でした。金型の専門企業に相談しましたが、金型製造費は一般に高額で、普及していない製品の金型を高い費用で製造するリスクが大きすぎました。
このため、市販品を組み合わせて作る手軽さから、DIYとの組み合わせをイメージして、簡単に市販部品を組み合わせて作れる方法がないか模索しました。しかし、様々な市販の部品を試しましたが、なかなか望む仕様に合致するものが見つかりませんでした。それでも、諦めずに試行錯誤を重ね、ある日、業者さんからの情報で適切な部品の組み合わせを発見しました。そこで、よく調べてみるとこの組み合わせは以前に検討して、水漏れがあったために採用されず忘れられていた案でした。しかし、当時問題となっていた水漏れの問題は、隙間テープによる改善で現在では解決されていたのです。この案の採用により大幅なコストダウンが実現しました。
造水性能の向上に向けては、さまざまな試みを繰り返しましたが、当初はどんなアプローチを試しても改善が見られない状況が続いていました。しかし、聖書の教えに基づき、神の意志に沿うならば必ず成就し、そうでなければ成就しないという考えを持ち、最善を尽くした後は全てを主に委ねる心構えでいました。そして、ある日、フラワーキャップのプランターの底部が2重の構造になっている直感的なイメージが思い浮かびました。その時点で、このアイデアがどのような意味を持つのか、またどのような効果をもたらすのかは不明でした。論理的な根拠はなく、完全に非論理的な思いつきでこれが神様からのアイデアかどうかは分かりません。しかし、何か新しい可能性を期待して実験を試みることにしました。
その結果、造水量が大幅に増加し、製造コストも大幅に削減されました。この構造とメカニズムの効果は、実験を行って初めて明らかになりました。フラワーキャップにはプランターが1個付属しておりますが、同じプランター部品をもう1個追加して、底部のプランターを二重の構造にしてみました。すると、外側のプランターが蒸留水の貯留用として、内側のプランターが原水バットとして機能することが分かったのです。これで、これまで原水バット用に別製品を購入していましたが、フラワーキャップのプランター部品を1個追加するだけでコストを大幅に節約できました。さらに、上部の透明カバー表面に生じる蒸留水が二重のプランターの隙間を通ることで、プランター底部に効率よく集水されること、底の隙間構造をスペーサーで調整することで、原水と蒸留水がうまく分離され、蒸発の促進と再蒸発の抑制が効率よく起こることが分かりました。また、内側のプランターは外側のプランターと同じ大きさのため、原水バットとしては最大の大きさになり、それに伴って蒸発吸収体の大きさも最大限に拡大でき、結果として造水量が増加しました。これらの変更により、部品コストの削減と造水性能の改善が両立できたのです。従来品と比較して、部品コストは約1/5となり、造水性能も大幅に改善されました。
この研究から得たこと
低価格化の成功は、業者の紹介が大きな要因でした。また、性能向上やコンセプトの発展においても、私の特別な努力や才能が直接的な影響を与えたわけではありませんでした。成功を振り返ってみると、採用したメカニズムは新しい発明というよりも、むしろ当たり前のように思えます。しかし、この「当たり前」に気付くためには、固定概念を打ち破ることが必要でした。多くの失敗が、固定概念の打破を促すきっかけとなりました。
結局、私がしたことは、「諦めずに続け、内なる声に耳を傾ける」ということでした。このプロセスを通じて、一人会社としての孤独な挑戦をしていたように思われましたが、実際には周囲の人々の協力と、内なるもう一人の存在の助言によって支えられていました。
特に、プランターを二重にするというアイデアは、不思議な体験でした。この体験を通じて、私は神様との出会いを経験し、神様が私に伝えようとしている重要なメッセージを感じ取りました。
最後に伝えたいこと
長い研究生活を通じて、私は一人で研究に挑戦しつつ、常に「何のために生まれてきたのか」「なぜ働くのか」という根本的な人生の問いに向き合ってきました。この世界に神は存在するのか、人生には目的と意味があるのか、そんな疑問を抱き続けていました。研究を愛しているものの、それだけでは人生が完結するとは感じられませんでした。
人間は避けられない運命として死を迎えます。一生懸命に働き、成功し、富と名声を手に入れたとしても、結局は死が待っているならば、私たちは何のために生き、何のために働くのでしょうか?この普遍的な疑問に対して、私は多くの哲学書、啓蒙書を読み、宗教の教えにもその答えを求めましたが、真実の答えを見つけたのは聖書でした。聖書には次のような言葉があります。
「今日か明日、これこれの町に行き、そこに一年いて、商売をしてもうけようと言っている者たち、よく聞きなさい。あなたがたには、明日のことは分かりません。あなたがたのいのちは、しばらくの間現れて、それで消えてしまう霧のようなものです。あなたがたはむしろ、「主のみこころであれば、私たちは生きて、このこと、あるいは、あのことをしよう」と言うべきです。」ヤコブの手紙 4章13~15節
「人は、たとえ全世界を手に入れても、自分のいのちを失ったら、何の益があるでしょうか。」マルコによる福音書 8章36節
「イエスは彼に言われた。『わたしが道であり、真理であり、いのちなのです。わたしを通してでなければ、だれも父のみもとに行くことはできません。』」ヨハネによる福音書 14章6節
私は一人で会社を立ち上げ、一人で研究に挑戦してきたと思い込んでいましたが、実際にはそうではありませんでした。私たちは神様とのつながりがなければ、結局は一人では何もできません。神様とつながっていれば、神様の永遠のいのちの中で私たちは豊かな実りを結ぶことができます。
これは、この世で最も栄華を極めたと言われるソロモン王の言葉です。
「神を恐れよ。神の命令を守れ。これが人間にとってのすべてである。」伝道者の書 12章
今後も、神様を信じ、研究を通じて真理を追い求めるつもりです。
商品情報・プロジェクト情報URL
製品の詳細は、株式会社バイオEORのウェブサイトで確認できます。
本製品は、今後クラウドファンディングなどを通じて試験販売を行う予定です(具体的な時期はまだ未定です)。
太陽熱造水器は現在開発途上にあり、まだ解決すべき課題が数多く存在します。これには知的財産権の問題、海外輸出規制、安全規制などが含まれます。しかし、私はクリスチャンとしての信念を持ち続け、研究に励むことで、将来的にはこの製品をガーナの孤児院の経済自立に役立てることを目指しています。
株式会社バイオEOR
代表取締役:山下信彦
住所:大阪府東大阪市荒本新町3番19-203号
E-mail:yamashita@bioeor.jpn.org
URL:http://bioeor.tamizou.com/entry3.html
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