「歯と口を整えるアンチエイジング」歯科医師が明かす健康の新常識
「歯と口を整えるアンチエイジング~自宅で毎日できるセルフケア」(ビジネス社)は、歯科医師・歯学博士である生澤右子(株式会社Dental Defense代表)が執筆しました。
発行から現在まで、「歯はアンチエイジングに関係あったんだ!もっと歯のために行動しなくては」と多くの方々から反響を頂いています。
『歯や口を整えてメンテナンスすることは、アンチエイジング対策の「1つ」ではなく、最初にすべき「要』と説き、世界基準のオーラルケアを発信している生澤ですが、会社設立のきっかけは、自身の歯が折れてしまったことでした。
そして、歯の教育事業を展開しながら出版の可能性を探りますが、編集者に「歯の本は売れないから!」と一蹴されてしまいます。
それでも、「日本に世界基準のオーラルケアを広めたい」という強い思いがあり、出版のために行動してから3年の月日を経て、ついに発刊されたのです。
この記事は、「売れない」とレッテルを貼られた歯の本を出版にこぎつけるまでの、一人の歯科医師の苦悩のストーリーです。
◆歯科医なのに自分の歯に自信が持てない··。歯が折れてしまった経験から自身のオーラルケアを見直す
サンスターが2014年に行った調査では、欧米の国々で自分の歯に自信がある人は50%を超えていたのに、日本はわずか13%でした。歯科医院がコンビニよりも多いと言われている時代に、です。
かくいう私、生澤も、歯科医師でありながら、歯に全く自信のない時期がありました。
それは、歯科医師として尊敬する先生のところで診療を見学させて頂いていた時のこと。
フロランタンという硬めの洋菓子で、私の右上の歯がボロッと欠けてしまったのです。
私は、一瞬何が起こったか理解できず、そして少し後から、なんで折れたんだろう、これからどうしようというショックがじわじわとやってきて、しばらく落ち込みました。(あまりにも印象的だったため、その先生は5年以上たった今でも覚えていました。)
この悲しい出来事をきっかけに、私は歯に自信が全くなくなり、歯が折れた原因は何なのか、普段の歯磨きに問題はなかったのかなど、検証していきました。
◆多くの日本人が世界基準のオーラルケアを実践できていないという気づき
それで分かったことは、世界基準のオーラルケアをしっかり実践していなかったということでした。歯科医師の私がやっていたオーラルケアに問題があったのです。正確にいうと、私が「やってきた」オーラルケアです。
毎日のケアに問題があっても、実際に歯自体に問題が出るのは、時間差がだいぶありますので、歯への悪習慣の積み重ねだったのです。
いざ、世界基準のオーラルケアを発信するにあたり、世の中を見渡すと歯に関する問題がいろいろありました。
- 人生100年時代がそこまで来ているのにも関わらず、歯の寿命が追いついていない
- 歯の健康を表す歯の本数が、40~50代で個人により大きく差がついて二極化する
- いまだに歯に問題が起きてから歯科医院に駆け込む人が多い
- 歯科医師だけでなく、医師まで「歯は大事」と言わなければいけない状況
- コロナ禍で、歯科受診控えが増え、ただでさえ良くない口の状態がさらに悪化
- 歯や口の健康状態の悪化が、全身の健康に影響していることがわかってきたが、全身の健康に比べ、歯や口の健康の優先度がかなり低い
- 自費の歯科治療の良さを紹介しきれていない
- 国が進めている「健康経営」に歯科が入っていない(いなかった)
◆歯の教育事業とフリーランス歯科医師の挑戦
これらの問題を大きく捉えて活動するために、フリーランスの歯科医師をやりながら、株式会社Dental Defenseを設立しました。
メインは歯の教育事業と位置づけ、保育園で毎月歯のエデュケーションとケアを行う「子ども歯医者アカデミー」™️と、世界基準の治療を自費で提供する歯科医師を紹介したり、歯科の病気をわかりやすく紹介したりする「プレミアム・デンタルサポート・クラブ®️」の運営を始めました。
全くの門外漢であるビジネスの世界に飛び込み、スクールで学びながら、メールマガジンを書き続けました。しかし、反響がないのです。それを読みたいという人もなかなか現れません。
それでも、自分の中で網羅的に書いて、一つのコンテンツとしたいと思い、読者がほとんどいなくても書き続けました。
保育園で配る「えんだより」は、目は通していただいているようでしたが、無料の歯磨きイベントを開催しようとしても、保護者の申し込みはありませんでした。ここにきてようやく私は、「みんな、歯ってあまり興味がないんだな」とわかりました。
私が歯科医院で接していた患者さんは、定期通院する人、歯に困っている人など色々ですが、世間では歯科に通院していない人の方(特に働いている世代)が圧倒的に多く、そこまで歯の健康情報を必要としていないのだと思いました。
ただ、40~50代の患者さんは10~20代にした治療のやり直しがとても多く、場合によっては抜歯にもなり、そこから連鎖的に歯が失われていくケースを多く見てきました。
また、年をとって一番後悔するのは歯だというアンケートがあることや、訪問歯科で寝たきりの方の口の中の衛生状態を知っている身としては、一般の人よりだいぶ先回りして、「知っていただきたい、始めるのは早い方がいいから」という気持ちが大きかったのです。
「歯の本は売れないからねー」と編集者さんに一蹴され、ゲームクリエイターに転身?!「歯の王様をまもるゲーム」™️を作ることに
ビジネススクールでは、出版の可能性についても講義がありました。また受講者の中にはすでに出版している人がいたこともあり、出版してより多くの人にアプローチできれば、歯に興味がある人に巡り合えるのではないかと思いました。
そこで、企画書を持ち込み、編集者さんにプレゼンをしたのですが、「歯の本は売れないからねー」で終わってしまったのです。「歯科の分野がまるごとダメだったら、どんな努力をしてもダメなのか」「今までの歯の本はなぜ出せたのだろう」など、悶々と考えました。
自分ではこの先どうすればいいのか分からなくなり、またコロナ禍で家から出られなかったこともあり、大人も子どもも歯の予防を学べるボードゲームを作るという、新たなコンテンツ作りに方向転換しました。それが一年がかりで作った「歯の王様をまもるゲーム」™️です。
ゲームを作り始めた最初の頃は、出版への道が閉ざされても諦めきれない気持ちでしたが、そのうちゲームを面白くするためにアイディアがどんどん湧いてきて、楽しく充実した時間を過ごし、完成させることができました。
おかげさまでこのゲームは、ユニークさ・学習要素・ゲーム性を兼ね備えているとして、東京大学や滋賀大学の先生方からなる審査員に評価され、第1回Board Game Japanカップ大賞(NPO法人Board Game Japan)を受賞いたしました。
◆アンチエイジングと歯の深い関係
ちょうど、コロナの終わりが見えてきたような気がした2021年の年の瀬。お世話になっている著者の犬塚壮志さんから、思わぬアイディアを頂きました。
それが、「コロナ禍でクローズアップされたストレス・免疫、そして一般的に興味が高い睡眠・美容などのテーマを、歯や口の専門家である生澤さんが書いてみたら面白いのではないだろうか」という言葉だったのです。
確かに今まで、むし歯・歯周病・歯ぎしり・顎関節症など病気ごとに考えたことしかありませんでした。既存の本もそのような章立てのものがほとんどです。それもそのはず、歯学部ではそういうふうに教育されてきたのですから。
しかし、逆から考えてみると、睡眠・免疫・ストレス・美容などが歯に関係あることを知ったら、オーラルケアに関心が出てくるに違いない!とそのアドバイスで確信しました。
そして、ゲームを作った時に感じていた「モチベーションが一番大事だな」ということを思い出しました。何かの知識があっても、それに向かって行動しないと何も変わらないということです。だとすると、みんなが興味のあるテーマから歯に結びつける方が、興味を持ってもらえるはずです。
企画書には、睡眠・免疫・ストレス・美容・モチベーションを歯に結びつけ、エビデンスもしっかり加えて、編集者さんに見てもらったところ、「これでいきましょう」と良いお返事を頂けました。
お気づきになったかもしれませんが、この時点ではアンチエイジングという言葉はまだなかったのです。
◆抗老化・抗加齢を表す「アンチエイジング」というぴったりの言葉が見つかった
アンチエイジングとは、抗老化・抗加齢を表す言葉です。文字どおり、体の衰えにあらがうことです。
睡眠・免疫・ストレス・美容・モチベーションがマイナスの方向にいくことは、どれも老化や加齢を意味します。
となると、プラスの方向にいくことがアンチエイジングです。詳しくは本を読んでいただけるとわかるのですが、どの項目も歯や口が良い状態になるとプラスの良い方向にいくのです。
それで、アンチエイジングという言葉をタイトルに使ったら(歯と口を整えるアンチエイジング)、まさに「そのとおりです」という感じでしっくりときました。歯の健康状態が良くなると、気持ちまで上がることは本書にも書きました。
そのため、カバーする内容が広くなりましたが、治療と研究、医科と歯科、マクロとミクロの世界という対になるものを今までやってきた経験があったので、最後まで書き上げることができました。この本には私独自の視点が多く入っているともいえます。
3~4週間程度で2章ずつ執筆していくのは、やはり骨の折れる作業でした。文献やガイドラインを調べて、正確に伝えることを心がけつつ、話が難しくなりすぎないように注意しました。
この締め切りのスピードについていけたのは、以前のメールマガジンでかなり調べて書いていたことが大きく、文章を書くことにもある程度慣れていたこともありました。
◆アンチエイジングのための歯に関わる3つのポイント〜興味を持ってもらえるように身近な内容で
- 世界基準のオーラルケアとは、複数の道具(フッ素やフロス、歯間ブラシなど)を使ってケアすること
- 歯の健康を保つには、歯磨きだけではなく、食習慣や日ごろの生活習慣まで気をつける必要がある
- 歯の健康と全身の健康は、相互に関係して成り立っている(そもそも、歯と全身を対比して書くのもおかしな話ですが)
全体的に真面目になりがちなテーマでしたが、私が現在夢中で習っているお茶(抹茶)と歯の関係や、料理研究家の上原まり子さんのよく噛めるレシピ、編集者さんの提案による1日のオーラルケアの流れ(お口メンテ)などを内容に入れることによって、身近なものにすることができたと思います。
また、本の内容を理解した上で実践できる「歯のアンチエイジングノート」™️も新たに開発しました。これは私が診療にあたっていると、自分の歯についてよく覚えていない人がとても多いことに気づいたため、必然性を感じて作りました。
確かに歯は本数が多いので、どこの歯をいつ、どんな治療をしたかということを忘れてしまいます。しかし、それをしっかり書き留めることで、次の治療の参考になったり、自分自身で歯の健康状態を常に把握し、予防のための行動をとることができます。
イメージをわかりやすくいうと、歯の「母子手帳」的なノートといったところでしょうか。
◆読者からの反応やメディアへの広がり。これからも歯の健康教育の機会を増やしていきたい
この本の発刊以降、ついに届けたい人のところに本が届き、反応が返ってきたと喜んでいます。待ちに待っていた「やまびこ」の返事です。テレビや雑誌で、歯とアンチエイジングの関係や世界基準のオーラルケアの発信をする機会を頂けるようになりました。
また、読者さんから感想や質問が来たり、私の友人である歯科医師のもとへ治療を希望して訪れた方が読者さんであることがわかったり、少しずつ私の声が遠くへ届き出したようで、嬉しく感じています。
特に感激したのは、大学院の恩師が「大学院で研究してきたことを、一般の人の健康のために生かせるように伝えるのは、本当に価値のあることです」と手紙でくださったことでした。
治療や研究など専門的なことを一般の人にわかりやすく伝えるのは、大切なことですが、なかなか難しいところもあります。専門家と一般の人の理解度のレベルが違うことは当たり前なので、そこに通訳のようなワンクッションが必要だと私は考えています。
専門家がわかりやすく伝えることを努力するのはもちろんのことですが、一般の人も健康のための知識を持つことが大切です。ただ残念ながら、日本では一律にそのような教育はなされていません。
歯の健康教育をしないとこの差は埋まらず、専門家のアドバイスが一般の人の健康に生かされないことになってしまいます。
歯や口は、年齢や性別ごとに注意すべきポイントが違います。一人の人でも、一生のうちに口の中はどんどん変化していくのです。
将来的には、赤ちゃん(保育園)から高校・大学での教育、そして企業などで研修をしていきたいです。年齢ごとに継続的に、一般の人が歯と口の健康をどうやって守るかを教わり、実践できるシステムを社会全体で作って、健康をサポートしていくことが目標です。
そのために、企業や学校での講演・研修を増やして、歯の健康教育の機会を増やしていきたいと思い、活動を続けています。
<著者紹介>
生澤右子 (イクザワユウコ) (著/文)
歯科医師・歯学博士。株式会社Dental Defense代表取締役、明海大学歯学部歯科麻酔科客員講師、健康経営エキスパートアドバイザー、日本歯科麻酔学会認定医、日本口臭学会・米国歯内療法学会所属。こどもはいしゃアカデミー主宰。
東京医科歯科大学歯学部・同大学院博士課程卒業。ペンシルバニア大学歯学部マイクロサージェリーコース修了。フリーランス歯科医として複数のクリニックで診療を行う。
日本のオーラルケアに世界との隔たりを感じ、株式会社Dental Defenseを設立。世界標準のオーラルケアを学ぶ講座、口臭によるハラスメント(スメハラ)を予防・撲滅するセミナーを開催。
<書誌情報>
書名:歯と口を整えるアンチエイジング~自宅で毎日できるセルフケア
https://www.hanmoto.com/bd/isbn/9784828424835
著者:生澤 右子
発売日:2023年1月24日
四六判 256ページ
定価 1,500円+税
発行:ビジネス社
ISBN:978-4-8284-2483-5
<本件に関するお問合せ先>
Email:info@dentaldefense.co.jp
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