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湖池屋が「日本のテロワールでつくる究極のポテトチップス」に挑戦する理由。「KOIKEYA FARM」プロジェクトを始動 ~湖池屋の歩みとプロジェクトのその先へ 編~

著者: 株式会社湖池屋

株式会社湖池屋は2023年12月より、新しいポテトチップスブランド「KOIKEYA FARM」を立ち上げました。湖池屋が独自に育成したじゃがいもを使って「究極のポテトチップス」を作る、前代未聞の試み。湖池屋オンラインショップで先行販売し、初日に即完売した、第一弾「KOIKEYA FARM 黄金の果肉 北海道産 帆立と昆布とオホーツクの塩」と「同 青のりの王様 すじ青のり」が、2024年1月29日からいよいよ店頭販売を開始します。これらの商品開発はどのように進められたのか。そして、本プロジェクトの最終目的地はどこなのでしょうか。




●ポテトチップス業界のイノベーター、湖池屋

1953年に創業した湖池屋は、1962年に「湖池屋ポテトチップス のり塩」を発売しました。国産ポテトチップスはそれ以前から売られていましたが、大半はホテルのバーや飲み屋などで提供される酒のつまみ。それを「庶民のおやつ」として最初に売り出したのが湖池屋なのです。


湖池屋は日本人の味覚に合わせるべく、世界でも類のなかったであろう「のり」を使ってポテトチップスを味付けました。1967年には国内で初めてポテトチップスの量産化を実現。また、じゃがいもの契約栽培を実施したのも湖池屋が国内初です。


常にポテトチップス業界のイノベーションを率先してきた湖池屋は2010年代、国産じゃがいもの旨みを活かした商品として、「湖池屋プライドポテト」「ピュアポテト(旧PURE POTATO じゃがいも心地)」「今金男しゃくポテトチップス」などを世に送り出しました。いかにして「素材本来の味」をポテトチップスで味わってもらうかに尽力してきたのです。


そんな湖池屋が、ポテトチップス新時代の幕開けを告げるべく立ち上げた新ブランドが「KOIKEYA FARM」です。



●原料部のバトンを開発部が受け取る

「黄金の果肉」は、ヨーロッパで栽培されていた品種の種芋を湖池屋が日本に持ち込み、北海道の畑で育てて収穫した湖池屋オリジナルのブランド芋です。国内品種のじゃがいもは白いものが主流ですが、「黄金の果肉」は鮮やかな黄色。加えて濃密な旨みが最大の特徴です。


ただ、ヨーロッパと日本では気候も土も違いますから、当然、育て方も違います。原料部は農家の理解と協力を得て、試行錯誤の末にようやく商品化できるだけの収量を確保することができました。


そのバトンを受け取ったのが、開発部です。原料部が世界中を探し回って見つけ出し、困難を乗り越えて収穫したじゃがいもを、最高のポテトチップスに仕上げなければならない。R&D本部 プロダクト開発部 第2課主任の石塚梓は、その重責に震えたと言います。


「原料部の苦労と農家さんたちの協力、その結晶のじゃがいもです。私たち開発部とコンセプト・パッケージを作るマーケティング部は、芋の長所を最大限に生かす商品を何としても作りあげなければなりません」



●濃厚な旨みを引き出す波型カット

一口にポテトチップスと言っても、カットの仕方はさまざまです。もっとも主流なのは平たく薄切りにスライスしたもの。その他には厚切り、波型などいくつかのバリエーションがあり、それぞれ食感が変わってきます。ただ石塚によれば、食感以外に「口の中で噛んでいる時間」も大事なのだそう。


「たとえば厚切りの『ピュアポテト』は、薄切りのものに比べて口の中で噛んでいる時間が長い。ですから、じゃがいも自体の味をしっかり堪能できるよう、あまり塩を前面に出しすぎない味作りをしています。逆に薄切りは噛んでいる時間が短く、軽快に食べられるのが特徴なので、ある程度クセのある、次々と手を伸ばしたくなるような味作りを心がけています」


「黄金の果肉」の特徴は旨みが非常に強いこと。なので、噛んだ瞬間にチップが「ホロッ」「サクッ」と崩れ、口の中に旨みがふわっと広がる波型カットがベストであるという結論に達しました。チップの高い崩壊性によって、濃密な旨みが最大限に引き出されるのです。


ただ、完成までの道のりは長いものでした。なにせ、今まで扱ったことのないじゃがいもです。どれくらいの厚みでカットするのがいいのか、揚げ温度や時間はどれくらいがベストなのか。前例が全くない中での試行錯誤です。それでもなんとか完成にこぎつけました。



●芋の旨みを引き出す塩と海苔

味付けにもこだわりました。北海道産オホーツクの塩はまろやかさが特徴であり、そこに同じく北海道産の帆立と昆布を合わせています。これにより、調味料の旨みによって芋の旨みが一層引き出される。まるで和食における煮物のような発想です。


海苔は複数種類をブレンドしていますが、中でも見た目に特徴的なのが他の海苔より長細い「すじ青のり」。「青のりの王様」と呼ばれる香りの強い海苔で、こちらも芋の旨みを後押ししています。かつて湖池屋が初めて発売したポテトチップスが「のり塩」でした。湖池屋にとって海苔には並々ならぬこだわりがあるのです。


第一弾の味付けを「オホーツクの塩」と「すじ青のり」にした理由について、石塚はこう説明します。


「旨みの強い芋だったので、味付けをあまり濃くしたくありませんでした。だからこそのシンプルな“塩”と“海苔”なのです。それでいて芋自体の旨みと喧嘩しない、相乗効果でより美味しくなるようなものを追求した結果が、昆布とすじ青のりでした。昆布はグルタミン酸の旨み、香りの強いすじ青のりは、食べた時の鼻抜けを堪能してもらいたくて」




●ネーミングとパッケージデザインに一苦労

ブランド芋の名称でありつつ商品名でもある「黄金の果肉」には、その響きに不思議な違和感があります。果物ではないのに「果肉」とはこれいかに? 実はじゃがいも業界では、じゃがいもの特徴を説明する際に「果肉」という表現を使うのですが、一般にはもちろん浸透していません。


実は、これも狙いでした。ポテトチップスの名前にしては違和感があるけれど、それがまた消費者の興味を引く。それでいて、名前自体で日本のポテトチップスには珍しい「黄金色のじゃがいも」であることを表現したかったのです。


ただ、「黄金の果肉」に決まるまでは時間がかかりました。数えきれないほどの候補を会議で何度も何度も討議し、これでいけると踏んで佐藤章社長に持って行っては、にべもなくバッサリ却下される日々。佐藤と言えば2017年、これという新商品が出せず停滞していた湖池屋が“復活”するきっかけとなったプレミアムポテトチップスの名称を、最終的に「湖池屋プライドポテト」に決めた張本人です。


その佐藤がようやくGOを出したのが「黄金の果肉」でした。


パッケージデザインは「黄金」を表現すべく、じゃがいもの外観と黄色いチップスがしっかり目立つように配置していますが、このパッケージデザインも商品名に振り回されました。決まりかけていた商品名でデザインを仮組みしても、それが変われば――つまり文字数や、漢字とカタカナの比率などが変われば――バランスがすべて崩れてしまい、いちからデザインし直しになってしまうのです。結局、商品名とパッケージデザインが確定するまでには1年近くもの時間がかかりました。



●スナック菓子を凌駕するポテトチップスを作りたい

「KOIKEYA FARM」は、湖池屋が自社でプロデュースしたオリジナルのブランド芋を、日本の土壌で育て、それに合うポテトチップスのカットや味付けを一から開発するプロジェクトです。ワインに例えるなら、湖池屋がテロワール(じゃがいもを取り巻く環境)をすべて管理する。これはチョコレート業界における新しい潮流、カカオ豆の選定からからチョコレートバーの製造までをひとつの会社が一貫して行い製品の品質を高める「Bean to Bar」の考え方にも近いものです。


そうして生まれた「黄金の果肉」は「KOIKEYA FARM」ブランドの第一弾商品にすぎません。2024 年以降も続々と別のブランド芋の登場が控えているほか、将来的には“世界最高級の芋”を使ったポテトチップスが登場する予定です。


この壮大な計画に、開発部の石塚は闘志を燃やしています。


「たとえば『湖池屋プライドポテト』は、一般の商品に比べれば高価格帯、付加価値の高い商品という位置づけですが、それでもまだ“スナック菓子”の域からは出ていません。でも “世界最高級の芋”を使ったポテトチップスは、スナック菓子を凌駕する“食事”レベルに到達したい」


スナック菓子なんて、安くて量があって味が濃ければそれでいい――という時代が、過去の日本にはありました。そのような状況に「湖池屋プライドポテト」や「ピュアポテト」といった商品で風穴を開けてきたのが湖池屋です。その湖池屋がスナック菓子の地位と概念を変える大きなチャレンジこそが「KOIKEYA FARM」。チャレンジャーとしての湖池屋の進化にこれからもご注目ください。





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