植物と対話できる未来。清水建設「温故創新の森 NOVARE」が目指す、“意味ある”未来社会の姿とは。
「喉が渇いたよ。水が飲みたいな」「日差しが強いから、日陰に移動したいよ」そんな植物のメッセージが人間に伝わる日が近づいているようです。もし庭の花や窓辺の植物の声が聞こえてきたら、私たちは「植物も生きている」ことを実感し、社会には自然への優しさがもっと広がっていくかも知れません。
こうした未来のストーリーを思い描き、新たな社会の創出に挑戦しているのが、清水建設の人財育成とイノベーションの拠点「温故創新の森 NOVARE(ノヴァーレ)」です。
今回は4月に全面運用を開始した同拠点のデジタルリーダーで、DXエバンジェリストの及川洋光に「NOVARE」はどのような未来社会を創出していくのか、そこに託された想いと具体的な取り組みについて聞いてきました。
建設業である清水建設が、イノベーション拠点をつくった理由は?
今でこそ建設各社はこぞって事業のデジタル化を進めていますが、その先鞭をつけたのが清水建設です。新型コロナウィルスの感染拡大が始まる前、2019年には既に、時代を先取りする価値を創造する「スマートイノベーションカンパニー」への進化を宣言。「中期デジタル戦略2020」で「Shimzデジタルゼネコン」を掲げ、建設業の枠を超えてイノベーションを推進することを世の中に約束し、実践してきました。
しかし、清水建設が50年後、100年後のさらに先の未来を描くためには、事業構造・技術・人財が三位一体となった一層のイノベーションが必要です。そのためには、多様なパートナーとの共創も欠かせません。こうした課題に対して、オープンイノベーションによる未来社会の共創を目指す場所として生まれたのが「温故創新の森 NOVARE」です。そこには、創業から220年、常に時代をリードする技術とサービスを提供してきた清水建設の豊富な叡智が結集しています。
「温故創新の森 NOVARE」 外観
「温故創新の森」に込められた想いは何ですか?
「温故創新」には、「温故知新〜故きを温ね新しきを知る〜」という諺の「知」を「創」に変えることで、ものづくりの原点に立ち返り先達たちの技と考え方を忘れることなくイノベーションに挑戦しようという想いが込められています。「森」は「エコシステム」を意味し、社内外の人々が企業の枠を超えて技術と知恵を出し合いながら、新たな価値を共創していきたいという願いを込めました。
「温故創新の森」を体現するように「NOVARE」は過去と未来を自由に行き来できるような5つの施設構成となっています。拠点の中核となる「NOVARE Hub」、生産革新を目指す「NOVARE Lab」、研修施設「NOVARE Academy」、歴史資料を展示する「NOVARE Archives」、二代清水喜助による当時の技を体感できる「旧渋沢邸」がそれぞれ自立かつ連携し、未来社会の共創を目指しています。一般的な施設では見られない画期的な機能や設備を備えていることも各施設の特徴です。
NOVAREでは、どのようなイノベーションが具現化されていますか?
私は「NOVARE Hub」内のオフィスで働いていますが、実は自分の席がありません。サイズも色もメーカーも違う可動式の机や椅子があちこちに置かれていて、出社すると気に入った椅子に座り、好きな机に向かいます。これは「ノーアドレス」と言って、アドレスを持たない未来の働き方を先取りしたものです。例えばミーティングの時間になると、机や椅子を自由に動かして集まることができます。この働き方を実現するために、床にはコンセントが基本的にはなく、代わりにポータブル電源を活用しています。
NOVARE Hubオフィス
また、この「ノーアドレス」環境を実現するために、 超個別空調システム「ピクセルフロー」という技術が採用されています。床面には60cm間隔でファンの吹き出し口があり、床面の温度情報とビーコンセンサーで特定した個人の位置情報、さらに温冷感の好みといった個性を考慮して、そこにいる人好みの空気を噴出し、その人が移動すると空調も追随するというものです。ピクセルフローは「デジタルツイン」というテクノロジーを採用し、デジタル空間上で目に見えない快適さを可視化してパーソナルな空調環境の調整を行っています。
こうしたイノベーションを構想するにあたって「NOVARE」が採用しているのが「バックキャスティング」という手法です。50年後、100年後のありたい姿をまず描いた上で、逆算して必要なテクノロジーや仕組みを実装します。
「ピクセルフロー」で我々がまず思い描いたのは、「建物が人に寄り添い、共に成長する」未来の姿でした。大切にしたのは、これからの建物はもっとこうだったらいいよね、という強い想いです。従来の常識や先入観は捨て、一人ひとりがもっと快適に過ごせる建物のあり方を考え抜き、必要な設備と技術をバックキャスティングで検討し、実装したというわけです。
NOVAREで目指す未来社会とは
ある印象深い出来事がありました。「NOVARE」には観葉植物がたくさんあるのですが、あるメーカーの方が「ロボットを使って植物に水やりしませんか」と提案をしてくださったのです。確かに効率化はできそうですが「それって本当に植物を大切にすることになるのだろうか」と少し違和感を感じました。それなら植物に水分センサーをつけて、水分量が減って乾いてきたら、自分のスマートフォン連絡が来るようにしたらどうだろう。植物から「及川さん、喉が渇きました」というメッセージが送られてきたら、どんなに忙しくても水を持って駆けつけて、目の前の植物にちゃんと水をあげたくなる。その上で植物が育ってCO₂を吸収してくれたら、心から自然を大切にするようなエコが実現するはずです。
このアイディアはもうすぐ実現可能なところまで来ていますが、「NOVARE」が共創したいのは、そういうストーリーにあふれた豊かな未来社会です。
「知らない間に環境マインドが育っていくビルや学校」「生命への感謝に満ちた、優しい街」が多くの人の力とイノベーションで実現するのであれば、とても意味があることだと思いませんか。「温故創新の森 NOVARE」の挑戦はまだ始まったばかりですが、50年後、100年後の未来のありたい姿をパートナーの皆さまと考えながら、オープンイノベーションで未来を共創する取り組みをますます進めていきたいですね。
(この記事は、2024年3月15日(金)に東京ビックサイト「日経メッセOnline」で行われた特別講演を再構成したものです。)
■温故創新の森 NOVARE WEBサイト
https://www.shimz.co.jp/novare/
■温故創新の森 NOVARE 公式note
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