銀行員から社長へ──会社の価値創出のため司令塔を表す「背番号10」を背負った真剣勝負
2006年に新卒で三井住友銀行に入行した田中 一基氏。法人営業や融資先の経営支援などでキャリアを積んだ後、公募でSMBCキャピタル・パートナーズ に出向。そこで経営者の覚悟に触れたことをきっかけに社長の社内公募 に応募し、2023年7月株式会社BPORTUS(ビーポータス) の代表取締役社長に就任しました。
参考記事:SMBCグループ初、公募での社長抜擢。「日本の再成長」をDXによる業務効率化で支援する新会社「BPORTUS」
「自分にはセンスがない」と打ちのめされた経験をしながらもチャンスを手繰り寄せてきた力の源は、妥協のない努力と徹底的な準備。今では「社長業が楽しくてたまらない」と話す田中氏のこれまでのキャリアを振り返りながら、仕事への想い、SMBCグループの魅力を聞きました。
徹底的に努力をしなければ価値がない──営業で味わった挫折
横浜の大学に通っていた田中。文武両道で学生生活を過ごすと決め、商学部で一番厳しいと言われる財務会計を学ぶゼミに所属します。同時に、小学1年から続けていたラグビーを継続。ラグビー部ではチームの司令塔であるスタンドオフを務めるほか、体育会役員の活動にも参加していました。
大学3年の夏、就職を見据えるなかで影響を受けたのが、信念を持って大手企業で活躍する会社員の人生を描いた漫画でした。
田中「会社という枠にとらわれず、一人の会社員として戦い続ける人生に憧れて、コンサルタントになりたいと思ったんです。コンサルタントなら、ゼミで学んでいる財務諸表や企業情報の分析も活かせると考えました」
早速、外資系コンサルティング会社のインターンシップに応募してみたものの、ことごとく不採用に。国内の企業も含めて応募を続けるなかで合格したのが三井住友銀行のインターンシップでした。
田中「2カ月ほど銀行ビジネスを疑似体験して気がついたのは、『銀行での仕事は僕がやりたいことそのものだった』ということ。お客さまの状況を分析して、戦略を提案することは、まさにコンサルタントの仕事だったのです。
また、講師を務めていた社員にも惹かれました。それまで出会った大人のなかでもレベルが違うと感じるくらい優秀で、カルチャーショックを受けました。『こんな人になれる可能性があるなら、この会社に入りたい』。それも決め手でした」
2006年に入行すると、東京都江東区の亀戸法人営業部 (当時)に配属され、地域の企業を回る飛び込み営業からキャリアをスタート。支店を異動しながら営業担当としてお客さまと向き合う6年間で、大きな挫折を味わったと振り返ります。
田中「学生時代は勉強もスポーツも頑張って、インターンシップから順調に就職もして。自分は優秀だと思っていたのですが、まったく営業成績が上がらない。自分には営業センスがない、徹底的に努力をしないと価値がないのだと痛感しました。ボコボコに打ちのめされたのですが、最初にそういった経験ができて良かったと思っています 。自分の力の限界を知ることは非常に辛い経験でしたが、この経験を通じて、仕事に対する考え方が大きく変わり、自分一人では大したことができないことを社会人になって早い段階で理解できたからです」
会社の“内側”から支援したい。公募でファンドへ出向
7年目に、融資先の経営支援を行う部署に異動。本部のプロフェッショナルなメンバーと共に経営立て直しのプロジェクトを取り仕切ることになります。まさに、入行前に思い描いていた仕事を担当することになったのです。
なかでも、4年をかけたある家具輸入業者の経営支援は、経営に必要なこと、人を動かすために自分にできることを知った印象深いプロジェクトだったと言います。
田中「どんなに戦略を考えても全てが 予定調和でうまくいくことなんてありませんから、どんどんPDCAを回していくことが重要なのだと学びました。しかも、実際に行動するのはお客さま。一歩を踏み出してもらわなければ始まりません。そのために私にできるのは、徹底的な準備。寝る間も惜しんで考えて準備するからこそ言動に誠実さが出て『やってみようか』と思っていただけると思うのです」
徹底的に努力することで自分の価値を作る──この姿勢は、自身の新たな強みを知ることにもつながりました。
田中「いろいろな人の力を借りられることが自分の強みなのかもしれないと気がつきました。それに気がついたのは、プロジェクト完了の打ち上げの場。私より圧倒的に知見がある先輩たちが協力してくれて、アドバイスをくれていたことへの感謝が込み上げて、大泣きしました。きっと、若輩者が誰よりも汗をかき、手を動かしていたから、力を貸してくれたのだと思います」
その後、管理職としての経験を経て、SMBCキャピタル・パートナーズに出向。融資先支援で感じた仕事のやりがいを、さらに“自分ごと”として感じるため公募に応募したことがきっかけでした。
田中「通常、銀行は融資先の経営支援に、債権者という立場で関わります。あくまで会社の“外側”からの支援です。けれど、自らの資金を投入し、会社の“内側”から支援する投資家の存在を知りました。自分も同じように関わってみたいと考えていたタイミングで三井住友銀行がファンドを立ち上げることになったんです。メンバーの公募があると聞き、すぐに応募しました 。その決断に迷いや不安はほとんどありませんでした。PEファンドが何をするかは、経営支援業務を通じて理解できていたので、将来のキャリア希望にも常に入っていたからこそ、すぐに行動に移せたんです。行動の速さは、チャンスを逃さないためにも重要だと考えています。」
不確実なことに挑む経営者に憧れ、グループ企業の社長に
ファンドでの仕事を通し、不確実なことに挑みながら事業を作っていく経営者の覚悟に触れた田中。会社の司令塔として「背番号10」を背負う姿に、「自分も経営者になりたい」と考えるように。そのタイミングで、行員を社内ベンチャーの社長に抜擢する社内公募が開始されます。迷いなく応募へと踏み切った田中を後押ししたのは、尊敬する先輩の言葉でした。
田中「『銀行員としてのキャリアには安定感があるが、時にはリスクを取ることで、より大きな成長と成果を得られるチャンスがある』と言われたんです。SMBCグループというしっかりとした基盤があるからこそ、挑戦することで得られるリターンが非常に大きいと感じました。こうした挑戦を支える環境が整っていることが、グループでのキャリアの魅力だと感じています。
思い通りにいかないことが起こるのは覚悟していましたし、予定調和がないことも知っています。私がやるべきことは、これまでと同じように徹底的に準備することとPDCAを高速回転させること。だから、経営者になることに不安はありませんでした」
田中が社長を務めるのは、コンビニでの払込票のペーパーレス化サービスや、請求書発行業務などのBPOサービスを提供するBPORTUS。公募に応募した当初は事業内容にはこだわっていなかった と言いますが、準備を進めるうちに「絶対に必要な事業だ」という確信を得たと話します。
田中「人手不足が加速するなかで生産性を向上するために、デジタルサービスを使いこなすための伴走支援を必要としている企業はたくさんあります。これまでの仕事を通してそれを実感していたからこそ、経営者になりたいと思ったタイミングでこの事業に出会えたことが幸運でした」
予想通り、うまくいかないことや苦労することもたくさんあると話しながらも、これまで培った強みを活かしながら自分なりのスタイルを模索しています。
田中「それぞれ事情も考え方も異なる人が集まっている会社という組織を良くするためには、コミュニケーションを惜しまずに互いの価値観を知ることが大切だと考えています。
そのうえで皆に伝えている私の方針は3つ。トライアンドエラーが許される心理的安全性を担保すること、経営層が持っている情報を積極的に開示する透明性、各自が現場で自由に判断できるための権限委譲です。社員が各現場で最善の判断ができるように情報格差を解消し、安心してチャレンジできる環境を作りたいと思っています」
真剣勝負の毎日が楽しい。80歳まで社長業を続けたい
ファンドへの出向も社長業への挑戦も、公募というチャンスを活かして実現してきたからこそ、SMBCグループというステージの魅力、懐の深さを誰よりも理解しています。
田中「私は事業を興したこともなく、ものづくりの経験も技術もなければ、営業センスもありませんでした。それでも、適切なステップを踏んで必要な要件を満たせば、リソースも資金も提供してくれて、キャリアを与えてくれる。こんなにチャレンジさせてもらえる会社はなかなかないと思います。
社長になってみて思うのは、ゼロから起業するよりも、会社としての基盤が整っている環境下で事業に専念できるのは本当に有難いな、と。もし、起業というよりも経営をやってみたいと思っているなら、グループ内でチャレンジできるほうが絶対にいい。あとは、行動を起こすかどうかです。私は、もう一度就職活動をするとしてもSMBCグループを選びます」
社長という立場になっておよそ1年。「まだまだ実力の伴わない“肩書社長”です」と言いますが、社長業が楽しくて仕方がないと笑います。
田中「ラグビーのスタンドオフと同じように、社長はチームの指揮をとり、勝利へ導く役割を担っています。経済環境や競合の状況、自社の状況を踏まえながら、どのように勝負するかを考えるのが社長の仕事です。感情的な側面と論理的な側面を組み合わせて企業の価値を創り出すことに、真剣に取り組むのが楽しいんです」
夢は、80歳まで社長業を続けること。そのために、誰もが認める成果を出すことに全力を注ぎます。
田中「試合に勝たなければ、次の試合には出られません。だから今は、BPORTUSでビジネスを成功させることに全身全霊をかけています。
このビジネスは、SMBCグループが取り組む『日本の再成長』にも貢献できると考えているんです。限られたリソースで効率的に働けるようになれば、企業が強くなります。金融機関は企業と共に発展するものですから、日本の企業が強くなればSMBCグループも成長し、ひいては日本の再成長にもつながる。だから、BPORTUSの存在価値は高いと考えています。
将来的に別の企業の経営も視野に入れていますが、銀行とタッグを組みながら、プロフェッショナルな社長としてお客さまを支えていきたいですね」
【プロフィール】※ 所属および肩書きは取材当時のものです。
株式会社BPORTUS(ビーポータス)代表取締役
田中 一基氏
2006年株式会社三井住友銀行入行。法人営業や融資先経営支援を中心にキャリアを積み、2020年からは株式会社SMBCキャピタル・パートナーズに出向し企画部長、投資第一部部長を経験。2023年7月より株式会社BPORTUSの代表取締役社長に就任。
【SMBCグループ/DX-Link】
SMBCグループはお客さまと社会の課題解決のためのソリューションを
提供するためにデジタルを活用し、外部のパートナー企業とも連携しながら、
金融・非金融の垣根なく、ニーズを先取りしたサービスを提供していくことを
目指しています。
“DX-link(ディークロスリンク)”では、 DXにおけるSMBCのビジョン、
企業のDX推進のためのソリューション、共創パートナー企業との取組、
DXの最新動向などの情報を発信し、業種や地域等の垣根を越えて、
様々な情報やサービス、企業がクロスする場としていきたいと考えています。
皆さまとともに、明日につながる新たな価値を創出できるよう、
SMBCはグループ一丸となってDXの取組を進めてまいります。
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