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人の数だけ、物語がある

想像を超えた未来はつくれる。技術者とデザイナーの共創から生まれた『FORCE CARBON』

著者: 株式会社LIXIL

LIXIL独自の技術である『FORCE CARBON』は、CFRP(炭素繊維強化樹脂)の特性を最大限に引き出しながら、建材に適用・展開するテクノロジーです。LIXIL Housing Technology 技術研究所 所長の山崎 弘之と商品開発・デザイン本部 本部長の羽賀 豊が、『FORCE CARBON』に込めた想いとこれからの可能性について語ります。


(写真)技術者とデザイナーが『FORCE CARBON』が持つ可能性についてアイデアを出し合っている様子


山崎 弘之

1973年、茨城県生まれ。LIXIL Housing Technology 技術研究所 所長、兼ビジネスインキュベーションセンター センター長。LIXILの前身であるTOSTEM株式会社へ入社後、 建材研究所にて金属加工を専門とし主にアルミの研究に従事。最近では、ほぼ全ての廃プラスチックをリサイクル可能とした循環型素材「レビア」の開発などに携わる。趣味は読書、愛犬と遊ぶこと。


羽賀 豊

2014年、LIXIL入社。ハウジングテクノロジー事業のデザイン部門責任者として活動。2021年4月よりハイエンドブランド『NODEA』を発足し、事業責任者として運営にも携わる。2023年4月より、商品開発の推進、デザイン、新規ビジネスを束ねた商品開発・デザイン本部を発足。イノベーションとデザインを事業につなげる活動を進行中。



チャレンジし続けなければブレイクスルーはない


――LIXILのR&Dセンターを統括する立場の山崎さんより、今回なぜ新しい素材への挑戦を決断したのか教えてください。


山崎:私たちは常にユニークな価値をお客様に提供しようと日々模索し続けていますが、『WAO!』と驚いてもらえるこれまでにない技術を生み出し、より快適で豊かな暮らしの実現に貢献していくためには、考え方を一度根本から見つめ直し、現状の枠にとらわれない新しい素材へチャレンジすることが必要不可欠だろうと考えました。そして検討を重ねた結果、技術研究所がたどり着いたのが、「CFRP(炭素繊維強化樹脂)」でした。


CFRPは、重量あたりの強度がアルミの5~10倍。圧倒的な比剛性と比強度を持ちながら、コストなどの面からこれまで建材への利用は難しいとされてきました。ですがもしも、この素材を建材に活用できたとしたら、今までにない新たな商品カテゴリーをつくり出せるのではないか。さらに言うと、住まい全体のありかたまで変えてしまうポテンシャルを秘めているのではないか。そんな可能性を感じ、この素材の建材利用にチャレンジすることを決断しました。

長年培ってきた高度な解析技術や評価技術など、さまざまな技術を活かし、CFRPの複合化技術『FORCE CARBON』を確立していきました。



技術者とデザイナーの共創で、ワクワクするアイデアを具現化


――技術者とデザイナーが強固に連携しながら進めているところも、『FORCE CARBON』プロジェクトの大きな特徴の1つですが、どのような相乗効果がありましたか。


山崎:新技術を開発して商品に実装していくためには、まず多くの部署を巻き込んでいく必要があります。しかし技術者だけでその提案を行うと、やはり現実的なアイデアになってしまい、共感を得られにくい場合も少なくありません。そこで今回は、社内のデザイナーと密にタッグを組んで進めることにしました。デザイナーというのは、本当に感心するくらい発想が豊かで、私たち技術者が思いもよらないようなアイデアを可視化するスキルが非常に高いのです。


とはいえ、逆にデザイナーだけで提案しても、技術の裏付けのないただの絵空事になってしまう。技術者とデザイナーが手を取り合うことで、しっかりと技術に裏打ちされた、ワクワクするような夢のある提案が可能になります。現在も『FORCE CARBON』をさらに浸透させるべく、アイデアを出し合っているところです。



暮らしをより豊かにする「極限までシンプルを追い求めたプロダクト」


――今度はLIXILの商品開発・デザイン部門を統括する立場の羽賀さんにお伺いします。商品開発において大切にしている視点を教えてください。


羽賀:プロダクトをつくり出すうえで私が意識していることは、そこに暮らす人に対して「どうすればより豊かな時間を過ごしてもらえるか」「どうすればより満足度の高い空間を提供できるか」ということです。同じフランス料理を食べるにしても、紙の皿で出されるより、器やテーブルにもこだわり、照明や雰囲気を大事にした空間で食べた方がおいしく感じますよね。


私たちが手掛けているのはそのような「背景を彩るプロダクト」です。それ自体が際立った形状をしていたり、過度に目立ったりする必要はありません。「できるかぎり不要な要素を削ぎ落とし、極限までシンプルを追い求めたプロダクトこそが、暮らしをさらに豊かなものにする」。新商品の方向性を決める際には、この指針を忘れないようにしています。



人々の創造性を高める「窓」とは?


――2021年に羽賀さんは、開口部のハイエンドブランド『NODEA』を立ち上げています。その中で2023年春に発表されたパノラマウィンドウ『SEAMLESS』には、『FORCE CARBON』の技術が応用されていると聞いています。商品開発の裏側について教えてください。


羽賀:『SEAMLESS』は、電動のパラレル&スライド開閉機構による「フラットなガラス面一構造」と、高気密・高断熱性能を兼ね備えた窓です。閉めた際にまるで一枚のガラスのように感じられる面一のガラス面をつくり出すことで、景色が文字どおり「シームレス」に美しく映り込みます。『SEAMLESS』が目指したのは、そこに暮らす人のクリエイティビティを高めるような空間です。


部屋の内側と外側が一体に感じられるような開放感を醸成するには、限りなく存在感を抑えたフレームが必要でした。しかし、そのためのフレームの細さと、雨風をしのぐ窓本来の機能を両立するには、従来のアルミでは強度が不足していました。そこで私たちが着目した素材がカーボンです。LIXIL独自の技術『FORCE CARBON』を駆使し、軽量でありながら高強度・高断熱性・高耐久性の特長を持つCFRP(炭素繊維強化樹脂)を採用しました。これにより、フレームレスと言えるほどの極細かつ凹凸のないフレームを実現しています。


新しい商品を生み出す際には、2つのアプローチがあると考えています。1つは「今すでにあるものの延長線上で改善していくやり方」、もう1つは「めざすべき姿を思い描き、それを実現するにはどのような手法が最適かを探っていくスタイル」です。『SEAMLESS』では後者のアプローチを採用しました。『SEAMLESS』がめざしたのは「新時代にふさわしい窓のありかたを探究し、提案すること」です。この目標に向かい、完成までには膨大な回数の検証を重ねましたが、さまざまな選択肢がある中で最適解を見極めることは容易ではありませんでした。メンバー全員がベクトルを合わせてプロジェクトを進行したことで、最終的には非常に完成度の高い、これまでにない至高の窓をつくり上げることができました。



これからも続く、「窓」の美しさを追い求める挑戦


――『SEAMLESS』は2024年度の『レッドドット・デザイン賞(Red Dot Design Award)』において「Best of the Best」を、さらには『グッドデザイン賞』において「グッドデザイン・ベスト100」を受賞しています。このような名だたるプロダクトデザインのアワードを受賞した意義とは、どのようなものでしょうか?


羽賀:これまで「窓」については、機能面やサイズばかりが注目されがちでした。私は、窓における美しさやデザイン性はもちろん、「窓が暮らしにどのような体験をもたらすか?」といった視点も意識して製品開発にあたっています。『SEAMLESS』は、従来の窓が持つ価値のバウンダリー(境界線)を広げることに挑戦した商品でもあります。今回、そうした私たちのプロダクトが国内にとどまらず世界的に認められたことは大変嬉しく思っています。


今回の受賞が、多くの若手技術者やデザイナーの挑戦するきっかけになればいいと期待しています。今後も窓を通して「暮らしをいかにアップグレードしていくか」「どうすれば次のステージを目指していけるか」を追求しながら、世界をリードする商品開発やものづくりに取り組んでいきます。


(写真)レッドドット・デザイン賞 授賞式の様子。左から2番目よりLIXIL Housing Technology 商品・デザイン本部 井上貴之、宮本進一、阿武晃治



技術力のない企業から、優れたデザインの商品は生まれない


――羽賀さんは『FORCE CARBON』の今後についてどのように捉えていますか? 建材業界に感じている課題とともに、自身が見据える未来について教えてください。


羽賀:私は以前から建材業界の課題の1つは、進化のスピードが遅いことだと感じていました。新たな技術や素材の開発は簡単ではありません。だからこそ、『FORCE CARBON』でCFRPのさまざまな特性を生かすことで、建材の可能性をさらに広げたいと考えています。それにより住まいの自由度が上がり、将来的には洋服を選ぶような感覚で、ユーザーに多くの選択肢を提供できるようになるでしょう。


技術力のない企業から、いいデザインの商品が生まれることはありません。デザイナーがどれだけ素晴らしいデザインを思いついても、それを商品として世に出せる技術がなければ絵に描いた餅と同じです。優れた技術とデザイン性の2つが揃うことで初めてイノベーションが実現できると私は信じています。これからも『FORCE CARBON』という技術とデザイナーの発想力を高次元で融合させていくことで、ユーザーの想像を超える商品を生み出し続けていきます。



つくりたいのは、想像を超えた未来


――すでにいくつかの商品に実装され、今後もさまざまな展開が期待できる『FORCE CARBON』。最後に山崎さんに、この新技術のめざす目標についてお伺いします。


山崎:人が想像できる範囲というのは、あくまで現状の改善レベルに留まってしまいます。私たちがこの『FORCE CARBON』でつくろうとしているのは、そのさらに先にある、想像を超えた未来です。想像を超えた未来とは、つまり、これまでは不可能と思われていたことが可能となる未来のこと。


もともとCFRPの建材利用も不可能と考えられてきましたが、私たちは技術の力でそれを可能にしました。不可能を可能にするのは技術。そして、その技術を生み出せるのは私たち技術者だ。そんな強い自負と使命感を持ちながら、さまざまな可能性を持つ『FORCE CARBON』とともに、無限に広がる想像を超えた未来の実現に向かってこれからも一歩ずつ進んでいきたいと考えています。

※FORCE CARBONの詳細についてはこちらをご覧ください。インタビューの全文も掲載されています。


LIXILでは、「世界中の誰もが願う、豊かで快適な住まいの実現」というパーパス(存在意義)の達成に向け、常に新しいことにチャレンジしています。これまでの枠にとらわれない斬新な発想、そしてさまざまなバックグラウンドを持つ従業員の多様な視点や協業者とのコラボレーションから生まれる新たな価値-このようなことを大切にし、イノベーションを創発していくことで暮らしの未来を創造していきます。

LIXILは今後も、私たちの行動指針LIXIL Behaviorsの一つにある「実験し、学ぶ」企業文化を醸成し、“やってみよう”と仲間が背中を押してくれる環境を整えてまいります。

https://www.lixil.co.jp/corporate/innovation/



About LIXIL

LIXILは、世界中の誰もが願う豊かで快適な住まいを実現するために、日々の暮らしの課題を解決する先進的なトイレ、お風呂、キッチンなどの水まわり製品と窓、ドア、インテリア、エクステリアなどの建材製品を開発、提供しています。ものづくりの伝統を礎に、INAX、GROHE、American Standard、TOSTEMをはじめとする数々の製品ブランドを通して、世界をリードする技術やイノベーションで、人びとのより良い暮らしに貢献しています。現在約53,000人の従業員を擁し、世界150カ国以上で事業を展開するLIXILは、生活者の視点に立った製品を提供することで、毎日世界で10億人以上の人びとの暮らしを支えています。

株式会社LIXIL(証券コード: 5938)は、2024年3月期に1兆4,832億円の連結売上高を計上しています。

LIXILグローバルサイト:

https://www.lixil.com/jp/




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