もち麦嫌いなZ世代×70年の伝統技術で開発!白米派を魅了する新発想のもち麦製品
2016年~2019年にかけて、もち麦は健康食品としてブームを巻き起こしました。食物繊維が豊富で、ダイエットに効果的だと注目を集めたのです。しかし、多くの消費者は独特の臭いが気になるために、離脱する人も現れました。この課題に直面したはくばくは、品種改良に取り組みました。
従来品種は、大麦特有の強い香気成分を多く含んでおり、これが第1次ブーム時に消費者が感じた「においの違和感」の原因でした。アメリカの育種会社と共同で、約4年の歳月をかけた品種改良を実施し、100通り以上の試験を重ねました。最終的に3品種から絞り込みを始め、理想的な品種にたどり着きました。新品種は香気成分が白米により近づき、大麦特有の強い臭いが大幅に軽減されました。
この品種改良により、もち麦はより食べやすくなりました。この企業努力は市場でも評価されました。その結果、かつての離脱者が戻り、市場は再び成長軌道に乗ったのです。第二次もち麦ブームは加速し、2024年の家庭用市場は前年比120%の成長を記録しました。特に8月単月では144%と力強い伸びを見せています(昨年対比4~9月の比較)。
さらに、新規層を開拓するため、2023年3月1日、株式会社はくばく(以下、はくばく)は「白米好きのためのもち麦」を発売しました。この商品は、もち麦が苦手な人でも白米のように食べられる"米粒状のもち麦"として開発されました。開発を担当したのは、入社5年目の若手社員、本多智栄子(当時24歳)。自身ももち麦嫌いだったという本多が、どのようにしてこの画期的な商品を生み出したのか、その開発秘話に迫ります。
「正直に言うと、私、もち麦が苦手だったんです」
「もち麦の見た目と匂いが苦手でした」と語る本多。
新潟県出身で米どころで育ったこともあり、麦ごはんにはあまり馴染みがなかったそうです。「給食でカレーの日だけ出るごはんのイメージでした。家族も麦ごはんを好まなかったんです。」と本多は当時を振り返ります。
「もち麦の特長を消す?そんな逆転の発想から始まりました」
はくばくでは、2018年のもち麦ブーム以降は売上が落ち着き、新たな商品開発の必要性を感じていました。そこで、本多に与えられたミッションは「もち麦の課題を解決した商品開発」。
もち麦は、食物繊維が豊富で健康に良いというだけでなく、そのもちもち・プチプチとした食感が特長として、多くの人に愛されてきました。しかし本多は、自身の経験から「もち麦の特長を消して勝負する」という斬新なアプローチを選びました。「一般的なもち麦のプチプチとした食感は、お米と比べると食べ応えがあります。でも、白米のようにさらっと食べられるものもあったら、きっと今まで敬遠していた人にも受け入れられるんじゃないかって。そう思う反面、最初は自分でも、これを提案して大丈夫なのかと不安でした」。役員や社長も参加する社内の大規模な試食会で試作品を提案したところ、反応は予想外のものでした。「『これはいける』という言葉をいただいた時は、本当に嬉しかったです」。
「この粒が割れないように。現場の方々とたくさん向き合った1年半でした」
開発期間は通常の1年から1年半に延長され、様々な苦労がありました。「一番の壁は、切断と磨きの工程でしたね。切断し、お米のように磨き上げる工程で粒が割れてしまう。でも白さを出そうとすると、時間がかかりすぎてしまうなど、そのバランスに本当に苦労しました」。
特に、職人技が欠かせない部分では、本多が工場のオペレーターと開発チームの間に立ち、細かな調整を重ね、試行錯誤の連続。ラボでの3ヶ月の試作期間を経て、実機試験は5回実施。各工程でサンプルを取り、データを細かく分析し、製造条件を少しずつ改良していきました。「現場の方から『もち麦は削るだけでもおいしいのに、なぜここまでやるの?』って言われたこともありました。私にはどうしても譲れない想いがありました。白米派の人こそ、食べて欲しかったんです」。この強い想いに現場の方々はたくさん向き合ってくれたといいます。「1年弱工場にいて、オペレーターとして機械を動かしていた経験があったたからこそ、現場の皆さんの気持ちも分かったし、こちらの想いも伝えやすかったです」。その結果、品質と生産効率のバランスが取れた、新しい形のもち麦が完成したのです。
「70年前の技術との出会い。今も昔も変わらない『おいしく食べて欲しい想い』」
今回の商品開発で使用された技術は、実は70年前に開発された切断機を原点としています。戦後、麦飯は「黒くて貧しいもの」というイメージが根強くありました。白米を食べる人が増える中、はくばくは「より美味しく、お米と同じように麦を食べてもらいたい」という想いから、独自の切断機を開発。麦の中央にある黒い線(黒条線)が、当時の「貧しいもの」のイメージでした。この黒条線を取り除くため、麦を線に沿って半分に切り、さらに磨く技術を確立。以来70年、この技術は主にうるち性の大麦に使われてきました。本多は「うるち性の米粒麦はあったのになぜもち性にはないんだろう」と、疑問を持っていました。しかし、これには理由があったのです。
もち性の大麦は、粘り気が強いアミロペクチン(デンプンの一種)の含有比率が高いため、米粒麦の製造過程で必要な熱を加える工程で粒同士が貼りついてしまいます。
「そのため、これまでの米粒麦の加工はもち性の大麦には難しいとされていました。」
この課題に対し、本多は70年前からの切断技術に新しい工夫を加えました。切断と磨きの工程で、粒が割れないよう丁寧に調整を重ね、白さと形状を両立させる製法を確立したのです。「切断機自体は70年前とほとんど変わっていません。外観は小型化されて作業性は向上していますが、中の構造は同じなんです。大切なのは、その使い方のノウハウです」と本多。このように、はくばくの歴史ある技術と現代のニーズを結びつけることで、「白米好きのためのもち麦」が誕生しました。「かつては麦飯のマイナスイメージを払拭するために開発された技術が、今ではより美味しく食べてもらうために活かされている。技術の本質は変わっていないのに、時代とともに新しい価値を生み出せることが面白いですね」と本多は語ります。
「開発者だと知らずに買ってくれて白米派の姉。それがとれも嬉しかったです」
「白米好きのためのもち麦」は、従来のもち麦の概念を覆す挑戦的な商品。世界各地から集めた数十種類もの品種を検討し、白米に馴染む品種を採用しています。あえてもち麦特有のプチプチ・もちもち食感をなくし、白米のような白さと食感を追求するために、麦を磨く技術をアップグレードし、麦の臭いまでも軽減することに成功しました。
本多は「新潟出身というのもあり、実家では白米しか食卓に並ぶことはなかったんです。だからこそ、白米派の気持ちがよくわかります。今回の新商品は白米が大好きな私も罪悪感をあまり感じることなく、白米のようにたくさん食べられる商品設計にしました」と語ります。
その想いが、思いがけない形で身近な人に届いていたのです。本多の姉が、妹が開発したとは知らずに商品を購入していました。「私と同じ白米派の姉が、糖質は気になるけど健康のことも考えたいと思っていた時期に、白米に馴染む見た目にこだわりを感じて美味しいお米に混ぜても違和感がないんじゃないかと思って購入したと聞いています。後日、姉から『はくばくのあの新商品良いよね』と連絡がきました。私が開発したとは伝えていなかったので、正直な感想が聞けて、本当に嬉しかったです。」本多は、自分が目指していた“白米派の人にも受け入れられる商品”という狙いが的中した瞬間だったといいます。さらに、この商品をきっかけにもち麦や雑穀米など白米以外にも興味を持ち始めたそうです。
本多の想いは、市場の数字にも明確に表れています。「白米好きのためのもち麦」の売上は、2024年4月から9月までの半年間で、前年同期比166%という大きな成長を記録。この伸びは、商品開発時の「白米派の気持ちをつかむ」という狙いが、確かな手応えとなって返ってきていることを示しています。従来のもち麦市場では届かなかった層にまで、着実に浸透を広げているのです。
「『やってみろし』の一言で挑戦できました」
若くしてリーダーの地位に就き、革新的な商品開発を成功させた本多。
その背景には、製造現場での経験や新潟県出身ならではの白米への深い理解、さらには、挑戦を後押しする会社の文化がありました。はくばくでは「穀物の新たな価値開発」を目指し、今後も若手社員たちによる斬新な商品開発が期待されます。
プロフィール
市場戦略本部 開発部 製品開発一課
本多 智栄子
2020年入社。研修後、7月から中央工場白麦米ユニットに配属。製造ライン7か月、包装ライン2か月の計9か月間、ラインオペレーターの業務。
2021年に製品開発課配属精麦、麦茶カテゴリーを担当。2022年は製品開発一課精麦、雑穀カテゴリーを担当。同年10月に精麦カテゴリーリーダーに就任。現在は精麦カテゴリーの他にもレトルト商品も担当する。
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