「“日本のものづくり”を世界へ発信できる場でありたい」若手クリエイターのミラノ出展を支援するプロジェクト代表の想い
次世代の“日本のものづくり”を支えるクリエイターらが、世界でひと花咲かせるためのプロジェクト『bud brand(バッドブランド)』。産学連携により、チャンスメイクや支援、場の提供をおこなっています。 日本のデザインを世界へ発信できる場として、2016年よりミラノデザインウィークへの出展を支援しつづけています。
「つぼみ(bud)+綺麗に咲かせる(brand)」=『bud brand』
今回、お話を伺ったのは一般社団法人 日本 DESIGN BANK 代表の梶原 清悟氏。ブランドのアイデンティティーから出展に関わる企画、デザイン、運営に至るまで、『bud brand』プロジェクト全般に携わっています。
■ これからの“日本のものづくり”を支える若きクリエイターの挑戦を、社会が応援する場をつくりたい
Q.『bud brand』プロジェクトを設立したきっかけを教えてください。
「自分自身、毎年ミラノサローネに足を運びながら、世界の新しいデザインから刺激を得ている内に、インプットするだけでなく自分たちも世界へアウトプットしていけないだろうかと考えるようになりました。さらに、これからの日本を支える若きクリエイターを、社会が応援する場づくりにこそ意義があるのではないかと考えるようになった事がきっかけです。
現代は、ネット社会により精査されない情報が氾濫しています。せっかくの優れた才能も、大量の情報に埋もれてしまう。それと同時に、日本の“ものづくりの未来“には、技術はもちろん0→1の新しい発想やアイディアも問われてくる。それを担う彼らに必要なのは、クリエイティブをリアルに発信して評価される場だと考えました。
- 自分のデザインが世の中からどう評価されるのか
- 評価するマーケットや企業のニーズの本質がどこにあるのか
- 独りよがりのデザインではない問題を解決出来るデザインとは何なのか
デザインをまなぶ学生や若きクリエイター達には、プロジェクトに参加することで、これらを追求できるようなクリエイターになって欲しいという願いもありました。」
■ 言葉の壁を越えてデザインの意図が伝わった時、互いに笑顔になる瞬間がうれしい
Q.ミラノデザインウィークへの出展において、直面した困難があれば教えてください。
「ひとつは作品選考です。『bud brand』では毎年、ミラノデザインウィークへ出展する作品を広く募集しています。学生・社会人に関わらず、デザインを志す若きクリエイター達から集まった作品を、選考→ブラッシュアップへのアドバイス→プロダクト化→出展に至るまで見ています。
プロジェクトメンバーの全員が「本当に良いものを選ぼう」「可能性のある作品を見出そう」と真剣に取り組むあまり、選考や評価がシビアになりすぎる部分はあります。実は、公募を始めてから2年連続でグランプリ作品を出していません。『グランプリがないのは如何なものか』という議論も当然しましたが、妥協したくない気持ちが勝りました。」
「イタリア・ミラノでの言葉の壁については、現地に通訳さんが常時2名いるため、それほど困難に感じた事はありません。ただ、日本の文化や感覚的な部分を説明するときは、理解してもらうまでに時間がかかることがあります。しかし、言葉だけでなく作品そのもののデザインの意図がつたわった時に、互いに笑顔になる瞬間がうれしくて、積極的にジェスチャーを交えながら作品説明をしています。」
ミラノデザインウィーク 会場での様子
「課題は、資金面です。毎年、プロジェクトを実現し続けていくために運営費用をどう工面するか。設立から現在まで、さまざまな企業や個人・学校から協賛していただき、運営を続けています。
最近では、世界の小さな住まい方を発信している『YADOKARI』さん、住宅工務店・不動産業界の専門新聞『新建ハウジング』など、ご縁のある外部メディアにも協賛のご協力をいただいています。スポンサードしていただける皆さまに感謝しつつ、足りない分は関係各社で手出ししながらミラノデザインウィークへの出展支援を継続しています。」
■ “一期一会”。世界最大規模の会場には、その場所・その時間にしかない出会いがある
Q.若きクリエイターにとって、ミラノデザインウィークに作品出展するという事は、どのような未来につながるのでしょうか?
「今は、オンラインで世界中とかんたんに繋がることができる時代です。海外展示会の中でも世界最大規模であるミラノデザインウィークの会場では、“一期一会”のようにその場所・その時間にしかない出会いがあります。会場で作品を目にする方々の反応や表情は、今後の作品づくりの財産になります。世界中の人々の価値観に触れ、多くの刺激を受け取ることは、クリエイターにとって、とても価値のあることだと考えます。」
Q.過去の参加者は、ミラノでの経験をどのように活かしていますか?
「参加学生からは、その後の就職活動に活かせていると聞きます。社会人の参加者の中には、「イタリアの学校で講演をして欲しい」「いますぐ販売して欲しい」などの声をかけられた方々もいます。
- 経歴として“ミラノデザインウィーク参加”を紹介できる
- ミラノデザインウィーク出展により自身を持つことができる
上記2点は、参加者のみなさんにとても好意的に受け止めていただいています。
参加後はそれぞれ別々の道を歩んでいますが、その後たずさわっているプロジェクトや、プロダクトへの取り組み方について近況報告をもらうと、逆にこちらがやる気をもらうことも多く、良い刺激を受けています。」
■ 日本のデザイン文化を新たな産業の柱に。これから花を咲かせるクリエイターと共に世界に発信していきたい
Q.『bud brand』としての今後のビジョンを教えてください
「日本が誇る車産業やアニメ産業のように、日本のデザイン文化を新たな産業の柱にしたいですね。
また、日本には古くからモノを大切に長く使ったり、より使いやすく改良を重ねる文化があります。日本では当たり前のことが、海外では新鮮に受け止められることもあります。できれば、そんな日本のものづくりの想いを込めたデザインを世界に発信していきたいと考えています。」
Q.最後に、『bud brand』プロジェクトの活動に対してメッセージがあればお願いします。
「『bud brand』は、つぼみのように“まだ花を咲かせていないクリエイター”を世界に発信する支援をおこなっています。まだまだ運営内容に限りはありますが、このプロジェクトが続いていき、デザインの勉強をしている学生やいずれ独立を考えているクリエイターの皆さんにとって、日本から世界へと羽ばたくきっかけになれば幸いです。」
日本の自動車産業、ジャパニメーション、クールジャパン...世界で認められてきた日本の文化たちは、“繊細さ”や“丁寧さ”だけでは終わらない、日本ならではの“ものづくり”に対する姿勢や気概などへ向けて、信頼が寄せられてきた結果なのではないでしょうか。
奇しくも今年は、コロナ禍における学生からの作品応募が多数を占めたとのこと。どのような世情にあっても、“日本のものづくり”を世界へ発信できる場でありたい、デザインを志す“つぼみ”達を先導できる存在でありたいと、梶原さんは語ります。『bud brand』プロジェクトの未来を通して、日本のデザイン文化にかける想いが見えたインタビューとなりました。
梶原 清悟
一般社団法人 日本 DESIGN BANK / 代表理事
福岡の地元工務店を独立後、2011年10月に住宅を軸とした
設計事務所 FANFARE Co., Ltd.を設立。
現在では総合デザイン事務所としてワンストップな提案でエンドユーザーだけでなく、企業やメーカーのブランディングや商品開発など、デザインからプロデュースまで幅広く行うクリエイティブカンパニーの代表として従事。
2018年12月、日本のデザインを世界へ発信すること、日本の次世代クリエイターを育成することの2点を主軸に、
一般社団法人 日本 DESIGN BANKを設立。
■ bud brand 公式HP:
■ プレスリリース
『コロナ禍の情勢変化を受け『bud brand AWARD 2021』に例年を上回る作品応募。ミラノデザインウィーク2021に向け審査中!』
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