【書籍執筆苦労記】コンサル業界が分かりづら過ぎて、執筆難易度はいばらの道 | 肩こりと腰痛との死闘
「コンサルティング業界への理解を深める一冊を届けたい」
そんな思いから生まれたのが、『コンサルティング業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』です。この書籍は、私、大谷内の現役コンサルタントとしての経験と、コンサルティングメディア『コンサルのあんなこと、こんなこと』の情報も活用しながら執筆した実用書となります。タイトルが示す通り、コンサルティング業界の仕組みやビジネスモデルをわかりやすく図解し、コンサルに関わり合いがない方にもしっかり理解できるよう、幅広い層に役立つ内容を目指しました。 しかし、一冊の書籍を形にするまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。今回は、この書籍がどのようにして生まれたのか、企画の発端から執筆、そして校了に至るまでのプロセスを振り返りながら、この本に込めた思いや得られた学びを皆さまにお伝えできればと思います。
ファーストコンタクトは無視から始まってしまった書籍プロジェクト
本書の執筆が始まるきっかけとなったのは、就職活動時や転職時によく目にする業界本「図解即戦力」シリーズで知られる技術評論社から届いた一通のメールでした。そしてそのメールに一切気付かず返信をしていなかったところ、出版社から熱心にもお電話いただき同プロジェクトがスタートすることとなります。このお電話が無ければ、同書籍を弊社から出すことはなかったと思い、その節は大変申し訳ない気分です。
近年コンサルティング業界への注目が高まり、その仕組みをわかりやすく解説する書籍を作りたいとの提案を受けたことがキッカケです。依頼を受けた当初、私は日々のコンサル業務や会社運営に追われており、一度は断る方向で考えていたものの、自社が運営するコンサル専門メディア「コンサルのあんなこと、こんなこと」、これまで蓄積されたデータや研修コンテンツ、そして社内メンバーの協力スタンスを考えると、十分に執筆可能ではないかと判断するに至りました。
執筆を決意するにあたり、単に書籍を完成させることだけでなく、執筆によって得られるメリット、及びデメリットについても勿論冷静に考え、メリットが大きいと判断し決断に至っています。
無論、書籍を発刊することによるインナーおよびアウターブランディングがメリットではありますが、デメリットはやはり執筆に係る工数と労力です。
執筆の労力を懸念する著者は多いようで、打ち合わせの際に出版社からインタビュー形式で話を進め、編集部でまとめていただく形で提案を受けましたが、私が品質を重視するあまり、この案を採用するには至りませんでした。書きながら整理する要素が多いと判断し、ドラフト作成を自身で手掛ける方法を選び、出版社には字数および明瞭さ含めうまく纏めていただく形で進行することにしました。
ところが、後にこの選択が執筆をさらに難航させる要因になったのです。「字数と明瞭さ」を出版社に求めておきながら、職業病のように初稿から徹底的に品質を追求し、自分自身で手を入れすぎることで労力が倍増してしまったのです。
その結果、本書の執筆原価は約1,000万円規模に達したと見積もっています。もしインタビュー形式を採用していれば、労力もコストも1/3から1/2程度に削減できたかもしれません。しかし、この徹底的な作り込みが、最終的に本書の完成度を高める要因になったと確信しています。
こうした執筆決断の背景には、コンサルティング業界を取り巻く社会的な変化も影響しています。ビジネス環境が複雑化する中で、企業が外部の知見に頼る傾向はますます強まっており、コンサルタントへの需要が急増している一方で、業界を初めて知る若手や初心者に向けたわかりやすい入門書は不足していました。このような状況下で、コンサルティング業界の仕組みやビジネスモデルを包括的に伝える本が求められていることを改めて実感しました。また、コンサル業界の全体像を整理し、わかりやすく伝えることで、業界理解の促進に貢献できる意義を感じ、最終的に執筆を決意した次第です。
品質管理と効率化を意識したプロジェクトマネジメント
執筆を進めるにあたり、まず取り掛かったのは、全体の進行を管理するためのプロジェクト管理ファイルの作成です。テーマごとの進捗状況や執筆概要、サブテーマ、リサーチの有無、出版社とのやり取りを細かく記録し、スケジュールの精度を高めるための基盤を整えました。
本書は2ページに1テーマでまとめるという形式が求められており、このルールに従って各テーマを整理しながら進めていきました。内容をただ思いつくまま書き続けるのではなく、全体の統一感を保ちながらテーマごとの要点を簡潔にまとめることが重要でした。 執筆の過程で直面した最大の課題は、「初心者向けのわかりやすさ」と「専門的な深み」をどう両立させるかという点でした。
特に、コンサルティング業界に初めて触れる学生や若手社会人を主な読者層として設定していたため、専門用語やフレームワークの多用を避け、平易な表現を心掛ける必要がありました。
一方で、業界の本質を損なわずに正確な情報を提供するためには、どこまで詳細に踏み込むべきかを見極める必要があり、このバランスを取るため、必要に応じて新たなテーマを追加し、章構成や内容を何度もアジャイル型で見直しました。 また、効率的な進行を支えるために、コミュニケーション管理にも注力しました。執筆原稿はエクセル形式のスプレッドシートで管理し、チーム間でのリアルタイムな共有を可能にしました。さらに、初稿から校了に至るまでの間、数え切れないほどの赤字修正が発生しましたが、各フェーズで詳細なレビューを重ねることで、内容の完成度を高めることに成功し、これらの取り組みによって、限られた制約の中でも一貫性のある高品質な原稿を仕上げることができたのです。
校了までは肩こりと腰痛との闘い
執筆を進める中で、特に印象に残っているのは、校了直前に直面した文字数制限との戦いでした。本書は2ページ1テーマという構成で統一されているため、情報量が増えれば文字数が超過し、全体のバランスを崩す結果につながります。特に重要なテーマでは、これを削ることで本当に読者に価値が伝わるのかと自問自答を繰り返し、必要最低限の内容に絞り込むための試行錯誤が続きました。
この過程で、情報を伝えたいだけではなく、伝わる形にすることの難しさと重要性を改めて実感しました。
次に悩んだのは、ターゲットを考える上でもどの程度のランクの学生かという点で、それが上記の全体のバランスの最適化にも繋がってきます。結果的に落ち着いたのは、「この本を読んでコンサル業界を理解できていない大学生はコンサルに向いていない」という概念的なもので落ち着きました。大学生にとって難しいのは当然で、就活生でもコンサル業界を理解しておらず響きだけで受けているような方も多々おりますが、地頭や言語化処理能力は新卒時から求められるものなので、ちゃんと能力ある大学生には自分なりで解釈はできるような次元で執筆したつもりです。
3つ目として大変だったことが、全体の整合性や順序です。正直後半まで章レベルで順序は悩んでいましたし、1テーマでもこの内容はこっちの章の方が良いのではと悩みました。客観的に考えつつも自分では回答が出ず、インターン生や、若手コンサルや様々な方の見解を伺いました。
そして、整合性を担保するとなると、一気通貫してみる必要もあり、全部を印刷して総じてチェックして説明の順列や情報の不一致や用語の統一性チェックなどを走らせました。このご時世に紙作業でしたが、これが一番精度が高く、効率的でもありましたが、これまで蓄積してきた眼精疲労と肩こりと腰痛との闘いに突入しながら、マッサージ屋に通うという日々でした。
「わかりやすく伝えることの難しさ」や「情報を選び抜く重要性」といった点は読者の皆さまにぜひ届けたいメッセージでもあります。
さいごに | 20年近くいても分かりづらいコンサル業界
執筆を終え、そして増刷の機会をいただいたことで、多くの読者に本書を手に取っていただけていることに感謝の気持ちを抱いています。改めて本書を振り返ると、完成度に一定の自負を持つ一方で、さらに多くの実例や最新の業界動向を盛り込み、次の機会にはより充実した内容を目指したいと考えています。
本書を通じて、コンサルティング業界の全体像を理解するだけでなく、その業界での仕事の進め方や思考法に触れ、読者の皆さまが自分自身のキャリアや日々の仕事を考えるきっかけにしていただければ幸いです。
また、コンサルティングに直接関わりのない方々にも、問題解決の視点やプロジェクトマネジメントの手法を学び、日常のビジネスシーンで活かせる内容となっています。
分かりづらいコンサル業界に対して、全体を俯瞰して分かりやすく説明するのは骨の折れることであり、自分自身も今回の執筆を通して理解が足りないテーマも多々ありました。
有識者にアプローチの上執筆したテーマや、かなりのリサーチの上執筆したテーマもあり、苦労して執筆した一番のメリットは私自身の全体理解かもしれません。3章で悩みについて書いたものの、結局一番は「コンサル業界が分かりにく過ぎる」ということで、それを表現することに苦労させられた点でしょうか。
今後も、本書をきっかけに、より多くの方々がコンサルティング業界への理解を深め、その可能性を実感していただけることを願っています。そして、この一冊が、読者の皆さまの成長や挑戦を後押しする存在となることを心から期待しています。
お蔭様で本書を読んでいただいた学生や業界未経験の方からの求人応募や、コンサルに頼みたいがどう頼んだら良いか分からないクライアント様や、コンサルに今頼んでいるものの上手くいっていないので何とかしたいというクライアント様からからお問い合わせいただく機会も増えております。
書籍情報
図解即戦力『コンサルティング業界のしくみとビジネスがこれ1冊でしっかりわかる教科書』
コンサルティング業界の全貌がこの一冊で明確に!
本書は、コンサルティング業界の基礎知識から業務の流れ、必要なスキル、キャリアパスまでを初心者にもわかりやすい図解で徹底解説。
主要コンサルファームの特徴や働き方の実態をはじめ、業界ならではの魅力や課題、さらには変容する業界の未来展望までを詳しく紹介しています。
コンサル業界を目指す学生や転職希望者、新卒社員からビジネスパーソンまで、あらゆる読者にとって必携の一冊です。
著者:コダワリ・ビジネス・コンサルティング株式会社
発行:技術評論社
定価:本体1,760円(税込)
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