男が女として生活していくまで物語

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そんな愛知に生まれ育っていればよかったのかもしれないが、

私の出身地は熊本県球磨郡。 



ニューハーフの仕事をしだしてから地元に帰った時、私の生き方や、

仕事に対しての理解は当然ながら示されなかった。



いや、むしろ叔父さんには「お前が女でいるなら地元には戻ってくるな!」

と、あからさまな暴言を吐かれてしまったし、クチも聞いてもらえなかった。


大好きだったおばあちゃんは「いつか男に戻るとやろ?仕事だけんしとっとやろ?」

と、涙ながらに何度も訪ねてきた。



小学1年生の頃からよく遊んでいイトコのお母さん(おばさん)には、

「お前にはお前の生き方があるかもしれないけど、女としてのお前は認められない」

と、直接は言われなかったものの、後日送られた手紙にそう書いてあった。




…正直ショックだった。





名古屋では普通に女性として通用していただけに、

有頂天になっていたのかもしれない。


一気に現実に突き落とされたし、実の家族となると甘くはないのだろう。


辛く苦しい経験ではあるが、この経験が私を強くしてくれた。






日本全体で見ると、九州ほどではないにしろ、

まだまだニューハーフに対する差別や偏見は残っている。



「男で生まれたのに、わざわざ女になるなんて意味がわからない、理解できない」

「ぶっちゃけ気持ち悪い…」と感じる人は大勢いる。




当事者でないから理解できないのは当然、仕方がないとは思うが、

それにしても世間のオカマ、ニューハーフに対する差別はちょっと異常に見える



彼ら(差別する側)にとって私達はいわゆる「変態」であり、

「差別する価値がある存在」なのかもしれない。



差別しなきゃ彼らと同類だと思われてしまうかもしれない・・・

否定しなきゃ次は自分が差別されるかも…



みんながバカにして笑っているから、私もバカにしてやろう。 みたいな



これは90年代からのテレビの影響もあるだろう。

上岡龍太郎さんのテレビ番組もその原因かもしれないな(苦笑)


テレビでは面白おかしく取り上げるが、それが自分たちの家族であったり、

会社の同僚、会社の部下、面接に来た人間であると話は別になる。 



ニューハーフはテレビの世界の人間であり、自分たちの身近にいてはいけないのだ

身近に存在してると周囲に悟られてはいけないのだ。


ましてや、彼らが自分と同じ家族だったり、

自分と同じ職場の人間であってはならないのだ。 全力で阻止する必要がある


ただ、表立って差別したり、クビにすると人権問題に発展するので、

何かと理由を付けて差別するのである。




……この言い方は度が過ぎかもしれないが、ちょとした偏見が積み重なって

大きな差別につながることは実際にある。



例えば、前例が無いから、まだ戸籍が男である以上は男扱いせざるを得ない

女子社員たちの理解を得られない、お客さんの迷惑になる、

施設が整っていないなどなど・・・・ 



そういう理由で会社では男じゃないとダメだと

上司や面接官から言われることはあるだろう。



…ごもっとな理由だとは思う。




たかがイチ従業員のために、会社のルールや施設をゴロッと

変える必要があるかもしれないし、何も事情を知らないお客さんや取引先は

「変な人がいる」と驚くかもしれないし、取引にも影響が出るかもしれない


できることならそんな面倒事は起こしたくないし、

よその会社を当たってくれとも言いたくなるでしょう。



1つ1つは小さなことで、差別とはいえない些細なことでも、

それが積み重なって大きな差別となっている。


それが今の日本の現実。




ハッキリ言って、そんな差別対象である生き方をすき好んで選び、

これからもニューハーフとして生きつづけようとしている私は、

どこか狂っているのかもしれない。 やっぱり変人なのかもしれない。



…しかし、しかしだ。



「男として不自由なく幸せに生きていきたいのか?」

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