男が女として生活していくまで物語

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手術費は入院代、手術代、のど仏切除オプションを付けて、

トータルで70万円だったが、現金で全額支払った。


「そんな金よくあったな!」 



と思われるかもしれないが、そもそもトヨタ自動車に入社した理由は

「手術代を稼ぐため」である。



家賃光熱費がかからないトヨタの寮生活は、食費を削って、遊びを削って、

服を買わなければ、毎月12~15万円ほど貯まるのだ。



娯楽もなく、服も買えない生活は貧乏人そのものだったが、

「手術代のためなら…」と、ガマンできた。 



喉の手術が終わり、お盆休みが終わり、仕事に復帰すると首に包帯を巻き、

一言も喋らない従業員に職場の仲間は驚いていた。



しかし、わたしは何も説明しなかった。

喋れなかったのも理由の1つだけど、いちいち説明してMTFだとか

性同一性障害だと相手にバレるのが嫌だったからだ。



後で知ったことなんだが、トヨタ自動車では性同一性障害の人は

そう珍しくないらしく、職場の上司は私の言動で気づいていたそうだ(苦笑)


これは仕事を辞めてから元同僚に聞かされた。




長年トヨタに勤務している人は私のような人間に慣れていたり、

ある程度の理解はあるようだ。



でも、みんながみんなそうではなく、中には嫌がる人、無視する人、

関わろうとしない人だっている。




それが私とタッグを組むことになった先輩だったのはチト辛かった。




その先輩は職場に2人しかいない女性のうちの一人で、

勤務開始当初はちょくちょく話したりしていたのだが、

私が喉の手術をしたあたりから徐々に話さなくなっていった。


睾丸摘出手術をした2008年9月頃はもう、挨拶しても無視、

話しかけても無視。


とにかく顔も合わせてくれないほどに無視を貫き通していた。



当時はなぜなのかよくわからなかったのだが、

今思うに、女性っぽく振る舞うようになった私の姿に違和感や

嫌悪を感じていたのかもしれない。


要するにこれが“差別”というヤツだ。




女性らしくなると、男性は優しく扱ってくれるようになって行ったが、

女性の中には差別する人もいるようだ。







「これが女として生きるってことか・・・・」










【今夜はパーリナイ! からの どんだけ~!】



2008年12月1日から、名古屋市錦3丁目のニューハーフショークラブ

「AQUA」で働くことになった

2008年11月20日まではトヨタの期間従業員だったのに。


自分でもこの展開にビビっている。 展開の速さに付いてこれていない。



2008年8月に喉の手術、9月に睾丸摘出手術、そして11月に豊胸手術。


トヨタに勤務しながら休みを利用して手術していった。

ただ、何度も手術するとお金が底を付いてくる。

トヨタの収入だけじゃヤバイのだ。


トヨタの休日は土日。毎週2連休ある。 休んでばかりだと金も使うし、

金を使うとますます手術代も減る。


「毎週土日は休みだし、1日くらいバイト入れてもいいだろう。」


そう思っていたらmixiから変な怪しいメッセージが来ていた。



「ホストやりませんか?」




「・・・またホストか。」




愛知県ともなると、駅前でホストのスカウトにあうのはそう珍しくないし、

私も過去に駅前で「ホストやりませんか?」って勧誘に会ったことがあった。


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