自閉症スペクトラムの私が生きる世界(2)
私が、パニックになるのは、自分の思っていることが、うまく伝えられないからです。
そのことで、大切な人に、嫌われるかもしれないと思うからです。
なにか、悪いことをしてしまったような気になるからです。
押し寄せる不安と恐怖に押しつぶされるように感じるからです。
疲れてしまった時も、自分の身体の状態や、疲れたことがわからず、パニックになります。
いつも、出かけるときは大変でした。
まず、靴をはくことが苦痛でした。
なぜなら、左右対称のものがそこにあるからです。
そして、その左右対称のものに、1つずつ足を入れて履かないといけないからです。
それは、自分の中で、何かが壊れることでした。
美しい左右対称の絵を壊すことでもありました。
その絵を壊さないように、一緒に、同時に足を入れたかったのです。
でも、そんなことできませんでした。
どうしても、片足ずつ、靴に足を入れることしかできないのです。
途端に、泣き叫ぶことになります。
そんな私でしたが・・・
ある日、玄関にあった小さな箱の上に座って靴を履いた時に、
偶然にも、両足を同時に靴に入れることができました。
その時は、全然モヤモヤしなかったし、苦しくありませんでした。
泣き叫ぶことなく、靴を履いた私を観ていた母は、
私には、小さな椅子に座って靴を履くことが必要だと思ったそうです。
母の気付きのおかげで、私は、パニックの1つを乗り越えることができました。
この靴のことや、出かける時のパニックは、
自閉傾向の子どもたちの多くが持っている感覚かもしれません。
私が出会った何人もの、自閉症の子どものお母さんが、出かける時のパニックに悩んでいました。
靴へのこだわりは、いろんなものがあると思います。
出かけるときのパニックがある子どもには、どうか靴のことを聴いたり、配慮してあげてください。
また、同じものに、必要以上にこだわることがあります。
そのせいで、パニックになります。
部屋の中の何かが、動いていると、気になってしかたありません。
いつものところに、いつものものがないと不安でしかたなくなるからです。
その中でも、窓際にあった植物のことが気になってしかたありませんでした。
私の中では、お日様の当たる、一番いい場所があって、
母が掃除をして、その植物が動いていたら、納得できず泣いていました。
パニックになるくらい、私の中では、大事なことでした。
何故、泣いているのかわからない母は、ほとほと困っていたそうですが、
ある日、床に植物の植木鉢の後がマジックで書いてあったそうです(笑)。
それで、この場所が動くことを、私が嫌がっているのだとわかったそうです。
このマジック事件は、さすがに大変だったろうと思います。
植物に対する思いも、こだわりも、とても強いものがあり、
家から学校にもっていった花が枯れたり、落ちたりすると
悲しくて、悲しくて、泣き続けたそうです。
そのために、何度か、母に迎えに来てもらっています。
その記憶があるからか、今でも、切り花が、少し苦手です。
同じものを食べたがる私もいました。
それは、いろんな匂いや、食感にも、敏感でしたが、
料理をつくる母の感情を、母がつくった料理の中に感じてしまって、
食べるのが辛いことがあったからです。
そのために、人工的というか、同じように機械で作られた、
市販のパンを好んで食べるような時期がありました。
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