【世界一可愛いおばあちゃんになったる宣言!】Baby Angel ♡ 赤ちゃん天使がくれた贈り物

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医者もそうとう慣れているのだろう。

局部麻酔だから、医者と助手の会話が聴こえる。

たとえ何週間目かの小さな命であったとしても

人の体からひとつの命を取り出すという、大変なことをしている間、

彼らはなんと笑いながら、これから行くバケーションの話をしていた。


医者
今度の休み、フランスにいこうかな
看護婦
あ、いいわよね。美術館巡りとか
医者
パリより南フランスの方へ行こうと思ってさ



なんでそんな話を手術中にするわけ?

あなたたちにとって私はなんなの?

私に注意を払ってくれているの??



彼らにとっては、機械的作業で、私はただの「物体」でしかない。


そんなふうにしか感じられなかった。


私は徹底的に打ちのめされ、自分の存在価値がなくなったように想えた。


病院からの帰り道のことを私は記憶していない。

魂が抜けた亡霊のごとく、漂うように歩いていたような氣がする。



私を責める人は誰もいなかった。

むしろ誰かに責められたら、自分の感情をぶちまけられたかもしれない。


しかし、私を責める人も慰める人もなかった。

私を責めていたのは私だけだった。




ひとり戻った部屋の中で、私は呆然としていたが

ふとスケッチブックを手にした。


私は絵を描き始めた。


命が巡り、再び、戻ってきてくれることを祈りながら。


それは私にとって、懺悔であり、レクイエムであり、癒しであった。



肉体的、精神的にもぼろぼろになっていた

その時の私にできることは、それしかなかった。


何度も涙をぬぐいながら、私は描いた。



         


きっとこの命は、私のもとに戻って来てくれる。


大丈夫。大丈夫。


こみ上げて来る罪悪感を涙で流しながら、自分に言い聞かせた。


描いているうちに、次第に心が透明になっていった。


大丈夫。大丈夫。


またいつかきっと・・・




それからの私は、恋人より家族が欲しいという想いにかられるようになった。


そしてそれは実現し、実際に二人の可愛い子どもに恵まれた。





その可愛い娘が、今、若かりし頃の私と同じ立場にある。


違いは、彼女は自分の国にいて、支えてくれる家族や友人があること。

それは大きな違いかもしれない。


しかし、宿った命をどうするのか、という問題の大きさにかわりはない。


私にとっては、自分の身に降りかかってきた時より辛かった。

自分の辛さであれば自分がコントロールできる。

しかし、娘の辛さは私のものでない以上、私にはどうすることもできない。

娘に自分の過去を話すことは正直、怖かったし辛かったが、シェアした。

それが私の娘に対して出来るせめてものことだった。



時に赤ちゃん天使は、お母さんになる女性に、

自分をもっと大切にして!

というメッセージをくれるために、一時的にお腹に宿ることもある。


今はそう理解できる。


しかし、私の娘の決断を、私がするわけにはいかない。


彼女は、どうしても宿った命を殺すことなどできない、と。

私としても、堕ろすことを勧めたいわけではない。


それがどんなに肉体的、精神的に辛いか、ということは

私が身をもって知っていることだから。


しかし、妊娠前からの娘の体調と、将来のことなど

いろいろ考えると、何が一番いい選択なのだろう、と想わざるを得なかった。


私にとっては、娘が幸せでいてくれることが、一番だから。


それは母親なら誰でも願うことだろう。


でも・・・



親が願う子どもの幸せ ってなんなんだろう?



こうあって欲しい、と願うのは、それは親の都合だ。


もちろん、多くの親は人生の経験から、

「こうしたほうが絶対にいい!」という自分なりの価値観がある。

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