第13話 ルカとの出会い【少し不思議な力を持った双子の姉妹が、600ドルとアメリカまでの片道切符だけを持って、"人生をかけた実験の旅"に出たおはなし】
真っ黒に焼けた顔に大きな目。
深く被った帽子からは、
鼻筋が通っていて彫りの深いキレイな顔がのぞいていた。
やっと日本人の旅人に会えた!
私はというと、彼のそっけない態度も気にならないくらい、
とにかく久しぶりの日本人に興奮していた。
もうだれでもいい!なんて失礼な話だけれど、
とにかく日本人と話したかった。
とりあえず会話をつなぐ。
彼はそう言うと、私の着ているパーカーと靴をジロリと見た。
何だかまだキレイなのが少し恥ずかしくなる。
彼の服は大分年季が入っている。というか、もうかなりボロボロだ。
かなりガチな旅人なんだろう。
えっと、何しにクスコに来たんですか?
なんとなくした当り障りのないその質問。
しかし、それはもしかしたら前兆だったのかもしれない。
彼の口から思わぬことばが出たのだ。
何でかマチュピチュだけは行こうと思って。
俺、携帯もパソコンも本も何も持ってなくて、
どう行くか知らないんですよ。
その途端自分が今まさにマチュピチュ行きのチケット売り場に行こうとしていたのを思い出した。
ーマチュピチュに一人で行かないで。
今朝のなっちゃんのことばがよぎる。
ー絶対タイミングが来るから。それに乗って!
えっ?あれ?これってまさか…。
でも、”そのタイミング”ってこんなに早く来るの!?
それは宿を出て1時間も経っていない出来事だった。
でも私のカバンには、確かにマチュピチュ行きの情報が全部入っている。
彼は、今日で旅が一年目とも言っていた。
重なる偶然。
久しぶりに”前兆”に出会ったような気がした。
鼓動が早くなる。
じゃあ俺もチケット一緒に買いに行っていいですか?
私は何だかワクワクしていた。
なっちゃんの予言が、当たったのかどうなのかはよく分からない。
だけれどこの面白い流れに思い切り流されたくなった。
また、逆らえない波が私をさらって行くような、そんな感覚がやってきた。
いつもなら戸惑いそうなそんな言葉も、私の口から迷いなく出ていた。
彼はそれを聞くと、よく日に焼けた顔でニカッと笑った。
無愛想な彼の、笑顔はなかなか可愛らしかった。
ーマチュピチュからが、まぁちゃんの転機になるよ!
なっちゃんの謎の大予言が聞こえてくる。
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