「やってみせ、いって聞かせて、させてみて・・・」というお話 職人パパが、娘と難関私立小受験に挑戦した話 第4話
小学校受験の科目に、
「ペーパー」というジャンルがある。
つまり、プリントを使ったテスト。
小学生以上だと、ふつうに受けているテストにいちばん近いので、
親にとっては、指導しやすい印象を受ける。
ところが、どっこい!!
その内容の広さは、無限大!
算数的な数のあつかい、図形的な知能(立体もふくむ)、
理科的な知識
季節の一般常識
昔話の常識 などなど。
●お日様がここにあると、どの陰が正しいでしょう?
●これは、海の魚でしょうか? 川の魚でしょうか?
●「かぐや姫」は何から生まれたでしょう?
・・・「簡単だな!」とパパ。
だけど
●「親ゆび姫」に出てくる動物は?
●この花は 大きくなったら、どの野菜ができるでしょう?
●この幼虫は、”さなぎ”になると、どれでしょう?
・・・となると、「むむ、どっちだ?!」という顔のまま、トイレに行くパパ。
算数的な数のあつかいも、
数字は、使わない、というか、使えない。
幼稚園児は、数字を知らない前提なので。
なので、3+2、みたいなことを・・・
「うさぎさんが、みかん3個持っていました。
りすさんに、みかん2個をもらうと、全部で何個ですか?
合ってている絵に、○をつけましょう。」
とお話で伝えて、
5個のみかんが並んでいる絵に○をつけたら、正解になる。
単純な足し算は、序の口。
「りんご1個は、みかん2個と同じ重さです。
メロン1個は、りんご3個と同じ重さです。
メロン1個は、みかん何個分ですか?」
と、ふつう、小学3~4年生あたりで習うような「比」の問題を、
6個を導き出さなければ、ならない。
ヒアリングだけで理解して、答えるのは、
大人でも、「ええ?」となるような感覚になる。
ちょっとでも、「ポケ・・」っとしていたら、
「???」となるのだ。
理解力ももちろんだが、集中力も試されている。
図形の問題といえば、
「やかん」のような絵を見せて、
「上から見た絵を描きましょう」とか、
「鏡に映した絵を描きましょう」とかというのもあれば、
「四方からの観察」とも呼ばれるテーマだ。
重ね図形といって、
ふたつの図形を重ねるとどうなるのか?
を見極める問題もある。
一見、簡単そうに聞える内容だけど、
よく似た複雑な図形同士が重なっていると、もう、全部同じに見えてしまい、
大人のほうが、ギブアップしてしまうことも。
「これ、ミスプリなんじゃないかぁ~?」と、首をかしげるパパ。
「これだよぉ~。ほら、ここが違うよ!」と、あ~ちゃん。
・・・というのは、よくあること。
「回転推理」というのは、
いわゆる線対称、点対称の理解。
ただ、この概念を幼稚園児に伝えるには、
具体的に話さなければならないわけで・・・。
折り紙のように、折ったら、どうなる?
ハンコのように、押したらどうなる?
時計の針のように、ぐるりとまわったら、どうなる?
「観覧車」というのも、定番のテーマ。
たぬきさんの2つ前に、うさぎさんが乗っていて、
たぬきさんの3つ後ろに、くまさんが乗ります。
観覧車のかごは、全部10個です。
くまさんと、うさぎさんの間は、いくつのかごがありますか?
みたいな。
こういう問題は、
もう、実際にやってみるのが、いちばん速い。
パパは、実際に観覧車を作ったり、
時計を作ってやってみせて、「ほら、なぁ~!」と。
やってみせ、
いって聞かせて、
させてみて・・・
褒めてやらねば 人は動かじ
山本五十六 (元帥・海軍大将・連合艦隊司令長官)
もう、リビングには、空き箱で作られた、工作物があふれた。
空き箱を捨てようとすると、
「取っておいて!」と、パパにもあ~ちゃんにも、止められ、
空き箱の山も廊下の端にできあがった。
本番試験の当日。
あ~ちゃんは、「パパとやった折り紙を折って考える問題が、出たんだよ。
たぶん、合っていると思うんだよね~。うふふ」と。
試験は、放送される問題を聞きながら、答えるので、
あ~ちゃんが言っていることの真偽がわからない。
問題用紙も解答用紙も、配られるわけではないので、永遠の謎。
翌年の「過去問」問題集が出るのを待って、
真偽を確かめるしかないのだが、
それすら、学校は問題を公表しないところも多いので、
入学試験を受けた子どもから聞き出したことを統合して、出版されるのだとか。
その出版は、翌年の夏ごろなので、
その時には、あ~ちゃんは、小学1年生の夏休みなわけで、
もう、入学試験のことなど、すっかり忘れていた。だから、謎のまま。
まだ、合格発表の前に、
「理解を作るために、
いっしょに、作ったり、実験したのは、
ほんとうに、いい時間だった。
それだけで、
充分に、受験に挑戦した意味がある」とパパ。
すでに、満足げな様子に、
「いやいや、そうだけど。そうなんだけど、
わたしは、やっぱり、合格がほしい・・・」と心のなかで、つぶやいた。
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