【第六話】『旅支度』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
「道は繋がってるんだな!」
そう思ったのを覚えている。
この時の僕は本当にアホだった…。
確かに道は繋がっている。
でも、真っ直ぐな訳がない。
ずっと遠くから見れば、どんな曲がり角だって、ほとんど真っ直ぐに見える。
全くの無知だった…。
しかし僕は、自分の歩くルートを見て、少し感動していた。
山梨、長野を越えて、新潟、そして日本海まで、自分の足で見る景色が楽しみだった。
ネット調べによると、
人は、25㎞くらいが一日で歩ける限界らしい。
僕は定規を使って、何となく距離を測ってみた。
5㎝が7個。
「7日間で日本海に行ける!」
やはり僕はアホだった…。
Googlemapで調べれば、簡単に距離を出せるのに、定規を使って距離を測った。
前述したように、僕には道が真っ直ぐに見えている。
直線距離しか測っていない。
実際の距離は遥かに長いことに気付いていなかった…。
決行は、一週間後の10月14日。
自分の限界に挑戦する、相模湖駅から、日本海までの一人歩き旅。
不思議なもので、何も出来ない状態だったのに、
一つ目標が決まると、物凄い力が湧いてくる。
自分でも驚くほどの行動力を発揮した。
出発まで一週間、色んなお店に行き、必要だと思うものを揃え、
本や雑誌、ネットで、情報を集め、全力で準備をした。
「ちゃんとした地図を買おう!」
本屋に行って地図を見るが、種類があり過ぎて、どれを選んでいいのか分からない。
そしてアウトドアショップで、店員さんに聞いてみた。
「日本海まで歩き旅するんですけど、どんな地図がいいですか?」
店員さんは明らかに戸惑っていた…。
僕は、
アウトドア=旅
だと思っていた。
確かに、そういった部分はある。
しかし、普通の人は、キャンプをするなら車や電車でキャンプ場に行くし、
登山をするなら、車や電車で登山口まで行く。
その場所へ行くまでの道は、アウトドアでも何でもなく、ただの道なのだ。
店員さんも、キャンプのやり方や登山のやり方は詳しいが、
そこに辿り着くまでの道を歩くやり方は、知らなかった。
「歩いて日本海まで行くんですか…?」
驚いた感じではなく、呆れたような、見下したような感じで、
「こいつ、絶対にアホだ…」
という雰囲気MAXで聞いてきた。
「そうです!歩いて行きます!」
「道は繋がってますから!」
店員さんは、諦めたようにこう言った。
「歩き旅はよく分からないけど、
地図だったらツーリング用のものがいいんじゃないかな?」
「道の駅とかも載ってるし。」
「ありがとうございます!」
アウトドアショップの店員さんが言うなら間違いない。
僕はツーリング用の地図を買った。
しかしこの選択が、更なる自分のバカさ加減を思い知ることになるとは、まだ想像もしていない…。
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