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『明日 死んでもらうために、今日1日だけ生きてもらう』 ~小さな命を抱きしめたお話~ 

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ミルクのあげ方など教えてもらいました。

(ネコの赤ちゃんは、

 自分で排泄する力がないのです)

 


帰りには、ホームセンターで

ネコ用のミルクを買いました。


 

「……寒くしたらアカンねんて」

 


ちょうど桜が咲く直前の季節、

まだ肌寒い日が続いています。



ペットボトルを湯たんぽ代わりにして、

ダンボールの中にタオルを敷き詰め、

赤ちゃんたちの寝床にしました。

 


「ミルクは3時間おきに……」



病院で教わったとおりに、

ミルクをあげました。

 


なかなか飲んでくれなくて、

心配になりましたが、夫婦交代で

昼も晩もミルクを上げました。



「明日まで生きてもらわんと、

 こっちはキモチワルイねん……」


 

 翌日“処分”してもらうために……



 行政の手でしかるべく

 “殺して”もらうために……

 


その日 一日だけ、僕は必死に

ネコの赤ちゃんたちに生きてもらいました。


 


そうやって、夜が明けました。



「やった!! 

 これで、保健所に連れていける」



「しんどい一日だったけど、

 これで解放される!!!!」




眠たい目をこすりながら、

朝日のなか、ネコの赤ちゃんたちを

保健所へ連れて行こうとしました。



ダンボールの中で、

彼らはすやすやと眠っています。


 

「…………」



そっと触れると、

柔らかさと温かさが伝わってきます。



「一日だけやったけど、

 色んなこと学ばせてもらったわ。

 ありがとう」




 たった一日だけの命。



 今日、死ぬためだけに生かされた命。



複雑な気持ちでしたが、

保健所に連れて行く以外の

方法はありませんでした。



どう考えても、

その選択が最善でした。

 


「ごめんな。

 うちは全員 ネコがキライやねん」



そう言って、


彼らの入ったダンボールを抱え、

家の玄関からクルマへ向かいました。



そして、そのまま彼らは…………




 






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「ノマドワーカー」ならぬ「農マドワーカー」です。 地元の田んぼで無農薬のお米づくりをする傍ら、IT関連のお仕事をしています。

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みんなの読んで良かった!

読んで良かった

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Takeshi Hamanaka

きっと、子猫に情が移ってしまったのでしょうね。私も基本的に猫は苦手ですが、世話をしているうちに気が変わるかもしれません。子猫は可愛いし。また、徳を積むとはこういう事なのかも知れませんね。

萩原 慶一郎

私はその、猫を受ける側の仕事をしています。というか。携わっています。
こんな優しい『命の重みを感じることのできる』方が増えたら、殺処分も被害も少なくなるだろうなぁと。

徳永 智樹

心えぐられ、心癒されました。
素敵なお話をありがとうございます。
辻林夫妻のお人柄がにじみ出ています。

健 藤田

自分も猫を隣の使用感がない家?の庭で拾いました。保健所に持っていくと殺処分されるという事実は知っていたので、即里親を探そうということになりましたが、世話をしてみると自分の子になってほしいなぁと自然に思うようになりました。今ではまだ6ヶ月。早いですが忘れかけていた懐かしい思い出がよみがえりました。ありがとうございました。

藤江 幸代

久々に心に響く素晴らしいお話を読ませて貰いました。ありがとう(^-^)
素敵なご夫婦ですね

80人の
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