『明日 死んでもらうために、今日1日だけ生きてもらう』 ~小さな命を抱きしめたお話~ 

2 / 4 ページ

ミルクのあげ方など教えてもらいました。

(ネコの赤ちゃんは、

 自分で排泄する力がないのです)

 


帰りには、ホームセンターで

ネコ用のミルクを買いました。


 

「……寒くしたらアカンねんて」

 


ちょうど桜が咲く直前の季節、

まだ肌寒い日が続いています。



ペットボトルを湯たんぽ代わりにして、

ダンボールの中にタオルを敷き詰め、

赤ちゃんたちの寝床にしました。

 


「ミルクは3時間おきに……」



病院で教わったとおりに、

ミルクをあげました。

 


なかなか飲んでくれなくて、

心配になりましたが、夫婦交代で

昼も晩もミルクを上げました。



「明日まで生きてもらわんと、

 こっちはキモチワルイねん……」


 

 翌日“処分”してもらうために……



 行政の手でしかるべく

 “殺して”もらうために……

 


その日 一日だけ、僕は必死に

ネコの赤ちゃんたちに生きてもらいました。


 


そうやって、夜が明けました。



「やった!! 

 これで、保健所に連れていける」



「しんどい一日だったけど、

 これで解放される!!!!」




眠たい目をこすりながら、

朝日のなか、ネコの赤ちゃんたちを

保健所へ連れて行こうとしました。



ダンボールの中で、

彼らはすやすやと眠っています。


 

「…………」



そっと触れると、

柔らかさと温かさが伝わってきます。



「一日だけやったけど、

 色んなこと学ばせてもらったわ。

 ありがとう」




 たった一日だけの命。



 今日、死ぬためだけに生かされた命。



複雑な気持ちでしたが、

保健所に連れて行く以外の

方法はありませんでした。



どう考えても、

その選択が最善でした。

 


「ごめんな。

 うちは全員 ネコがキライやねん」



そう言って、


彼らの入ったダンボールを抱え、

家の玄関からクルマへ向かいました。



そして、そのまま彼らは…………




 






著者の辻林 秀一さんに人生相談を申込む

著者の辻林 秀一さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。