【第14話】『人の望みか、自分の意志か。』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
満室じゃ仕方ないので、付近の宿を探してみると、
ルートインの向かいにも宿がある。
しかも、こっちはかなり安い。
僕は、ここに決めていた。
そして、今日も瀕死寸前で宿に辿り着いた。
ほとんど休憩をしなかったから、
もう夜ご飯も買いに行く気力も体力も無い。
灯りは点いてる。
よっしゃ、やっと休める!
「すみませーん!」
ガラガラと引き戸を開け、声をかけた。
「はい!」
奥の方からおじさんが出て来た。
玄関の下駄箱はたくさん空いている。
「今日、泊まりたいんですけど、部屋空いてますか?」
分かりきった質問をした。
「………。」
「今日は満室です。すみません。」
それはそれは何とも面倒臭そうにそう答えた。
「嘘だろー!!!!」
と叫びたくなったが、
満室って言われちゃったら、反論のしようがない。
「そうですか…ありがとうございます。」
と言って、戸を閉めた。
「絶対嘘だろーっっっっっつ!!!!」
きっと全身びしょ濡れの僕を見て、面倒臭い客だと思ったのだろう。
※日曜日だったから、本当に満室だったのかも…。
「けっ!こんなとこ、こっちから願い下げだぜっ!!」
僕はムカッとした。
いや、かなりムカッとした。
しかし、ムカッとしている場合じゃない。
「宿が無いっ!!!!」
ピンチである。
今日はずっと雨なのに、宿が無いのである。
テントも無いのである。
大ピンチなのである。
とりあえず、少しでも可能性を信じようと思い、
前日に満室だった向かいのルートインに
ダメ元で部屋の空きがあるか聞いてみることにした。
この際、ツインでもダブルでもいい。
何やらフロントのお姉さん2人は、部屋状況の画面を見ながら相談をしている。
「ただ、他のお部屋より少し狭くなってしまうのですが…」
「泊まれれば何でもいいです!!」
「昨日調べたら満室だったので、絶対空いてないと思っていたんですけど…」
「一部屋だけ空いてました!」
「よかったです。」
いやいや、よかったのは僕ですよ。
ルートインのお姉さんは優しかった。
癒しだ!!!
いや、それより
奇跡だ!
奇跡が起きた!
満室ってなってたのに、今日も一部屋だけ空いていた。
神様はまた僕を助けてくれた。
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