【第1話】〜生きようと決めて1年間闘い続けたら、過去がすべて今に繋がっていた話〜

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前話: 【最終話】『僕の宝物』〜死に場所を探して11日間歩き続けたら、どんなものよりも大切な宝物を見付けた話〜
著者: 坂内 秀洋


会社に僕の居場所なんて、もうとっくに無いということだろう。




それでも、ちゃんとケジメはつけたい。




僕は、お世話になった上司や先輩、後輩に電話を掛け、退職することを伝えた。




みんな口を揃えて、




「残念だ。」




と言ってくれた。




「一日だけでも戻って来て!」




と言ってくれる人もいた。




でも僕は、もう戻れない。




というか、戻らない。




温かい言葉をかけてくれたのは心から嬉しかったが、


人格を変えてしまう程の出来事を経験した僕は、


同じ場所に戻ってはいけない気がしていた。




どうしても、会社に戻ってまた同じ仕事をしている自分が想像出来なかったし、


上手く言葉に出来ないが、僕には何かもっと違った大切なことをやるべきだと思った。




仕事をしていた時、担当していたお客さんにこんなことを言われたことがある。



「あなたは、もっと大きなことをやる人間よ。」


「初めて会った時に、あなたは何かが違うと思ったの。」


「人のために生きなさい。」


「そのために今はたくさん勉強するの。」


「この仕事に留まっていたらダメよ。」




こんなことを言ってくれた。




その方は、僕が担当していた400名以上のお客さんの中で、


恐らく一番実績を残している方で、業界でもトップクラスの人だった。




忙しい方だったので、直接お会いしたのは数回程しかなかったが、


驚く程、僕を絶賛してくれた。




もの凄く嬉しかった。




めちゃくちゃ稼いでるのに、本人は、




「前は自分のためにたくさんお金を稼いでたけど、私が使うお金はそんなに必要じゃないの。」


「今は、誰かのためにお金を稼いでる感じかな。」




と僕には信じられない金額の募金をしたりしていた。




僕が出逢ってきた人とは、明らかに違った考えを持っている人だった。





この方は、旦那さんが末期のガンだということも話してくれた。




それなのにも関わらず、



「そういう運命なんだから、ちゃんと受け止めないとね!」



と笑顔で言っていたのが今でも印象に残っている。

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