全てが崩壊した電話

著者: 高田 雅俊

何度も電話がかかってきていた。。。


あまりにも何度も電話がかかってくるので、いよいよ


「何かあったのかな?」


そんなのんきな気持ちで電話に出た。


席を外すのも面倒だったので、飲み会の席で

その場で電話に出た。


もしもし?
親父
「まー」か、やっと繋がった


この時、親父からの電話の背後で

すすり泣く声が聞こえている事に気づいた。


聞き覚えのある声だったので、瞬時にわかった。


泣いてるのは母さんだ。


途端に、何も聞いていないのに、

とんでもなく悪い事が起きている事を直感した。


そして親父が続ける。


親父
「よし(一番下の弟)が首吊った。。。
えっ?


思考が停止した。


同時に、時間の流れが限りなく遅くなったように感じ、

時間も止まったように感じた。


少なくとも、時間が流れていたのだけど

親父の一言を聞いた瞬間に、自分だけが取り残されたような感覚になった。


親父
今、病院で蘇生してもらってるから
急いで帰ってきてくれ。
・・・わかった。


そうして電話を切った。


社長
どうしたの?大丈夫?


どんな表情をしていたのか、自分にはわからない。


だが、心配して声をかけてくれた社長や周りのメンバーに

何て言って説明したら良いのかがわからなかった。


あ〜、ちょっとかなりヤバイ事が起きてて。。。
え〜、どうしよう。。。


自分が想像もしない事が起こると

どうしていいかわからない事を初めて痛感した。


自分にとって、とんでもない事が起きているのに

こんな時にも


「こんな事言ったら心配されるんじゃないか?」

「あまり心配かけずに報告する言い回しはあるか?」


そんな事が頭をよぎっていた。


なんか、うちの弟が首吊ったみたいで。
ひとまず実家に帰ります。


これが絞り出す事ができた限界の説明だった。


なんのひねりもないし、芸もない、そんな一言だ。


まだ、起きた出来事を受け入れられず

処理もできていなかった。


なぜか苦笑いで、必死にヤバイ状況を

軽減しようと体が反応していた。

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