④マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話

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「・・・・・・」




一つの裁判でも結審するのに5年10年かかるのもうなづけます。


フィリピンで一番多い罪が「殺人」「強盗」「レイプ」と重罪が殆どです。


それほどフィリピンは重罪犯が多く存在ます。私は人生の中でこれほどの多くの殺人者と一緒に用をたしたのは初めての経験でした。




公判前手続きはある程度済ませていたので冒頭陳述から始まりました。




「罪状、海賊行為。認めますか?」




「いえ、被告人は船には一切触っていません。したがって海賊行為はありません」




裁判は静かにスタートしました。




ガマ社長とビジネスパートナーである会長とで船を使ってマグロビジネスをスタートさせた。


しかし一年経っても一向にマグロビジネスが始まらないことに腹を立てた会長が借金の形に船を差し押さえた。


多額の投資をしたのにも関わらず、何もビジネスが進行しない事でやむなく船を差し押さえたとの菊池さんサイドの心証を得ようとの作戦でありました。


フィリピン独特のナマリがありますが、とてもきれいな英語で裁判が進められるので私としてはとても状況がつかみやすかったです。




「だいたい船は港から一歩も出ていない、それを海賊行為というのはおかしい」



「こちらは船の使用権を主張しているのであり、仕事上のトラブルで船を差し押さえただけだ」




「そもそもお金だけせしめて逃げようという気ではないか?詐欺の疑いがある」




こちら側の弁護士は国際ライセンスを持つ渉外弁護士、マニラの一等地にオフィスを構え、企業の案件なども数多くこなしているバリバリの弁護士です。


そんなバリバリの弁護士が依頼人を守れなかったことでプライドの高いフィリピン人気質は相当頭に来ていました。




どっちが被疑者だかわからないくらい原告者を攻めたてます。


原告者は船の登記上の人物、ガマ社長に名前を貸しているだけの人物です。当然まともな質疑が出来るわけでは無く、しどろもどろしています。




「それでは原告側の証人尋問に入ります。」




ガマ社長が証人台に立ち右手を上げ「嘘偽りなきよう」と、宣告をしました。




「それではガマ社長、あなたはそもそも船の資金を受け取りながらなぜ一年もビジネスをスタートさせなかったですか?」




「いや、色々トラブルがあり、思うようにはかどりませんでした」




「その一年間、出資して頂いたお金は何に使いましたか?」




「・・・・・・・冷蔵庫とか従業員の給料とか」




「ほう、冷凍庫や従業員の給料とかですか?船に関わるお金は一切使っていなかったということですか?ここに船舶用のダイナモなど領収書がありますが、これは関係ないという事ですか?」




「いえ、船にも使いました・・」




「それはおかしいですね、船や冷凍庫用にオーナーがお金を払ったのならこの船は事実上オーナーの物、それを勝手に海賊行為などいうのなら整合性が付きませんね」




「あっ・・あの・・・」




どんどん追いつめられているガマ社長、そしてとうとう苦し紛れにボロを出し始めました。




「じっ、実はこのお金は会長から借りたお金です。返済期限はマグロビジネスをスタートしてから払うつもりです。」




「では、借金の形に船を差し押さえるのは当然の権利ですよね」




さすが一流の弁護士、裁判を傍聴しているこちらも気持ちがスカッとするほどの追い込みようです。もしかしたら2~3か月で菊池さんを解放させることも可能かもしれません。


しかし、ガマ社長もそうやすやすと船は引き渡せません。裁判の引き延ばしを考えているようです。




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