④マグロ詐欺を繰り返していた詐欺師集団と戦った話
「私が会長に借金をした事は確かだが、船の所有権とはなんら関係の無い事、船のダイナモも菊池さんが差し押さえた船とは別の船に使用している。私は何隻も船を所有しています」
「では、会長がお金を出してオーナーとなった船は菊池さんが差し押さえた船だと証明出来ればいいのですね。裁判長、ここで会長と一緒に船を見てガマ社長からビジネス話を聞いていた日本人を証人としてお呼びしています」
裁判長に促され私も証人台に立ちました。
証人台に立った私は検察側の質問に対し・・
「ガマ社長は立派な方です。とてもまじめな日本人だと思います。」
「確かにビジネスの話は聞きました。」
「しかし、船を特定するような話は聞いていません!!」
白髪のチリチリ頭でずい分年寄りに見える裁判長、例えるならモーガンフリーマンといった感じの印象でしょうか。今まで毅然とした態度で裁判を進行していましたが、私の発言で「お前はどっちの証言者だ?」と言いたげな顔をして突然頭を抱え始めました。
お昼の休憩をはさみ午後からは証人尋問の続きが始まります。
満足に打ち合わせが出来なかった菊池さんが憤慨したように私に詰め寄ります。
「なんで、ガマ社長を擁護するような証言をするんです?いい感じで裁判が進んでいたじゃないですか!」
廊下ですれ違ったガマ社長に一礼を交わし菊池さんをなだめながら食堂の隅に席を取りました。
「菊池さん、NBIオフィスに連絡をして菊池さんの荷物をまとめるように指示して頂けますか?」
「えっ?」
「いくら弁護士が優秀でもこの裁判は結審まで時間がかかります」
「会長から了解を得ています。弁護士とも話をし、打ち合わせもしました」
「この裁判!午後に決着を付けます!」
ガマ社長は余裕の様子で煙草をふかしていました。菊池さんのあわてふためく顔を見て有利な状況を察したのでしょう。
「そして午後には菊池さんを釈放させてみせます」
モーガンフリーマン裁判長の丸々とした驚きの目を見るのが楽しみです。ガマ社長は私が仕掛けたわなにまんまとかかってくれました。
国際弁護士が思わず「えげつない」と目を見張った私の菊池さん奪還作戦が始まりました。
続く・・・
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