〜共感覚を使って愉しむ豊かな生活〜

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夏ならば野菜を軽く茹で、コンソメとゼラチンで

野菜をサンドにして固めたものも美味しい。


見た目にも美しいし、冷んやりと口の中で

ほどけていくコンソメのジュレと

夏野菜の歯ごたえが素晴らしい。




でもどちらかと言えばこの料理は

第四楽章の方が向いている。


グリンピースが入るからだ。


いずれにしろサラダにするなら

野菜たちを丁寧に

同じ細さの千切りにするのがポイントだ。

できれば春雨も加えたい。


オーケストラが演奏している場合は

弦楽器の音は春雨とマヨネーズ

ドレッシングだからだ。

適度な分量を加え、全体のバランスを考える。

モーツァルトの場合はこのバランスが難しい。

彼の音楽を演奏するのと同じに。たぶん。


柚子はベランダからほのかに香る

夕日を眺めながら(味わいながら?)

さきほど聴いた

ドビュッシーの音そっくりの飲み物を飲んだ。




テレビドラマを見ながら柚子は思う。

どうしてもルヴァン・バゲットが食べたくなるもの。

これを見たら。。と。

彼女が気に入っていた海外ドラマだ。

「女警部ジュリー・レスコー」がそれ。

だいたい「レスコー」という名前だけでも充分

フランスパンなのに。

ジュリーはフランスでは

18年間続いた人気のシリーズの主人公だ。

彼女の声を聞くと、いてもたってもいられないくらい

バゲットがほしくなってしまう。

どうやら柚子の共感覚は声に味を感じているようだ。


文字や発音される音と味覚が結びついている。


この間はジョン・ダニングの本を読んでい

て無性にチョコレートがほしくなった。

それもホワイトチョコレートが。

何故だろう?と思って注意して読むと、

登場人物の名前が原因だった。


ダリル・グレイスン。

ダリルはホワイトチョコレートを

細かく削ったものだ。間違いなく。

グレイスンのほうはホワイトチョコに

桜の灰とオレンジのリキュールが少し入っている。

ラズベリーもちょっぴり。

だからダリル・グレイスンというチョコレートは

桜の灰とリキュールを入れて作った

ホワイトチョコレートの上に

細かく削ったホワイトチョコレートが

盛ってあるということになる。

仕上げにレモンとオレンジの皮を

ちょっとあしらって出来上がりだ。


柚子の共感覚に味覚は

大きな位置を占めていると言っていい。


TVを見ていて著名な俳優たちに

興味を覚えることはよくあることだろう。

演じている映画やドラマの内容そのものも

もちろんだけれど彼らのゴシップとか。。。

だが柚子の興味は全く違う観点からだった。


ある女優の香りが気になって気になって

仕方がないときがあった。

ドラマが好きで見ていたつもりだが

本当は彼女の香りが素敵で見ていたのだ。

TVだから香りはしないはずだけれど、

柚子はその女優の濃厚な香りが気になっていた。

素晴らしくよい匂いなのだ。

完璧なバランスとは言えないけれど

もしあるなら手に入れたいと思う。


どんな香りがするのかというと。。。


冬の木の枝と苔、チョコレート、

フロストシュガー、バニラ、

アンバー、ジャスミン、ホワイトローズ、

パチュリ、ムスク、ベルガモット、

シナモン、レモン。。を、

調合した香り。


ただし、シナモンと柑橘類の香りは控えめに。


するとぐっと都会的になる、はず。


この女優の場合はその配合が多すぎると思うから。

(バランスをとるのが難しい人なのかも。。)


残念ながら柚子は香水の専門家ではないので、

感じている香りが実際の香水として作れるもの

なのかどうかはわからない。


それでもこれらの香料を使って香水を作りたいと思う。


文章だけの香水屋なんていうのも悪くないかもしれない。

文字だけでできた香水。感じる香水。

読むたびに香る。。。いいなあ。 


でもやっぱり香りは香りとして存在しないと

つけてるかどうかわかんないよね

柚子はキッチンの床を丁寧に磨きながら思った。


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