第九十九章 1%の支持者がいたら、それでいい

著者: キョウダイ セブン

第九十九章

「1%の支持者がいたら、それでいい」

  私が一番苦手な生徒は、

「それは、こうしたらうまくいくよ」

  と言うと、

「佐藤先生は、違うことを言った」

 というもの。その話されたことを予測したうえで提案しているのだけれど、分かってもらえない。自分でどちらの言うことが良い解き方かを判断してもらうために話していても、自分で考えることをしないで「先生」の権威にすがる。

  先日も

「ドラゴンイングリッシュに、たとえに本文に『しかし』と書いてあっても、前後の内容が逆説になっていなかったら but ではなくて and にすべきと書いてある」

 と言われた。よく勉強していることは感心なのだけれど、鵜呑みにしてその是非を考えない。私は

「英作文は翻訳なので、勝手に解釈して接続詞を変えるのは越権行為だよ」

 と言っておいた。プロの作家や研究者が練りに練った文章を

「前後関係から、この接続詞は別のがいい」

 と決めつけて変更するのは、作家の意図を踏みにじることがある。高校生にプロの文章を評価させることが英作文の問題の目的ではないのだ。

  私はこのスタンスで英検1級に合格し、京大二次でトップクラスの8割をたたき出してきた。正しいスタンスのはずだ。もし、目の前に

鈴木先生は、名大卒、京大二次で8割正解、英検1級、通訳ガイドの国家試験、国連英検A級、ビジネス英検A級、アメリカで教師経験あり。佐藤先生は、京大卒だとすると、どちらの言うことを信用するだろうか。

  どちらとも決められないだろう。

  ところが、一方の主張が参考書の形をとり製本されて書店に並ぶとその権威は圧倒的となる。大規模予備校の看板があると更に強力になる。一匹狼の田舎の塾講師の私の話など誰も耳を貸さない。

  いや、誰もではない。私を直接知る、地元の難関校トップの子と通信生の子たちは信用してくれる。

  先日も、授業中に

「先生、この模範解答は絶対におかしい!」

  という声があった。私がしばしば書かせてもらっているように英語が話せない人が英語を教えているのが現実だ。参考書の模範解答を書いている人は、学生アルバイトのこともある。ほとんどの人がその不適切さに気づかないが。

  私の指導させてもらっている優秀な理系女子は騙せない。そういう子たちは、たとえ書店で売っていようが大規模塾の講師が出版していようが関係ない。自分で判断するからだ。

  私の Youtube の動画が合計38万回再生されたり、アメブロの「受験生」ランキングで1位になるのは、私の書いていることに同意される人が多い証拠だ。150万人の大学受験生のうち、1%の人が同意してくれたら1万人を超えるからね。

  私の塾は2教室あり、その近くには6つの公立中学校がある。他の中学校からも通ってもらっているが、1%の支持者で経営は成り立つ。もちろん、もっと来ていただいているが。

  すべての人の支持などありえない。私が以前勤務していた塾では、授業が始まっても遅刻者が多いので、リスニングの音声を途中で止めたりした。授業が始まっても、学校で教えあうよう指導するものだから私語がとまらない。

  すると、賢い子たちは呆れて内職を始める。そして、最終的に

「勝手に勉強するだけなら塾に来ても仕方ない」

  と塾をやめる。だから、塾はどこでも誰にも好かれる戦略は取らない。上位者向けの塾、底辺の子のための塾、しつけを重んじる塾など、さまざまに分業になるのが普通だ。

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