人も自分も幸せにする生き方を手帳から教わった話-医学書に載るほどの妻の蕁麻疹が治るまで

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著者: 春明 力

今から8年前の日差しが肌に突き刺さりそうなある日。




僕は左手で妻の肩を抱きかかえながら病院に向かっていました。

そして、右手で妻の顔を隠しながら歩いていました。





妻は、小さい頃から蕁麻疹が出る体質でした。その症状は異常でした。


顔はパンパンに腫れ上がり、誰だかわからなくなります。

手足は腫れ、ものに触ったり、歩いたりするだけで、激しい痛みを伴います。


喉や器官まで腫れ上がるので、水すら飲むこともできなくなるほどでした。


珍しいほど「ひどい状態」になるので、医学書に妻の写真が掲載されたほどです。


しかし、その蕁麻疹も年々症状は治まってきているはずでした。

現に、僕と出逢ってから、その症状はほとんど出ていませんでした。


それが、起業して数ヵ月経ったその日に突然表れたのです。





朝起きたら、いつもは起きている妻が布団をかぶっていました。


「まだ寝てるのかな?」と特に気にもせずに、僕はリビングに向かいました。


その後シャワーを浴びて、そろそろ起こそうと声をかけると、

妻から「大丈夫だから、来ないで」と言われました。


途端に心配になった私は、半ば強引に妻の布団をはがしました。

そこには、全身腫れ上がって涙を流している妻がいました。


「人から見られるのが恥ずかしい」という妻をなんとか説得して、

妻の顔を必死で隠しながら歩いて近くの大きな病院に向かいました。





妻の肩を抱きかかえながら歩いたせいか、

周りの目を気にしながら歩いたせいかわかりませんが、

病院までの数分の道のりが、異常なほど長く感じました。


病院の待合室でも、私達の前を通る人たちが驚いた顔をして、

何度も私達を振り返っていました。


「ごめんね。」「迷惑かけてごめんね。」


妻は何度も私に謝っていました。

そのたびに、私の胸はチクチク痛みました。





何時間にも感じる待ち時間の後、診察を受けて、

医者に言われた蕁麻疹の原因を今も覚えています。


ストレスですね。


それは、以前妻が蕁麻疹の原因として伝えてくれたことでした。


僕は、妻にストレスを与えていたつもりはありませんでした。

それどころか、妻にストレスを与えないようにがんばっていたつもりでした。


ストレスになりそうな仕事は、僕が全て引き受けていました。

ストレスがかかりそうな相手との打ち合わせも僕がやっていました。


妻やスタッフを少しでも早く楽にさせたいと思い、毎日必死で仕事していました。


それなのに・・・


どうすれば良いかわからなくなりました。


混乱しながらも、謝り続ける妻に「大丈夫、大丈夫」と言いながら、

妻の肩を抱いたまま、自宅兼事務所に戻りました。


すると、もう一人のスタッフが心配そうに待っていました。


もう一人のスタッフも私の学生時代からの親友です。

その心配そうな顔を見ながら、あることに気付きました。


「そういえば、こいつの笑っている顔をしばらく見てないな。」


その日の仕事が終わり、スタッフが帰った後。

寝室で寝ている妻に声をかけてから、私はリビングに戻り、手帳を見返していました。





その手帳は、ストレスで埋め尽くされていました。


”○○さんから○○と言われた”

”○○さんから仕事を依頼されたのにキャンセルされた”

”○○さんから休みの日に、急遽呼び出された”


「やっぱり、自分だけがストレスを引き受けているのに…」そう感じながらも、

妻やもう一人のスタッフの立場になって考えてみました。


そうすると、今まで気付くことがなかった事実に気付いていきました。


僕は、いつも「自分を犠牲にしている。」と感じていました。

そして、同時に「2人のために」と思っていました。


その結果、いつもイライラしていました。


「今日も、本当最悪だったよ!」

「あの人と会いたくないのに、また行かないといけない…」

「本当具合悪くなるよ…」

そんなことばかり口にしてしまっていました。


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