フツーの女子大生だった私の転落の始まりと波乱に満ちた半生の記録 第22話

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私はソファに沈み、目を閉じて瞑想していた。




「おい」




私は瞼を開いた。




佐々木の顔があった。




「大丈夫か。お前」




「はい」




「ほらよ、先週きたオッさん。またお前に会いにきたって。


   すげーじゃん。今夜で指名5本目だぞ」




佐々木が顎で示した先で、一目でヅラと分かるオカッパ頭の


男性が挙動不振そうに座ってキョロキョロしている。


私は佐々木を見上げた。


「また、帰り送ってやっから、頑張れ」


佐々木が微かに微笑んで私を見下ろしていた。



「えー、なあにそれ。杏さんだけいいなあ〜〜」


「ウチらも送ってよ〜〜。助手席乗せろ〜」


斜め向かいに股を広げて座っているカナや周りの女の子が口々に言った。


「うるせーよ、おめーら。杏さんはな、色々大変な思いしたんだよ!

   おめーらが助手席なんて100年早いわ!」


佐々木は私がトップ5に入った頃から私のことを、さん付けで呼ぶようになった。


新人の頃はひよっ子呼ばわりしてたクセに、虫のいいヤツである。



「ゲゲッ!100年て笑えねー!可笑しいじゃんっ」


ミサたちはさらに股を広げ大騒ぎしている。


彼女は確か入った時期は私と同じだ。

歳も同じくらいだった気がする。


金髪にヤマンバメイクのミサは自分を最先端ギャルだと思っているらしい。


ノリノリでイケイケ女なのでガテン系の男によく指名されている。


ただし金回りの良い客には

品のない受け答えをする彼女は全く人気がなく


私との人気の落差は歴然としていた。


ミニスカートからピンクのレースの下着が丸見えだ。


気にならないどころかワザと見せつけるかのように



ミサの両太ももは、はしたなく動き回る。


「てめーら勝手にほざいとけ」


佐々木がうざったそうな声を出す。



私は呆れながら、それを尻目に立ちあがった。



佐々木の前を通り過ぎる時、また目が合った。


イカつくコワモテの印象だった佐々木の目が優しく感じられた。





最後の客を送り出すと私は、更衣室へ素早く駆け込みヘアメイクを整えた。


うがいまでした。


着替えながら、どこかワクワクしている自分がおかしかった。


更衣室に入る時、玲子がすれ違いざまに


「あら、まだアキちゃんに送ってもらってるの?」


と聞いてきた。



しばらくは危険だからと言って

佐々木が私を送るようになってからもう1週間経つ。


もちろん玲子も事情を知っている。


玲子の余裕のある微笑みに、なぜかイラっとした。


「ハイ」


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