部下の育成に必要なスキル

著者: 作田 勇次

いつも部下の教育に失敗しているというあるマネージャーがいた。彼は有能なプレイヤーであったが、部下の育成となると上手くいかなかった。


それは有能さ故の悩みでもあった。彼はなんでも出来過ぎてしまうのだ。彼は育成に取り組んでも部下より先に些細なことに気がついてしまう。そして、部下がそのことに気がつかないとつい口を挟んでしまうのが常であった。


そうして、彼は部下が自らで気づきを得て、成長するという機会を潰し続けてきた。しかし、当の本人はというと全くその事実には気がついていなかった。


それよりも彼は気がつかない部下のことを無能だと罵っていた。


「どうして何度も教えているのにすぐに理解できないのだ。少し考えて行動すればわかることだってたくさんあるじゃないか。」



そんなある時、マネージャーはゼネラルマネージャーから呼び出しを受けた。


「君は上手く部下を育成出来ていないようだね。」


ゼネラルマネージャーがそう告げるとマネージャーは反抗を示すように反論した。


「僕はそうは思わないですがね。最近の若い連中は勉強不足なんですよ。自分で学ぼうという気が無い。教えるのが嫌になりますよ。」


マネージャーは少しも反省するそぶりを見せずにいた。ゼネラルマネージャーは構わず続けた。


「本当にそうかね?」


「…そう言いますと?」


マネージャーはいぶかしげな表情で聞き直した。しかし、ゼネラルマネージャーはそれを考えるのもマネージャーの仕事だ。と告げただけでそれ以上は答えてくれなかった。


マネージャーは納得しなかったが、それでもひとまず考えることにした。


相変わらず部下が付いてこなかったため、マネージャーには不満が込み上げてきたが、ゼネラルマネージャーの言った言葉を思い出した。


あの言葉には何か意味があるのだろうか。

マネージャーは自分には非がないと信じ切っていたが、もしかして自分が原因なのかもしれないと思い始めた。


そこでマネージャーはやり方を改めることにした。


口出しを辞めて、部下に判断を委ねることにしたのだ。当然すぐに口を出したくなった。だが、ここで口を出すのはいつもと同じことだ。それではいつまでたっても変わらない。とマネージャーはグッとこらえた。


それは簡単なことではなかった。


胸の奥がムズムズとし、忙しなく合図を送ってきた。何度も寸前のところまで言葉がでかかった。


なんでこんなに覚えが悪いんだ。とモヤモヤもした。


その度、マネージャーは自分を言い聞かせた。


これは相手のためなんだ。言いたいことを堪えやらせてあげることが成長に繋がるのだ。


今までこれで何度も失敗してきた。今度こそは堪えきってみせる。


マネージャーは辛抱強く自分を抑制し続けた。

時よりどうしても口が出てしまうことがあったが、以前に比べたら格段に少なくなってきた。


その数週間後。


マネージャーの部下がわずかだが、成長し始めた。口出しせずに任せることで部下は自然と考えを巡らせるようになっていた。


その後もマネージャーは口出しするよりも部下にやらせてあげる機会を増やし続けた。


すると、部下はますます成長し、マネージャーのチームは好業績を上げた。それと同時にマネージャーは部下から慕われるようになった。



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