高卒でライン工をしていた僕が上京して起業する話-No.2

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著者: 森井 良至

パソコンを購入しても、Photoshop・Illustrator、Dreamweaverなどのソフトを買うお金がなかったため、GIMPというフリーソフトでデザインの勉強をしていた。ホームページ制作は、メモ帳でコーディングをして作成したり、Wordpressでブログを作成したりと、色んなことをやった。


仕事がある程度出来るようになってからは、Iさんと二人で飲みに行く機会が増えた。Iさんは非常には上昇志向が強く、MBAを取るためビジネススクールに通いながら仕事をしていた。自己管理能力やコミュニケーション力を高める方法、商売の方法など色々と教えてもらった。


Iさんは社内では神格化されていて、22歳の頃に他社でチラシ配りのバイトをしていた時に引き抜かれ、その後8年間、チラシ配りだけでなく様々な仕事を覚え、今ではネット事業部の責任者という役割に就いていた。


僕と同じように最終学歴は高卒だったが、ネット周りの知識だけでなく、英検準1級を持ち、眼科に来た日本語が喋れない外国人の対応も行っていた。


仕事は出来るが、サボる時はサボるような人で、翌日仕事があっても日が明けるまで二人で飲んだりしていた。


そんな尊敬して崇めていたIさんだったが、数ヶ月後経過したある日「仕事は○○(僕)に全て引き継いだ、俺がいる必要がなくなったから、ベトナムで独立してくるわ」と言って退職した。


コンビニに行くようなノリで、海外で起業する行動力に、僕は今でも心から尊敬している。


20歳の僕は働き始めてから、1年半でネット事業部の責任者として任せられることになった。


社内にデザイナーやエンジニアがいないため、チラシの制作、ホームページの制作、広告周りの運用、時にはマクロやVBAでツールを開発したりと、やったことのない仕事でも積極的にチャレンジし、家に持ち帰って休日問わず仕事をしていた。


そんな毎日を繰り返していたため、色んな人から頼られるようになり、とても充実した日々を過ごしていた。自分で考えて仕事で結果を出し、誰かに褒められた時の嬉しさは、女の子と遊んでいる時の比ではない。


僕は仕事とプライベートの境界線を引くことなく、仕事漬の日々を送った。



初めての一人暮らし


その頃、Y君は大学生ながらパチンコや風俗にハマり、頻繁に家賃を前借りするようになった。結果、金銭トラブルで喧嘩別れすることになり、僕は初めての部屋探しを行うことになった。


ロフト生活は3畳程のスペースで冷暖房が行き届かないため、夏場は暑く、冬場は寒くといった環境だったが、貧乏な暮らしに耐性がある僕は、生活レベルを上げるのに抵抗があり、東京の端にある家賃3.2万円のボロアパートに住むことにした。


東京デビューして調子に乗ってはいたものの、もともと内向的な性格だったため、東京で友達と呼べる人はY君しかいなかった。


周りに全く友達がいない一人暮らしというのは、非常に孤独だった。


ただ、その孤独が非常に気持ち良かった。


上京する前は、何をするにしても周りの目が気になってしまい、本当の自分を隠していた。別に僕はアクティブな性格ではなかったが、外を走ってるだけで知り合いに会ったり、ゲーセンに行くと同窓会のように色んな人と会う。


僕はそんな環境が嫌で嫌で仕方なかった。昔からの知り合いというのは、僕という人間を勝手に定義してくる。その定義されたキャラを演じないと「そんなキャラじゃなかったよね」と言ってくる。


だから全くこの僕を知らない、この街が大好きだった。


この街に住む人達にとっては、僕なんてどうでも良い存在だ。
そんな無関心さが心地良くてたまらなかった。


夜に一人で煙草を吸いながら、知らない街を散歩する度に、体感したことのない心地よい風を感じていた。


この感覚を僕の言語力では伝えられないが、福本伸行さんの「無頼伝 涯」という漫画にある、ワンシーンがとてもわかりやすく言語化している。


前後の話を軽く書いておくと、孤児院で育った中学生の涯は、そこから出たいと思い、とある事情でボロアパートに憧れの一人暮らしをすることになった。


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押し寄せて来たっ……!

孤独……貧窮……不便、不都合、不合理……

しかし……同時に今までずーっと……

オレの体にまとわりつくようにあった空気が動き出したっ……!


そうだっ……!こんな風を感じたかった……!

オレは……オレに依って立っているっ……!

自由……そう…これが自由だ…!


自由は…何でも出来ることじゃないっ…!

自由とは自分に由ることだ・・・


となれば当然限られるっ…!

非力なオレなら尚更だ、限られるっ……!


オートバイも海外旅行も…こじゃれたシャツも…贅沢な食事もない…

そんなものとは無縁だった…その限られた中で…


やはり無限だったのだっ……!


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ボロボロの汚いアパートに住んでいた僕は、そんな奇妙で心地よい感覚に襲われながら、新たな決意をする。



そうだ、副業しよう!

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高卒でライン工をしていた僕が上京して起業する話-No.3