子どもを亡くして社畜をやめた話③山手線でローキック

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視察に来ていたビリケン
うれしそうに俺のことを眺めていた姿を覚えている


そして


月に一度のセミナーの何度目かが終わった夜
おれはビリケン社長と飲みに行き
彼が期待し
自ら立ち上げを画策していたプロジェクトの話を聞かされる


おれはその時
是が非でもそのプロジェクトに関わろうと決意をしたのだが
その決意が自分の首を絞めることになるとは
この時はまだ思いもよらなかった




社畜部

おれの所属した部署は
まだ創業社長が存命だった頃に立ち上げられたのだが
社内ベンチャーの様な扱いで
オフィスも何故か本社とは不自然に離れた場所にあり
入社後
おれが本社の人間と関わる機会は
前述した社内セミナーの場以外ではほとんどなかった


組織は閉鎖的で独自の行動理念を元に運営されていたのだが
その理念を掌っているのが
これから紹介するキャラクターである


この部署に敬意と恨み節を込めて
「社畜営業部」
もとい
「社畜部」
とさせていただく



倒れる課長(3ヶ月ぶり7回目)

オカダ課長社畜部に在籍する営業部員の中で最も古参であり
絶対的な仕事量と勤務時間を誇る社畜部のエースであった

ただ

課長という肩書きは
いわば社畜部における地位を表すもので
実際には課と呼べる様な命令系統は存在しておらず
後述の2人によるトップダウンへの
忠誠度と貢献に対する評価の証であった

なお

オカダ課長はその恐ろしいほどの長時間労働により
定期的に倒れて病院送りとなる

倒れる前の1週間は決まってテンションが異様に高く
「中野、仕事って楽しいな」

自律神経がイカれてしまっている為に
真冬でも汗まみれになりながら
深夜
キーボードを打ち鳴らしていたのだった



インシュリンを腹に突き刺したまま眠る部長

カーネル部長は社畜部のトップである

ケンタッキーでおなじみのカーネル・サンダース氏の
顔のシルエットだけを
ミシュランのビバンダムのそれにした様な出で立ちの
壮年の男性を想像して頂ければと思う

ビバンダム部長では語呂が悪いので
カーネル部長と呼ぶ


カーネル部長「睡眠障害」を煩っており
さらに「糖尿病」を併発している為に

時折

ロキソニンの注射を
自身の腹に突き立てたままデスクで寝入ってしまう


睡眠障害とは恐ろしいもので
いくら戦々恐々とした雰囲気のオフィスの中であっても
何の前触れもなく
突然眠りの中に落ちていってしまうのである


そんな時おれは
大きな腹に突き立てられたロキソニンを
なるべく視界から外し
こみ揚げる笑いをこらえるのだが
静かなオフィスに不意打ちで襲ってくる



「ガッ」



という無呼吸症候群のいびきの音で
何度唇を噛み締めたかわからない


お葬式で笑ってはいけないという事を意識すると
とたんに我慢出来ない笑いがこみ上げてくる現象と同じである


なぜそこまでして
笑い声を上げることに気を病む必要があるかというと

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