お金のことを何も知らないバカな美容師が独立するまで

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2013年1月後半



フリーランスになってからは

地元に帰ることも少なくなっていた。



駅について改札をぬけ、外に出る。



正午過ぎだが、山形の冬は寒い。



久しぶりに帰ってきた地元は

なにも変わっておらず、

懐かしさと少しの幸福感が僕を包む。



ノスタルジーに浸っている場合ではない。



実家に帰ることは事前に連絡していたので、

母が車で駅まで迎えに来てくれていた。




「おかえり!元気にしてたの?」




懐かしい声。




そういえば、ここ1年電話すらしていない。




母もだいぶ歳をとった。




目尻のシワの数がそれを物語っていた。




僕「おぅ。久しぶり。」



なぜか、恥ずかしくなって

素っ気ない態度を取ってしまう。



こんな、なんでもない時期に帰って来るんだから、



母は何か感づいているようだ。



けれど、それには触れず

母は明るく振舞ってくれている。




駅から、実家までは車で20分。




車から見る地元の雪景色は東京の喧噪とは違い、

僕に安らぎを与えてくれた。




「お父さん帰ってきたから起きなさい!」




母の声が響く。




実家について、僕は疲れもあり、

気がついたらソファで眠っていた。




父「おぅ。おかえり。」




僕「た、ただいま」




むしろ今帰ってきたのは父なのに




僕がただいまというのも




なにか滑稽だなと思いながら頭を掻いた。




父が僕の向かい側のソファに座る。




1時間ほど、お互いの近況報告をした。




そして、先に切り出したのは親父の方だった。




「で、なにか話あるんだろ?」

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