バッドエンドな恋と人生

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――カップルで行くと別れる

ジンクスなんて信じない方だった俺は気にも留めず、彼女とイルミネーションを楽しんだ。まるでイルミネーションまでもが俺たちを祝福しているかのような、そんな気さえした。
「綺麗だね」
彼女もイルミネーションに見入っているようだ。

――君の方が綺麗だよ

なんて言葉はさすがに恥ずかしくて言えなかった。
「うん。綺麗」
俺は彼女と一緒にイルミネーションを楽しんだ。この時、幸せすぎてちょっと泣きそうになっていた。
「どうしたの?」
察したのか、彼女が声をかけてくれた。
「いや……いいなぁって」
「イルミネーションが?」
「それもあるけど、こういうのがさ。……ずっと夢だったんだ、俺」
「これからは何度もできるよ」
「あぁ、そうだね……」
「夢、叶っちゃったね」
俺は彼女の手をより一層強く握り締めた。

時間もいい時間になってきたので夕飯を食べることに。場所は敷地内にある、ちょっとオシャレなレストラン。俺たちはそこでスパゲティを食べた。彼女と一緒に食べる夕飯はいつもより何倍も楽しく、美味しく感じられた。

イルミネーションのショーみたいなのも堪能し、時間も遅くなってきたので俺たちはホテルへと戻り、旅の疲れを癒した。



2日目の朝――。
チェックアウトの手続きを済ませると、俺たちは再び車を走らせ、次の目的地へ。
次の目的地までは約2時間半程の旅となった。途中、コンビニに寄ったりしながら目的地へと向かった。車内では彼女と昨夜のこと、これからのこと等を話し、大いに盛り上がった。

次の目的地は県内外問わず有名な水族館と、その近くにあるパワースポット。車を水族館の駐車場に停め、俺たちはいざ水族館の中へ。

そこの水族館ではアザラシやセイウチ、ペンギンに触れられることで有名な水族館で、子どもから大人まで楽しめる水族館だ。休日ともなると観光客で賑わうメジャーな観光スポット。

狙い通り、彼女も大いに楽しんでくれた。やはり触れられる、という点が良かったらしい。
俺も彼女も大いに水族館を楽しんだ。

水族館を十分楽しんだ後、近くの店で昼食を済ませ、その後パワースポットへ。
そこには神社もあり、彼女と一緒にお参りもした。
「ゆうくんはなにお願いしたの?」
「Eちゃんとこれからもずっと一緒にいられますよーにって(はぁと)」
「私もゆうくんと幸せになれますよーにってお願いしたよ(はぁと)」
なんていうバカップル丸出しの会話を楽しむ俺たち。完全に2人っきりの世界に入り込んでいた。



彼女が乗る帰りの電車の時間が迫ってきていた。俺たちは駐車場へと戻り、車を駅まで走らせた。
駅が近づく度に沈黙の時間は多くなり、寂しい気持ちも徐々に大きくなっていった。

――このまま時間が止まればいいのに

そう何度も願った。しかし、時間は待ってくれない。止まらない。俺たちは信号で車が止まる度に手を繋いだ。
「あっという間だったね」
どこか遠くを見つめながら彼女は呟くように言った。
「うん……」
「また、会えるよ」
彼女は俺の顔を見ながら笑顔でそう答えた。
「そうだね」
俺もそれに笑顔で答えた。傾いた夕陽が遠くから俺たちを優しく照らしていた。



駅近くのコンビニの駐車場に車を停めた。別れの時がやってきた。手を繋ぐ俺と彼女。
「ありがとね。本当に楽しかった」
「俺も楽しかった」
短い沈黙が俺と彼女の間に流れた。
「じゃあ……行くね」
「うん……」
最後に軽くキスをかわし、彼女と別れた。遠ざかる彼女の姿を、俺は見えなくなるまで見つめていた。
最高に幸せで、濃厚な2日間だった。俺にとってこの2日間は一生忘れられないものとなった。

――次に会えるのは一体いつだろう

そんなことを思いながら、俺は帰路についた。
いつの間にか助手席のドリンクホルダーにはマグネットクリップがつけてあった。きっと途中寄ったコンビニで買ったお茶のおまけを彼女がつけてくれたのだろう。思わず溜め息が漏れた。

しかし、これが彼女と会う最後の日になろうとは、この時の俺は夢にも思っていなかった――。





突然の別れ。それでも現在(いま)を生きる

初デートの日以降、俺と彼女の愛の熱はより一層その熱さを増し、Skypeで話す時間も徐々に増えていった。
本当なら毎日でも会いたかった。しかし、俺と彼女はいわゆる"遠距離恋愛"。会いたいからといって、すぐに会いに行けるような距離ではなかった。

――どこでもドアがあれば今すぐにでも会いに行けるのに

何度も本気でそう思った。
そして、俺は考えた。なんとかして毎日とはいかなくても、今以上にもっと彼女と会えるようにはできないものか、と。

そんな時思いついたのが"オンラインゲーム"という選択だった。オンラインゲームであればどれだけ離れて住んでいても関係ない。俺はそこに着目した。
訊くと彼女も昔やったことがあるらしく、話したらすぐに興味を持ってくれた。
俺たちは早速お互い昔やったことのあった、某有名オンラインゲームを一緒にやることにした。

そのゲームはアクション要素が強いゲームで、武器もいくつかある中から好きなものを選択できる、というシステムだった。俺は太刀、彼女は弓をそれぞれ選択した。キャラの性別もそれぞれリアルに合わせた。

それからというもの、待ち合わせ場所と時間を決め、"オンラインゲームデート"と題して毎日のように一緒にゲームをプレイした。もちろん、Skypeで通話しながら。
普段は1人ですることの多いゲームだったが、彼女と一緒にプレイするゲームがこんなにも楽しいものだなんて思わなかった。
そして、俺は改めて思った。

――なにをするかが重要じゃない。誰とするかが重要なんだ

こうして俺たちは色んなものを駆使して会えない寂しさ、辛さを埋めていった。



全ては順風満帆にいっている、かに思えた。だが、悲劇は突然訪れた……。

ある日の夜。彼女から突然LINEが届いた。オンラインゲームデートのことかな、ぐらいに思っていた俺は軽い気持ちで自身のスマホを手にし、LINEを開いた。だが、そこには信じられないメッセージが表示されていた。
「別れたいです」
突然のことにすぐその言葉の意味を理解することはできなかった。頭の中は真っ白になり、混乱した。動揺を隠しきれない。俺の中を不安にも似た感情が支配していく。
俺はすぐにLINE通話で彼女に連絡を取ろうとしたが、彼女は出てくれなかった。
仕方なく、LINEでまず理由を訊いた。彼女はすぐに返事をくれた。
「好きな人ができたの」
出た。よくあるパターン。
それに対して俺は彼女を責める気持ちはなかった。それより先に彼女がそんな気持ちになる、ということは自分になにか悪いところがあったのではないか、という気持ちになったからだ。
俺は彼女に何度も食い下がった。諦めきれなかった。そう簡単に諦められるはずがない。
「悪いところがあったら直すから」

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