平凡に生きてきたつもりが、一億分の一を引き当てていた話。~あと血液のがんになった話~

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と実感したのでした。

 

 

 

 







「五分五分」

 

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入院すると早速、慌てた様子で主治医のW先生が病室に顔を出しました。

 

「びっくりしました。」

 

「私もびっくりしました…。」

 

そうして、別室に呼ばれました。たまたま両親は席を外していて、部屋には先生と私だけでした。

 

「こんなに早く再発するケースは非常に稀です。」

 

「そうですよね…放射線治療、終わった直後ですもんね。」

 

「これからの治療ですが」

 

そういうと、先生は白紙にざっと治療計画を書いてくれました。

 






「今まで使っていない違う種類の抗がん剤を2回。これで出来る限り、腫瘍を小さくします。」

 

「そのあと、患者さん本人の骨髄から幹細胞を採取して保存します。」

 

「患者さんにはその後、『超大量化学療法』を施します。致死量をはるかに超える抗がん剤で、血液の中など、見えないレベルのがん細胞を、すべて死滅させます」

 

「ただ、そのまま放っておくと患者さんの体も持たないので、タイミングを見て保存していた幹細胞を移植します。」

 

「これを自家末梢血幹細胞移植、と言います。」

 

要するに、自分の細胞を使ったセルフ骨髄移植ということです。

 




 

事前にネットなどで調べて、私も噂だけは知っていました。めちゃくちゃに辛い、悪名高い治療です。




 

「これ、やっぱりやるしかないんですよね。」

 

「やるしかないですね。」

 

「私、ちゃんと乗り越えられるんですか、こんなの」

 

「今までの治療、逃げずに乗り越えてきたでしょう。大丈夫ですよ。」

 

「治療した上での生存率って、聞いても大丈夫ですか。」

 





これはあくまで確率ですから。ただの数字ですから。と、先生は前置きしたうえで、

 



「私が今まで担当した同じ病気の患者さんは、二人いらっしゃいました。」




「一人は、移植を乗り越えたあと、元気になって社会復帰しました。」


 

 






 

 

 

 

「そしてもう一人は、移植後も再発を繰り返し、亡くなりました」

 



要するに、可能性は五分五分ということでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あと、この治療そのものの死亡率も数%あります。めったにないですが。」

 



たまにはあるってことですか。先生。

 

 







「移植」

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