36歳。不妊治療中に心身ボロボロになり卵巣年齢40歳と診断された私が「こんまり流片づけ」をしたら2週間後に妊娠した話

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著者: 川和田 あき子

ミスをしないように気を付けた。

ミスをしたら必死で挽回した。

言われたことは一生懸命やった。

言われたこと以上のことをやろうとがんばった。

疲れていて体が辛いときでもがんばった。

それがたとえやりたくないことでも。


そうしなければ認めてもらえない。

生きてる価値がない。

他人から「この人は価値がない」と思われるのが怖くて、一生懸命仕事をがんばった。


その結果がこれだ。


心身はボロボロになった。

心は苦しくなりしんどくなり、挙句の果てに体調を崩した。

生理は乱れホルモン値は悪化し、卵巣年齢は4カ月の間でなんと一気に4年も年を取ってしまった。


体の声を無視し、自分の心に嘘をつき続けた結果だった。


誰かのせいに、環境のせいになんてできない。

自分が選んで自らやったこと。


片づけをすると、それをまざまざと見せつけられる。

「今のこの現実は、自分が選択し続けた結果」と教えられる。

現実を直視せざるを得なくなる。


愕然とした。

なんでこんなになるまで無理をしてがんばり続けてしまったのだろう。


ごめん、ごめんね自分。

ごめんね自分の体。

ごめんね自分の心。

涙が止まらなかった。

 

わたしがわたしを裏切ったら、嘘をついたら絶対にいけなかったのに。

 

もう外に求めない。

わたしがわたし自身を受け入れて認めてあげたらいいんだ。

わたしがわたし自身を受け入れて愛してあげたらいいんだ。

 

わたしがわたし自身を価値があるって認めてあげたらいいんだ。

 

「今のこの現実は、自分が選択し続けた結果」


だとしたら、片づけをしてリセットしたこの瞬間からまた選択していけばいい。

今この瞬間から自分が望むように選択していったらいいんだ。

 

そう気づいた瞬間、自分の中で何かが大きく変わった気がした。

 

片づけが終わったあと、ふとパソコンでYouTubeを開き、椎名林檎さんの「NIPPON」という曲を流した。

 

いつもいっぱいいっぱいで余裕がなく、音楽なんてしばらく聴いてなかった。

なぜこのときこの曲を流そうと思ったのか分からない。

新曲らしく、聴いたこともない。

でもふと目に留まったのだった。

 

♪ほんのついさっき考えていたことがもう古くて

少しも抑えて居らんないの

 

このフレーズを聞いたとき、はっとした。

 

片づけ前の価値観と、片づけ後の価値観は大きく違っている。

片づけ前の価値観は、今はもう古い。

リセットした今、わたしはもう前に進むしかないことに気が付いた。

 

それはまぎれもなく「覚悟」だった。

 

自分の人生を生きる覚悟。

今この瞬間から現実を変える覚悟。

 

それは「幸せになる覚悟」だった。

 

今まで自分で自分を不幸にしていた。

そのほうが都合がよかったから。

 

他人の言うことに従っていれば、何かあったときに他人のせいにできる。

でも自分で決めればすべて自己責任。

誰のせいにもできなくなる。


でも他人の言うことに従う人生はもう嫌だ。

自分の人生は自分で決める。


確か同じようなことをユーコンリバークエスト(カナダのカヌーレース)に出場したときも言ってなかったっけか。

わたしはまた同じところでつまづいている。

 

いや、前回成長して今回また大きく成長できたのだ。

だからこれでいい。

かくして、わたしの片づけは無事に完了したのであった。


<リセット>

休暇でやったのは、以下のことだった。

★モノの片づけ・・・自宅。おもに自分の私物。

モノの片づけをしてみて、自分が今取り組むべきことが目の前にくっきりと現れた。

・妊活

・自分と、自分の大切な人を大切にすること

・サロンワーク(当時、自宅でマッサージサロンをやっていた)

★仕事の片づけ…3つやっていた仕事のうち、2つを手放した。

★人間関係の片づけ…前述の男友達を手放した。

といっても「もうあなたとは会いません」とわざわざ連絡をしたわけでもなく、心の中でサヨナラ。


モノの片づけを終わらせたら自分の価値観がはっきりし、仕事と人間関係の片づけは自然にスムーズにできた。

すべてに片をつけることができて、とにかくすっきりした。

 

★体作り・・・毎朝早起きし、夫と近所の公園を30分程度ウォーキング。

その後、二人で和朝食(ごはん、お味噌汁、焼き魚など)を作ってゆっくり会話をしながら食べた。


★妊活にいいと言われるサプリメント等(マカ、ヘム鉄、ルイボスティー)を飲んだ。


★温活・・・湯たんぽと一緒に寝る。日中は、湯たんぽをお腹に当てる。

★布ナプキンを使う。生理のときはもちろん、そうでないときもパンティライナーとして使う。子宮が温まる(これは2カ月前から取り組んでいた)。 

★腹巻をする(これも3年前くらいから取り組んでいる)。

いずれも、「やらなきゃ」ではなく、「やりたい」という気持ちで取り組んでいた。

実際、やっていて楽しかった。


その後すぐ、クリニックに体外受精説明会の予約をした。


体外受精を希望する夫婦は、説明を受けるのが必須なのである。

年末は踏ん切りがつかず、また勇気が出ず電話ができなかった。

今ならその覚悟ができたので、スムーズに電話できた。

また、通っているクリニックとは別に体外受精専門の病院が近所にあったので、その病院の体外受精の無料説明会も予約した。


自分たちでも情報を集めようと、妊活の雑誌を買った。

ちょうどそのとき発売していた妊活雑誌の特集が、体外受精についてだった。

自分たちのための本だと思った。


体外受精は自分にとって恐怖でしかなかった。

何が恐怖かというと、採卵(卵子を外に取り出すための処置。膣から注射針を入れ、卵巣より成熟した卵子を吸い出す)が半端なく痛いということだった。

全身麻酔または局所麻酔を使用するが、それでも痛いと雑誌やネットに書いてある。

また、排卵しないように卵子を成熟させるために、毎日点鼻薬や注射が必要で大変そうなのも怖気づく原因だった。

そしてこんなに大変な思いをしたところで、必ず妊娠できるとは限らない。

確かに体外受精は他の方法に比べて妊娠率は高い。

でも、絶対ではないのだ。

これから先どうなってしまうのだろうか?という先の見えない不安を感じた。


当時、映画「インターステラー」が大ヒットした。

インターステラーを見にいったとき、わたしが最もしびれたシーンはドッキングのシーンだった。

映画の後半、主人公が爆発によって回転がかかった宇宙船にドッキング(合体)するシーンがあった。

ものすごく難易度が高いのだが、もうこれしか方法がない。

それをなんとかやってのけるシーンである。


うまくいくかなんて分からない。

だけど他に方法がないのだ。

もう、やるしかない。

元旦に2度目のインターステラーを見に行ったときは、涙が出た。

きっと体外受精の治療中、特に採卵や受精卵を子宮に戻すときは、このドッキングのシーンを思い出して何度も勇気付けられるんだろうな、と思っていた。

本気でそう思っていた。

 

<当事者意識>

しかし冷静になって考えてみると、時間がないとはいえ、いきなり体外受精に進むのはどうも違和感があった。

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